第8話:無敵の布陣と、新たな罠
「れ、レン……大変だ! 鉱山地帯の最南端エリアに、また別の初心者ギルドたちが押し寄せてきてる!」
ハックが慌てた様子で息を切らしながら報告に飛び込んできた。
どうやら前回の返り討ち劇を聞きつけた近隣の弱小ギルドどもが、「あいつらを数の暴力で潰せば、ポーション原料の鉱床と拠点が丸ごと手に入る」と味をしめて群れをなしてきたらしい。その数、およそ三十人。
「数の暴力、か。一番頭の悪い攻め方だな」
俺はふっと鼻で笑い、静かに立ち上がった。
アイアン、アーチェ、そして新たに加わったフィアが、一切の迷いがない表情で俺の背後に並ぶ。
「フィア。お前に教えた『ヘイト分散回復』の理論は覚えているか?」
「は、はいっ! 回復魔法のヘイトが発生する瞬間にポーションを挟むことで、敵に私の位置を特定させない……ですよね!」
「完璧だ。アーチェは狭い坑道の天井を狙え。岩盤の耐久値を削って落石で退路を断つ。アイアンは入口で仁王立ちだ」
「「「了解!」」」
返事は一つ。裏切りのない、完璧な連携。
坑道の入口へ到着すると、そこには功名心に目を眩ませたプレイヤーたちが武器を構えて群がっていた。
「おい! 出てきたぞ! たった四人……いや、あいつ以外の三人はBotじゃねえか!」
「ハハッ、Bot混じりの弱小パーティなんて踏み潰せ! 突撃――」
「アイアン、撃滅開始」
――ガキィィィィン!
先頭の戦士が振るった大剣が、アイアンの大楯に阻まれ、甲高い金属音とともに跳ね返された。完璧なパリィ。体勢を崩した戦士の喉元へ、アーチェの放った矢が狂いなく突き刺さる。
「ヒッ……!? な、なんだこの硬さ……! 回復職を狙え! 奥の女だ!」
弓兵たちが一斉にフィアへ狙いを定める。だが、フィアは慌てず特製ポーションを口に含み、絶妙なタイミングで小回復を挟んだ。
システム上のヘイト計算が狂い、弓兵たちの攻撃対象が明後日の方向へとブレる。
「タゲが絞れない!? MPも全然切れないぞ、どうなってんだ!?」
「退路が……! 天井が崩れて脱出できないぞ!?」
混乱に陥る三十人のプレイヤーたち。
彼らが「数の力」だと信じていたものは、緻密な計算と絶対の信頼で構築された俺たちの『オフライン軍隊』の前では、ただの「まとまった経験値」でしかなかった。
「さて……そろそろ仕上げといくか」
俺は普通のダガーを逆手に握り直し、足元をすくわれて呆然とする彼らの中へと足を踏み入れた。




