閑話 側近Cの苦悩
「はあぁぁ~」
僕は早朝から馬車に揺られている。
お仕えしている第4皇子の緑華殿下から、重要な役目を任されているからだ。
確かに重要だけれども!
他の2人に任せたかったというのが本音。
チラッ
傍らには、薔薇の花束と殿下からのカード。
◇
「いいか? 必ず、直接翠鈴に渡すんだ。カードを読んだ時に、どんな顔をするのか、何を言うのか余さず見て聞き取って来るんだ!」
「ああ、でも何て書けばいい?
君は綺麗だ? 君といると幸せだ?
何て書けばいいと思う?」
「『貴女が好きだ』と素直に書いたらどうです?」
ブフォッ
「お前、気は確かか? 翠鈴が俺のこと何とも思ってなかったらどうするのさ」
大丈夫、絶対、そんなことないです。
そう言えない己がつらい。
言えないから、こんなキューピッド紛いの
ことまでさせられているわけだし。
結局、ゴミを量産して主が書いたのは
『君との茶は旨い』だった。
何なの? あの阿呆は。
そんな、翠鈴様を褒めているんだか、茶を褒めているんだか分からない言葉を、翠鈴様は喜んでくださるだろうか?
果たして翠鈴様は喜んだ。
カードを読んだ瞬間、顔を赤らめ、目をキラキラさせながら身を捩って悶えていた。
そんなに?!
『殿下、私、諦めませんわ!』
翠鈴様は読む前と、うってかわってヤル気満々なお顔をされていた。
『破れ鍋に綴じ蓋』
昔、じいちゃんが言っていた。
こういうことか、やっと意味がわかった。
だが、そんな翠鈴様の姿を殿下にはお伝えしない。
お伝えしようものなら、呆けて使いものにならなくなるからだ。執務に支障が出てしまう。
そう、国民の為だ。
けして、面白いからじゃない。
とっくに両想いな2人が、ジタバタするのが楽しいからではけしてない。
想いは募るとも言うしね?
どのみち、二人の結婚は確定事項なわけだし?
もうしばらく、両片思いを堪能してもらおう。
帰りの馬車、同類の側近達はともかく、殿下に何て伝えようかと頭を悩ませた。
お読みいただき、ありがとうございます。
次回は側近Aの独白です。
側近Bのお話は18禁なのでお蔵入りさせました。




