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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
15/59

03 双子の兄妹の話

 双子の妹である蘇芳は、今日も奥で寝込んでいる。

 最近調子の悪い日が良く続くみたいだから少し心配だ。

 時雨さんに呼ばれて顔を出さなくちゃいけないけれど、行きたくない。

 あの人は欲に走るからすごく扱いやすいけど、最近はその眼になんだか何か恐ろしいものがよぎる気がして、とっさに逃げたくなる。そんなこと、できないけど。


 「蘇芳、大丈夫かい?」

 「てっちゃん………うん、大丈夫」


 襖をあけると、そこに長い髪を一つに束ねて布団から起き上がって休んでいる妹の姿が目に入る。

 顔は青白く、今にも倒れてしまいそうに見えるが、これが最近の普通だ。


 「………今日は時雨さんの所に行ってくるけど、明日はちゃんと」

 「てっちゃん。大丈夫だってば」


 妹は僕に“辛いこと”を言わない。

 そりゃ双子だし、ずっと二人で生活してきたから分かるけど、ぜひとも言葉にしてもらいたいと思う僕がおかしいんだろうか。


 「………分かった。行ってくるね」

 「いってらっしゃい!」


 時雨さんは綺麗な服を着て行かないと不機嫌になる。

 時雨さんが居る時だけは、正装だ。

 まだ成人していないから狩衣を着ること許されず、僕が着るのは水干。

 確かに裾の長い狩衣よりは動きやすいけど水干も嵩張るから、普段着の着物がいい。着物だったら着崩れるから激しい動きはできないけど、風が通るから涼しい。


 「“狼”」


 水干の白い袖の内側に張り付けてある無数の式のうち、狼の形態をしたものを召喚して背に乗る。

 まだ昼を過ぎたばかりだけど、村まで獣の足で一時間はかかるから、早く行くことに越したことはない。


 「いやだなぁ………」


 いい加減諦めてくれればいいのに、何度も誘いをかけて来る時雨。

 妖狐を手に入れてどうしたいのかは分からないが、おそらく何かしたいことがあるのだろう。

 そんなどうでもいい頼みごとを半分妖狐の藍鉄に頼んでしまう馬鹿らしさは失笑を誘うが。


 「ね、僕はどうしたらいいんだろうね」


 今もしも時雨と結んでいる契約を打ち切ったら、蘇芳の呪いをはがす為とか何たら理由をつけて、藍鉄をこき使うための人質として蘇芳を監禁するだろう。あまりにも簡単に、しかし確実に理解できてしまうその短絡的な行動は、今までの時雨の行動を各地で聞いて回った結果知ったことだからかなりの信用性がある。


 「あれ? あの子、確かこの村唯一の中学生だっけ」


 農作業をおじいさんと一緒にやってる中学生をちらっとみて、本当だったら蘇芳も僕も中学校に行けたのかもしれないと思い、いまさら考えても仕方ないとため息をつく。

 じっと家でいる蘇芳のために、古い物が中心になってるけど、教科書や本など、使わないけど売ることもできないものを受け取ってほぼ独学だけど勉強は続けている。

 中学生は今どんな勉強をしてるんだろうとちょっと疑問に思ったりするけれど、基本的に藍鉄が回る村々は子供が居ない過疎村であることが多く、今の勉強に関わることはほとんどない。


 「こんにちわ、藍鉄です」

 「………いらっしゃいませ、正門を開けます」


 電気や水道、それにガスがこんな村でも引かれているのは正直すごいと思うけど、由緒正しき陰陽師の分家の家がオール電化のイラクサじゃなくてポリエステルの畳ってのも締まらないと思う。陰陽師が和服を着るのだって、一般人との差別化の意味もあるけど、それ以上に多くの人に手を差し伸べられるようにって意味が込められて、“和”服だったはずなのに、ぜったい時雨は理解してない。


 「よく来てくれたね、藍鉄」

 「こんにちわ、時雨さん」

 「さて、今日呼んだのは他でもない。妖狐の目撃情報が手に入ったんだ」


 ほら来た。

 

【修正】

・たっちゃん → てっちゃん

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