12
ー翌日、正午。
スヴェンとノンノは冒険者ギルドへ訪れ、係員に用件を伝えると二階のギルドマスター室へ案内された。
ソファへ腰掛けしばらく待つと、昨夜約束した仮面の冒険者と共に球体に羽が生えた魔族も入室する。
おそらくこの魔族がギルドマスターなのであろうと判断した二人は立ち上がりお辞儀をすると、気にせず座って下さいという“音”が耳に響いた。
「お待たせしてごめんなさいね、少し業務が長引いちゃって。私がシーゲルの冒険者ギルドマスターをさせてもらっているキャロよ」
「僕も自己紹介がまだだったね。アリオスだ。一応、ランクは銀だよ」
「ではこちらも。私はスヴェンと申します。ランクは金です」
「うちは商人ギルド所属のノンノや。よろしゅう」
「単刀直入に言いましょう。前領主のニーベル子爵が病に倒れ、その息子が代替わりして数日後から失踪者や異常な店への締め付け、言動監視が行われています」
そこまで伝えるとギルド長のキャロはその大きい瞳を閉じた。
「それをなんとかしたくても出来ない状況が続いている、と?」
スヴェンがそう訊ねると、キャロの傍らに立つアリオスがこくりと頷く。
「初めは息子の一人……双子の弟が反対していたんだ。こんな状況で民は安心して暮らせないと。だが兄は何かを狂信しているかの様にそれすら聞く耳を持たず民の目の前で弟を捕縛した。それだけじゃない。この情報を他の貴族へ伝えようと馬車を走らせる民もいたようだが……結果はお察しさ」
この街に来る道中で血が付着し壊れた馬車があったことを思い返す。
どうやらそれも、数ある失敗した一人の勇気ある行動のなれの果てであったと考えると腸が煮え狂うようだ。
スヴェンは無表情で我慢していたが、そうもいかない人物がここには居る。
「そんなんおかしいやんか!普通に生きていく商売も出来ひん、報告も出来ひん、挙げ句命まで取られるなんか……そんなん、この街を壊そうとしてるとしか考えられへんやんか!」
――その通りだ。
そしてそれを行って利がある者が居るとするならば……
「以前の魔族……ですかね」
「スヴェンが戦ったっていう?」
「はい。彼がもしこの街を干上がらせ本格侵攻するのなら、上手く進めばバスを奪って鉄道や飛行船のルートも確保出来ます」
「そして協力した兄貴は成功報酬で好き放題出来る、と。なるほどねぇ」
「なるほどじゃありませんよ!報告書を見ましたがあの小さなコッコ村にさえ過剰戦力を出す魔族ですよ?ここを制圧しようとするのならそれ以上のはず……あれ?」
慌てながら状況を整理したキャロは、己の仮説に疑問符を抱く。
「そんな軍勢、すぐに集められるのでしょうか?」
「集め……てたらこの辺の臭いすごいことになってると思うで?」
「っとゆーことは……」
「キャロさん、ギルド間通信機はありますか?」
「えぇ、まぁ。ですがギルド同士の連絡でなんて信用してもらえるかどうか……」
「今からお伝えする周波数に直通回線を繋げていただきたいのです」
これだけは使いたくなかったという気持ちが溢れんばかりの雰囲気を醸し出し、スヴェンはこう続ける。
「番号は――――――。アーデンバーグ侯爵家です」
「「「「「はいいいいいい???」」」」」




