閑話 側近Aの独白
週一デートのお茶席で、眠りこけたくせに婚約者の令嬢から、碧色の蛇が好きだと告白まがいなことまでして貰った殿下。
受かれてやがります。
仕事をしてください。
ちなみに、碧色の蛇が殿下だと翆鈴様が御存知なことを殿下は知らない。
「なあ、翆鈴は蛇が好きなんだって」
「そう仰ってましたね」
「碧色の蛇が好きなんだって」
「そう仰ってましたね」
「ああ、どうしよう」
ベッドでポーッとしていたと思ったら、私の生返事も気にせずに、赤い顔して、枕を抱えて あっちへゴロゴロ こっちへゴロゴロ。
ハッキリいってウザイ。
受かれて仕事も放り出したまま。
心得顔の第3皇子殿下がやって来て、殿下の分まで仕事を抱えて行った。にやついてらしたけど。
4人の皇子殿下は全員頭の出来がいい。
しかも、とても仲がいいものだから、仕事が大変だとお互いに泣きついて、いつも助け合っている。
きっと、初恋に傷ついた弟皇子が、幸せな恋をしていると、兄皇子達は応援しているのだろう。
殿下は『皇子殿下が好き』とは言われても、『蛇の殿下が好き』と言われたことがない。
『大嫌い』と初恋の方に言われたことはあったが。
それは、皇室男子が蛇になることが秘事である以上、仕方がない。
だからなおのこと、蛇の姿の自分を好きだと言われたことが嬉しいのだろう。不憫だ。
しかし、だからと言って、うちの殿下は!
「なあ、どう思う?」
「翆鈴、蛇が好きなんだって!」
繰り返しである。
執務時に見せるキリッとした姿はない。
まあ、普段から執務以外は抜けているが。
だが、ここは側近として!
心を鬼にして!
殿下が忘れている事を教えて差し上げよう!
だって、面白いから。
「殿下、何かお忘れではないですか?」
「? 何をだ?」
ああ、やっぱり気付いておられない。
面白いったらもう!
「殿下、翆鈴様はですね」
「ああ」
「碧色の、蛇が、 好きだと仰ったのです」
「うん、そうだが?」
「ですから! 翆鈴様は、蛇がお好きだと仰ったのであって、殿下をお好きだと仰ったわけではありません」
ボフッ
枕が落ちました。
「す、翆鈴は俺を好きだと」
「仰ってません」
「…………」
ガガーン
そんな音が聞こえそうな勢いで、殿下の顔色が変わります。赤から青へ。
申し訳ありません、殿下。
その通りです。翆鈴様は殿下が大好きです。
おまけに蛇のお姿も御存知です。
だから、翆鈴様の『碧色の蛇が好き』という
言葉は告白以外の何ものでもないんです。
知らないふりで、乙女らしく殿下からの告白
をお待ちになっているだけなんです。
翆鈴様も翆鈴様で、殿下がご自分を好きか
どうか悩んでいらっしゃるし。
ああ、おかしい!
一応、心のなかで謝罪して頭を下げておく。
可笑しくて可笑しくて。
側近としては、もう最っ高のエンターテイメント!
だって、仕方がないじゃないですか。
翆鈴様ご自身が、碧色の蛇が殿下だと知って
いることを秘密にしろって仰ったわけですし。
主の婚約者様の命令ですし。
面白いことは真摯に楽しむ主義でして。
あー、もうほんと、第4皇子付きで良かった!
お読みいただき、ありがとうございます。
分かりづらいですが、側近達は緑華殿下が大好きです。
意地悪も、からかいも、すべて愛しさゆえ。
一応、為政者としては優秀なので尊敬もしています。
仕事の時とそれ以外で、殿下のギャップに嵌まった人達。
あと、2~3話ぐらいです。
どうぞ、お付き合いくださいませ。
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