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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
21/59

09 現代に触れる話

 休日になると山を登り、藍鉄が蒼月に会いに行く、というのはもはや恒例行事になっていた。


 「んじゃ行ってきます!」

 「藍鉄君にもよろしく言っておいてね!」

 「はーい!」


 蒼月は、母が三人分と言って作ってくれた弁当を鞄に詰めて、また今日も山に登る。

 平日はいつも通り村の畑仕事の手伝いをしていたが、学校が完全に休みの日曜や祝日は藍鉄が住む山へと登っていた。


 「おーい、鉄! 来たぞー!!」

 「はい。月くん、いらっしゃい」


 家の前でそう呼べば、必ずそう帰ってくる藍鉄の声。

 初めてできた村での友達に、蒼月は舞い上がっていた。


 「今日はこれ持って来たんだ」

 「なんですか? コレ」


 藍鉄は、蒼月が思った以上に世間知らずであった。

 蒼月以上に知識は蓄えていたが、その知識が陰陽方面に偏っていて、子供らしい知識は欠片しか知らなかったと言うべきだろうか。


 「前はコントローラ持ってきて失敗したから今度は携帯ゲーム機だぜ!」

 「携帯ゲーム機、ですか」


 首を傾げる藍鉄に蒼月は苦笑して、カセットを入れる所に有名なRPGゲームを差し込んで、ボタンをどう押せばいいのかとか、どうやったら操作できるのかとか説明する。


 「へぇ………戦って、お姫様を助けるのが最終目的なんですね?」


 器用な藍鉄は、蒼月が隣で教えているそばで初めて触るとは思えないほどに上達していく。

 もし対戦とかしたらすぐに倒されそうとか思いながら、持ってきたゲームを紹介する。


 「そんな感じ。ほかにもこれは誰が一番早くゴールにたどり着けたか遊ぶゲームで、こっちは王様の無茶ぶりに頑張って抵抗するゲーム、そんでこっちが卵を選んで育てながらマスターっていう一位の称号を得るために戦わせるゲーム、これはいろんなゲームの主人公とかあつめて戦うゲームで何回キャラクターを使ったかで新しいキャラクターを使えるようになったりもするんだ」


 一つ一つ指を指して説明する蒼月に、藍鉄は器用にも手を休めずに目線を向けて頷く。


 「それごと貸すから使ってよ。これが充電器で、電池はここに置いとくから」


 リュックサックの中からゴロッと今はなかなか使われなくなった電池式の携帯ゲーム充電機を畳の上に置く。その隣に置いた電池の量は相当なもので、蒼月がどのくらいゲームに時間を注いでいたかがよくわかる量だった。


 「わざわざありがとうございます」


 これ全部でいったいいくらになるんだろうと考えて、どうせ払えないから何か気持ちだけでも返す方法を探したほうがいいかもしれないと藍鉄は考え直す。


 「いいって。蘇芳は今日も調子悪いんだろ? 調子いい時に家の中にこもってることほど楽しくないことはないからさ」

 「………そうですね、本当にありがとうございます」


 少し目を伏せて藍鉄はお礼を言う。


 「あ、一応母さんが蘇芳にって弁当作ってきたんだけど………」


 三つの弁当を出して、蒼月は藍鉄の顔をうかがい見る。


 「多分食べられないでしょうね………すみません」

 「いいって。俺が食べるし。もともとダメ元で作ってるみたいだからさ」


 悪いことをしたと眉根を寄せる藍鉄に、蒼月は気にすることないとその背中を叩いて励ます。


 「本当にいいんだってば。母さんも食べてほしいって言うよりも、きっと鉄が蘇芳の分まで無理してご飯作ってるんじゃないかとか、心配してるだけだから。あとはほら、俺がお世話になってるから迷惑料としてってか………言ってて悲しくなってきた」

 「あはは」


 戻った笑顔に蒼月はほっとして、とにかく昼飯食べて遊ぼうと藍鉄を誘うのだ。

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