01 中二の少年の話
本編開始です。
一応番外編から読んでも読める話になっているはず。
……はず。
俺がこの村に越してきたのは、六年前。
六年前の俺の誕生日、妖狐がくれた誕生日プレゼントは妹の死体だった。
「蒼月、別に手伝わなくていいんだよ?」
「あ、大丈夫。俺、暇だから。体動かしてないとなんかムズムズするって言うか」
俺は物言わぬ妹の死体を見て、泣けなかった。
泣けなかったけど、もう動かない妹を見て悲しいとは思ったけど、妹を殺した妖狐を殺してこそ、俺は泣けるんだと思う。
妖狐を殺さないと、俺はきっと泣けないんだ。
「そうかい? じゃあ、あそこから台車を引いてきてくれるかな」
「分かった!」
妹が妖狐に殺されたって聞いて、住んでた街の人から、呪われた家族として扱われた。
まるで病原菌のように、俺を触る度胸試しまであったくらいだ。
だったら触ってみろよ、呪いを移されたかったら触れと追いかけ、それを止めに来た先生も怯えてるから同じように脅し、親が呼ばれ、保護者会に乱入し、さんざん引っ掻き回して腫れもののように扱われたけど、結局父の転勤が決まり、だったら遠くに行こうと、過疎村で家と畑付きの家に引っ越した。
「じーちゃん! 台車ってこの緑の方でいいのー?」
引っ越した先の村は、本当に過疎村で。
割と新しい洋風な家で電気もガスも通ってるけど、コンビニもないし、駄菓子屋は八百屋に併設してるし、診療所はあってもでっかい病院や、スーパー何てものは一切ない、ひたすら畑が広がる静かな農村だった。
高台にある村で、父さんは車で一時間先の街で働いている。
「そじゃのー! 足がぐらついとるからきーつけー!!」
「わかったー!!」
隣の村の中学に通ってるけど、友達もそれなりにいるけど、友達と仲良くするよりもいつか妖狐を倒せるようになる為に足腰を強くする訓練と称して畑仕事を手伝っている。
母さんは村の婦人会に顔を出して、将来畑を自分で管理するんだと、いろんな畑に顔を出して野菜や果物や、ビニールハウスや何でビニールを地面に敷くのかとか、農業について学んでる。
「持って来たよ!」
明らかに街に居た時よりも顔つきがよくなった母さんの様子に安堵してる俺と父さん。本当はここに黒もいるはずだったのにな。
「ちゃんと押さえとけよ、転がらないようにな」
「うん」
剣とか振り回して、ゲームの主人公になったつもりかよとか笑われるけど、将来妖狐を倒して回るには、霊力がない俺だけでは絶対に無理だ。
だから、強い陰陽師の式になって、腕力でその陰陽師を支えて、妖狐を切り伏せられるようにする。それが俺の将来の目標。
皆最初は笑うけど、妹の仇を絶対に討ってやるんだって、将来の夢にも書いたし、小学校の卒業文集にも書いた。
通信簿にも将来設計がしっかりしてるお子さんですね、って褒め言葉が書かれてたんだぜ? それを見て父さんも母さんも頭を抱えてたけど。
「うわっ」
「ちゃんと押さえとけ」
ゴロゴロと男爵芋が台車の上に積みあがっていく。
本来は農作業用一輪車と呼ばれるらしいこの手押し車は、最初見た時は炭鉱にあるべきものじゃないのかと思ったけど、よく映画や漫画で足腰を鍛えるにはちょうどいいって言ってるから、俺の訓練にはちょうどいいんだと思う。
「お、重ぃいぃー」
「あっはっは、頑張れ!」
励ましてくれるのはありがたいが、所詮中学二年生にそこまで期待しないで欲しい。
しかも肥沃な地面にめちゃくちゃ一つしかない車輪が食い込んで動かし難い。
視点力点作用点だっけ? あれ違う?
そんな感じで一か所に重みが全てかかってるから動かしづらいんだ。じいちゃん手加減してくれよ。




