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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
番外編
12/59

12 今後の話

 子供の流れの陰陽師。

 小さいからその実力は疑われたが、頼んできた者の血を使って作る囮による妖怪を払うその手際は、その実力を疑えないほどに高く、優秀な陰陽師が生まれたと助けられた村や、辺境の村などではありがたい存在としてすぐにその話が広まった。


 「こんばんは、陰陽師です。僕に依頼ですか?」


 その子供の陰陽師に頼むのはとても簡単だ。

 家の前に、人型に切った紙と、少量の髪を切って置いておくだけ。

 数日後、その子供が現れる。


 「えっと、妖怪の退治をお願いしたくて」


 水干を着たその子供は、実は天狗なのではないかとか、人間好きな山神様の使いなのではないかとまことしやかにささやかれている。

 すぐにどこからか現れて、依頼が終われば陽炎のように消えてしまう。

 本当にいたかどうかさえ怪しいがその実力は折り紙つき。


 「分かりました。妖怪をおびき寄せるのに僕の霊力だと強すぎて寄ってこないので、血を分けてもらいたいんですけど、いいですか?」


 要求する血の量も少量で、小瓶の底に少し溜まる程度。

 大きな術式を使う場合は少し多めに要求されるが、それでも小瓶一本程度。

 霊力が強すぎて退治するはずの妖怪が対峙できる範囲まで寄ってきてくれないと言う悩みは、霊力の欠片も見ることができない一般人にとってもはっきりと分かってしまうほどであったから、誰も血を分けることに反対しなかった。


 「もちろん、成功報酬だけど………」


 彼が天狗や山神様の使いなのではないかと思われていたのも、それに起因する。

 霊力が強すぎるせいか、彼が町に来てから数日の間は絶対に妖怪や獣でさえ怖がって近寄らないのだ。まるで霊災の後の様だと誰かが言った。

 それほどに、藍鉄の存在は周囲に影響をもたらしていたのだ。


 「お金は要りません。………その、少し食材を分けてもらえたら、それで」


 しかも金銭を要求せず、食材を求める。

 少し話を聞けば、呪いにかかって家から一歩も外に出ることができない妹によいものを食べさせてやりたいから、という藍鉄の言葉は、家族者の涙を誘った。


 「わかった。終わったら呼んでくれ。米を渡そう」

 「ありがとうございます」


 妹の為に流れの陰陽師をする少年の話は、様々な場所に伝わった割に、そう多くの有権者の耳には触れなかった。

 理由はいくつかある。

 薄給で地方の守護をしている陰陽師が知れば、ほとんどの者が少年を排除するだろうと考えられること。

 お上に少年のことが知られれば、少年は国が抱える陰陽師として引っ張られてしまい、本当に妖怪に困っている村などに来てもらえなくなるだろうこと。

 他にもさまざまなことがあげられるが、その判断は、藍鉄と蘇芳を助けていた。


 「さて、今度の妖怪が上玉だったらいいな」


 藍鉄が依頼者から血を貰うのは当然自らの欲を満たして、それ以上を望まないようにする為。

 妖怪退治を優先的に受けるのは、妖怪の魂を持って帰って蘇芳に食べさせる為。


 「今日も元気よくお仕事するぞ!」


 山の中で、多くの式紙を従えて、水干を来た少年は瞬く間に問題を解決していく。

 家で待つ妹のために早く終わらせて帰るんだと笑顔で言うその姿に、多くの者が感動し、感謝を大目に渡すのも仕方ないことだろう。

 概ね、双子にとって良い方向に進んでいた。


 「ただいま」

 「おかえりー、ご飯作ったよ!」


 定期的に魂を食べれば妖狐は表に出てこないのだと学んだ蘇芳は、一日の大半を部屋に引きこもって過ごすが、朝食と夕食を作る時と、週に一回の掃除洗濯の時だけは家の中を歩き回った。

 家の外に出ると、どうしても美味しい人間の魂の匂いに引っ張られて、妖狐に意識を乗っ取られてしまうからと外に出ることはなかったが、家の中を歩き回れるだけでも十分な成長だった。

 こうして双子は誰からも干渉されることはなく、山に籠って生活していくのだった。

番外編完結。

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