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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
24/59

12 架空の恋愛の話

 藍鉄は、蒼月が積み上げて行った携帯ゲームを蘇芳と一緒に消化していた。

 最近蘇芳も携帯ゲームにはまってきたようで、藍鉄が全く面白いと思わなかった画面の中のキャラクターと恋をするお話を楽しんでは、次に蒼月が来た時に持ってきて欲しいと藍鉄に望むようになった。


 「ね、てっちゃん。ほら、この人かっこいいでしょー!」

 「え? そうなの?」

 「もー、ほらこの人、私たちより年上らしいけど、てっちゃんみたい!」


 ゲームの中の画面を見せられても、よくわからないと首を傾げる藍鉄に、蘇芳はムスッとすると、そのキャラクターのことについて語り始める。

 熱く語るその姿に、妹の行く末を心配してしまう兄である。


 「どう? 分かった?」

 「全然」

 「うーん………あ、私声しか聴いてないけど、この人月さんに似てると思わない?」


 素早く変わった画面。

 本当に慣れ親しんでるなと思って、その画面の中を見れば、こちらに向かって二カッとほほ笑む顔に傷が付き、ズボンと服の裾をたくし上げている男性の絵。


 「随分壮絶な人生を歩んできた顔だね」

 「もうっ! ゲームにそんな壮絶な人生なんてないの!」

 「そうなの?」

 「そうなの!」


 で、どう? こんな感じ? と聞いてくる蘇芳に、藍鉄はじっくりとそのキャラクターを見直し、言う。


 「確かに髪はツンツンしてるし、こうやってよく袖をたくし上げてるな。傷はないけど」


 でもこれから訓練してたらこんな風に傷ができるかもしれないな、と藍鉄は考える。


 「へー………後は? 似てるとこない?」

 「そうだな………ああ、いつも笑顔だぞ」

 「そうなんだ!」


 キャラクターの表情一覧という所を見つけて、その場所を見てみれば、なんとも表情豊かな顔が出てくる。


 「そうだな、表情の変化が激しいのもこのキャラクターとの共通点かもしれない」

 「へー! あ、てっちゃんのキャラクターは本当に無表情なんだよー」

 「………はい?」


 藍鉄に似ていると言われたキャラクターの表情一覧という所を見て見れば、確かに動いていない表情筋。


 「僕はこんなに無表情かな?」

 「私と話してるときは少し動いてると思うけど、てっちゃん家族以外と話すときほんとに顔動いてないよー」


 妹である蘇芳に言われ愕然とする藍鉄。

 せめて愛想笑いを覚えた方が良いかもしれないと本気で思うのだ。


 「てっちゃんのキャラクターはねー一番最初に落としたの!」

 「うん? シューティングゲームじゃないだろ?」


 落ちる、という表現に、恋に落ちるなんて考えない藍鉄。

 文学小説を少しは読んでいる藍鉄だが、殆どは昔の陰陽師の文献であったり、最近の法律や社会事情についてであったり、とにかく蘇芳が普通に暮らせるようになる、というのが目標な藍鉄にとって、恋愛に興味を持つ時間などない。


 「もー、一応恋愛ゲームなの! 架空の男の人と恋するゲームなの!」

 「はいはい。僕にはその楽しみが全く分からないよ………」


 ため息をつく蒼月。

 同じく蘇芳もため息を付くが、その方向性は全く逆である。


 「あ、女の子と恋するゲームもあったよ」

 「ああ、月さんはそういうの好きらしいな」


 ゲームの山からシュミレーションタイプの物を抜き出してきて並べる蘇芳。

 蘇芳の部屋の半分はゲームが占めていると言う状況だが、それに文句を言う者は誰もいない。


 「へー。てっちゃんはしないの?」

 「画面の向こう側に興味はない」

 「えー? “もしかしたら好きになる娘がいるかもよ?”」


 いい悪戯を思いついたと蘇芳は少し笑って、そう言う。


 「ゲームの中のキャラクターより現実の人間の方が好きだな」


 笑ったことに気が付いても、なんで笑ったか分からない藍鉄は、思ったまま蘇芳の台詞に返す。


 「“でもほら、私みたいな可愛い子もいるんだし”」

 「は? 蘇芳の方が可愛いだろ」


 真顔でそう返す藍鉄に、蘇芳は下を向き肩を震わせ、堪えきれないと笑う。


 「………ぷっ。あっはっはっは!」

 「うん? なんか変なこと言ったか?」

 「てっちゃん、このキャラクターと同じこと言ってるー!」


 布団の上で笑い転げる妹を心配そうに、でもここまで興味を持つものがあったのだと安堵しながら、藍鉄はその様子を見つめる。

 そんなに似てるのかと、改めてそのゲームに目をやり、笑顔の練習をする藍鉄に蘇芳は腹を抱えて笑うのだった。

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