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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
20/59

08 送迎と友人の話

 連絡もせずに遅く帰ったと母親に怒られ、父親に苦笑され、隣に藍鉄が居ると言うことに真っ赤になりながら蒼月はその説教をやり過ごす。


 「じゃあ、僕はもう帰ります」

 「あら、そう? 本当にありがとね、あ、ちょっと待ってて」


 中に駆け込んで帰ってきた蒼月の母は、手にいっぱい野菜を抱えて戻って来て、その量に藍鉄は苦笑する。


 「妹さんと二人暮らしって聞いてるわ。是非持って行って頂戴」

 「ありがとうございます」


 その一連の挨拶に入るすきがなく、蒼月はただその様子をおろおろと見ていた。


 「野菜、ありがとうございます。帰りますね」

 「じゃあ、俺送ってくる! 母さん村はずれまで行ってくるよ!」

 「分かったわ。夕飯もあるんだから早めに帰って来なさいね」


 蒼月は母の許しも出たことで、藍鉄が“狼”を使う村はずれまで付いていく。

 沈んでいく夕日に、何か話さねばと考え必死に言葉を絞り出す。


 「あのさ、今日はありがと!」

 「いえ。次は迷わないでくださいね」

 「う………あのさ」

 「はい?」


 気恥ずかしくなって少し黙る蒼月だが、意を決したように話す。


 「俺の友達になってくんねぇ?」

 「いいですよ」

 「駄目なら………って、え?」

 「別に友達になることに何か問題でもあるんですか?」


 藍鉄は意味が分からないと首を傾げる。

 流石に今まで同年代の友達なんていたことがなかったが、友達という言葉は知っているし、訪れた先で友達同士が遊んでいる様子を見たこともあったため、友達という言葉とその内容は知っている藍鉄である。

 それが本当に知っているかどうか、なんて指摘する人なんていないわけで。


 「あ、いや、そんなことはないんだけどさ………もう陰陽師として活躍してるヤツは友達とかいらないって突っぱねるかと思ったから」


 しどろもどろに弁解する蒼月に、藍鉄は一つため息をし、少年らしい顔つきとなってこう言う。


 「僕はそんなに性悪に見えましたか?」

 「プッ」


 それが何となく時雨に似ているような気がして、蒼月は笑う。


 「俺ら、同じ青色の名前なんだな」

 「そうですね」


 藍鉄と蒼月。

 どちらも名前の頭文字は青系統の文字なのだと、何となく盛り上がる蒼月。

 藍鉄はほほえましそうに、懸命に話題を絞り出そうとする蒼月を眺めている。


 「うーん」

 「何ですか?」

 「いや、なんて呼ぼうかなーって」


 そんなこと今まで考えたこともなかったと藍鉄は思う。

 何せ今まで藍鉄が関わってきたのは同業の大人たちと、依頼者である大人たちばかり。依頼者はもちろんただの名前で呼ぶし、同業の者たちは言霊をよく理解しているから藍鉄と、そのままの名前でしか呼ぶことはない。

 逆に蒼月は、同年代の友達は少なからずいる為、名前をそのまま呼ぶなんてことはほとんどない。知り合いから友達に格上げしたら、あだ名ぐらい付けなきゃ、と考える蒼月である。


 「そのままでいいじゃないですか」

 「いや、そうだなー………鉄! 俺これから藍鉄のこと鉄って呼ぶ!!」


 それ以上いい考えは浮かばないと、笑顔で何とがごまかしながら藍鉄に笑いかけると、蒼月も微笑み返す。


 「じゃあ、僕は月さんとでも呼びましょうかね」

 「お、おう! よろしくな」


 普段笑顔ではない人の笑顔ほど嬉しいものはない。

 嬉しくなって赤くなった頬を夕日のせいだとごまかして、“狼”の背に乗った藍鉄を蒼月は見送った。

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