嫉妬していただきましたの!
「翆鈴は長い動物は好きか?」
相変わらずの庭園の東屋で。
緑華皇子とお茶をいただいておりました。
「何ですの?藪から棒に」
「いや、だからな。こう、ぬーっと長い動物は好きかと聞いている」
何処まで卑屈になってしまわれたのでしょう。
お恨みしますわよ、白媛様。
「突然、そのようなことを仰られても」
「なら、足がない動物と足が多い動物では、どちらが好みだ?」
そこまでですの?
「蜘蛛とかですか?」
「そうだ、蜘蛛と蛇ならどちらだ?」
殿下、もっとプライドをお持ちになって。
先ほどから、殿下の側近が髪をかきむしりながら、百面相しておりましてよ。
「しいて言えば、足がない方ですわね」
「そ、そうか!」
パアァッ と殿下が顔を明るくして、お茶を召し上がりました。それだけで満足なのかしら?
当分、打ち明けて下さらないようですわね。
少し攻めていきませんと埒があきませんわ。
「殿下? 殿下は私をお好きですか?」
「うーん。さあ、どうだろう?」
むきーーーーっ この蛇皇子は!
「では、好きになれそうですの?」
「……うん、まあ、それはなれそうかなという気もしなくもなくはないというか……」
どっちですのっ!
「では、殿下は蛇がお好きですの?」
「あ、ああ、 大好きだな。特に仲良しの兄、違った、蛇がいてな。とても大きくて、力強くて、美しい青い蛇なのだ」
大絶賛でしてよ、第3皇子。
あの弟馬鹿が聞いたら鼻血を吹きそうですわね。
「で、その青い蛇はな、とても……」
「どうなさいました?」
「いや、すまない。蛇の話など不快だろう?」
キラキラした笑顔で、大好きな蛇を語っていた殿下が、急にしょんぼりされています。
「いえ? そんなことございませんわ」
「そ、そうか」
「ええ。そのような美しい蛇なら見てみたいです」
人の姿なら嫌というほどお会いしてますけど。
「だろう? いつか兄に頼…ゴホッその蛇に合わせてやろう」
第3皇子のこととなると、嬉しそうなお顔をされるので、ちょっと意地悪したくなりました。
「他に蛇はおりませんの?」
「あ、いや、そうだな……」
「やあ、奇遇だねえ」
また出ましたわ! この邪魔虫皇子。
覗いていたくせに何が奇遇ですか!
鼻血が残っておりましてよ?
「兄上!」
「やあ、緑華。元気そうだね」
「はい、兄上もご一緒にお茶を如何ですか?」
「貰おうかな」
この邪魔虫皇子、私のあっち行けという視線を無視して居座りやがりましたわ。
「第3皇子殿下、お忙しいのではなくて?」
「いや?弟と幼馴染みの近況が聞きたくてな」
近況も何も、覗いててご存知でしょうに!
「あら、そんな嬉しいこと仰って」
あはは、うふふ と戦っておりますと
「翆鈴と兄上は仲が良いのですね」
「どこがだ?」「どちらがですの?」
同時にグルンと首を回した私達に、緑華殿下が拗ねられたようです。
「翆鈴は兄上と一緒になった方が…」
「俺にも選ぶ権利はある!」
「私には殿下がいらっしゃいますのに!」
食いぎみに反論した私達に緑華殿下が、少し嬉しそうに仰います。
「なら、翆鈴はこっちに座るべきじゃない?」
そう仰って、ご自分の隣を指します。
ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
嫉妬ですわね?嫉妬されたのですわよね?
あの! 緑華殿下が! 私の為に!
「そ、そうですわね。失礼致しますわ」
そう言って、緑華殿下の隣に座ります。
何だか、暑いですわね?
「ほら、翆鈴、お茶」
隣には、ニコニコ顔の緑華殿下。
「ああ、そろそろ時間かな」
そう言って、したり顔の第3皇子が席を立ちます。
「またご一緒にお茶致しましょう?」
「グホッ …では、またな」
ああ。何て暑い日なのかしら?
お読みいただき、ありがとうございます。




