02 少年の将来の話
仕事の後は、おばさんが淹れてくれた緑茶で一息。
断じて年寄ではない。
緑茶が一番いいんだ。
いつもジュースじゃなくてごめんねって言われるけど、俺ジュースとか嫌いだから別に気にしてないよ?
「あれ、またあいつ来てる」
「お、藍鉄の奴か。大丈夫かねぇ」
喋ったことないけど、村にたまに降りてくる俺と同い年の陰陽師らしい。
中学通ってないとか、本当は駄目だろうに、陰陽師は特別なのかもしれないね。
「何で?」
「うん? 藍鉄は多分、時雨様に助力を乞われて村に降りてきたんだろうがなぁ」
この村には、代々続く陰陽師の分家が根を下ろしている土地だ。
そこの今現在の投手である時雨と言う陰陽師がこの村の守護を担当している。
それなりに力のある家の出身で本人の実力もなかなかのもの。
全国から指名依頼が来る程度には知名度が高い陰陽師であると、将来俺が仕えるかもしれない陰陽師の上位にランクインしてる奴だ。
「最近の時雨様は妖狐探しばかりしておられる。きっと藍鉄の奴もそれに同行させられるんだろう」
それが中堅な実力の時雨サマを俺が仕えたい陰陽師の上位にランクインさせている一番の理由だ。
唯一単身で妖狐に挑んだという稀代の陰陽師は九年前に火災に巻き込まれて家族もろとも死んでしまっている。その陰陽師が生きていれば是非とも仕えたかったが、死んでいるならば仕方ない。
大抵の陰陽師は、妖狐に恐れをなして、なるべく関わらないようにしているのだ。
そんな腰抜けに仕えたんじゃ俺は俺の剣を振るえないし、目的の妖狐も倒せない。
「へー」
藍鉄って言うやつは俺と同い年だけど、正直気に食わないから将来仕えたいとかは思わない。
学校行かなくて妖怪倒してればいいとか、村の人から野菜とか何もせずにもらってるし、呪いをかけられたせいで外に出ることができない綺麗な女の子と一緒に住んでるって話も聞くし。
将来仕えたい陰陽師ランキングぶっちぎりの圏外だ。
「なんだい、陰陽師に興味あるんじゃないのかい?」
「陰陽師に興味はあるけど、あんな暗い顔の奴には仕えたくない」
頬を膨らませてそう言うと、じーちゃんもばーちゃんも笑う。
まだ分からないことがいっぱいいあるから、もっといっぱい中学で学んで来いって、そう言うけど、ほんと毎回言われるけど、意味わかんない。
「ま、いつか分かる時が来るさ」
「じゃが芋、好きなだけ詰めて持って帰りな。もうすぐ夕飯の準備があるだろう?」
「あ、やべ! 早く帰んないと母さんに怒られるっ」
黒が時間通りに帰ってこないで死んだせいか、時間をすごく母さんは気にするようになった。
ちょっとでも連絡なしに時間に遅れたりすると、真っ青な顔してどうしたのって聞いてくるんだ。別にそこまで気にしなくても死体で帰ってきたりしねーよって言いたいけど、そんな軽口叩いちゃいけないことぐらいわかってる。
「じゃが、ありがと!」
「また手伝いに来たらわけてやるさーな!」
大きく手を降ってじーちゃんたちに別れを告げる。
ちょうど帰り際に藍鉄の野郎を見つけて、すごく蹴っ飛ばしそうになったけど、お高そうな服に汚れが付いて文句をつけられるのも嫌だからやめた。
「ちっ、いい子ぶりやがって」
背中に向けてそう言って、何だか独り言を話してる自分に恥ずかしくなってさらに駆ける速度を増す。
「たっだいまー! 男爵もらったよー!!」
「お帰りなさい! スライサーで切ってポテチにしましょうか。今日は金曜日だし」
あんまり料理は得意じゃないけど、スライサーで薄く切るぐらいのことはできる。
ちょっと薄さが変わったり、手を切りそうになるけど、概ねのことはできる。
できるったらできる。




