お花をいただきました!
王城庭園の東屋。
あまり天気がよろしくないので、本日は東屋でお茶をいただいております。
近頃は殿下がよく笑ってくださるので、ぽかぽかと温かい気持ちになりますの。
殿下も同じお気持ちだと嬉しいのですが。
会話がなくても、熟年夫婦のように心地好い空気が────って、殿下が蛇に!
寝ておられただけですの?
私がおりますのに油断され過ぎでしてよ。
『おまかせください』
協力者の側近Aが、スッとメモを寄越します。
その間にも、側近Bが籠を差し出し、側近Cが殿下を寝かせ、そっと布を掛けております。
素晴らしい連係プレー! 籠ベッド!
いつでも用意されているに違いありません。
籠の中で、すやすやと眠る殿下の愛らしいこと。
『では、あちらへ』
側近Aに連れられ、殿下の執務室へ。
「先ほどは見事な連係プレーでしたわ」
「恐縮です」
「では『私はお花を摘みに行っていた。だから蛇のお姿を見ていない』と、いうことでよろしくて?」
「はい、殿下がお目覚めになりましたら合図がありますので」
「わかりました」
「では本日の殿下のお話ですが────」
苦行が始まってしまいました。
実は私、側近達から
「殿下の愛らしいところ100」という謎の講座を聞かされているんですの。
初めは微笑ましく楽しかったのすが、殿下が眠ってしまわれる度に……こうも続くと苦行でしかございません。
この側近達、どれだけ殿下がお好きですの?
殿下、早くお目覚めにならないかしら。
しばらくして東屋に戻りますと、殿下が不機嫌そうにお待ちになっていました。
「お待たせ致しました」
「ずいぶん長かったようだが」
ええ、殿下のお昼寝が。
ムカつきましたので、ちょっとお返しを。
「殿下、私、蛇が好きなようですわ」
ブバフォッ
「殿下、お茶は飲みものでしてよ?」
盛大にお茶を吹いた殿下が、目をパチパチ。
「今、何と?」
「ですから、私、蛇が好きになりましたの」
「?! どの蛇だ?」
「どのと言われましても蛇は蛇ですわ」
他の皇子様方に惚れたとでもお思いかしら。
「そうだな、そうか、蛇が好きか!」
「で、どうして好きになったのだ?」
殿下が前傾姿勢です。
「先日、こちらのお庭で、美しい碧色の蛇を見かけましたの。それはもう、美しい蛇でしたわ」
ガタタッ
殿下が椅子から落ちました。
お顔が赤いですわね。
ちょっとスッと致しました。
側近A・B・Cが揃って親指グッジョブ
お褒めいただき ありがとう
「す、すまない。具合がおかしいようだ。
今日はこれで失礼する」
「まあ! お大事になさってくださいませ」
「ああ。……翆鈴、いや。ではまたな」
あとちょっとでしたのに。
ここまでしても、蛇になると打ち明けていただけないなんて、自信が失くなりますわ。
この日は、悲しい気持ちで公爵邸に戻りました。
翌朝、まだ暗い気分でいると、執事がカードを差し出してまいりました。
傍らには真っ赤な薔薇を持った殿下の側近が。
『そなたとの茶はとても旨い』
殿下からのお花でございました。
しかも、初めての直筆のメッセージ付き!
『旨いからまた一緒に飲みたい=私に会いたい』ということですわよね。
何て不器用なお誘いなのかしら!
殿下! 大好きですっ!
私、諦めませんわ!
お読みいただき、ありがとうございます。
緑華皇子という沼にはまっていく翠鈴嬢です。
次回は、同じ沼にはまっている側近視点のお話です。




