第23話:封鎖網と影の試掘
「地下水道の全出入口を完全封鎖しろ! 鼠一匹、アリ一匹逃がすな!」
廃都の地上。『天狼』の直属精鋭部隊が放つ圧倒的な威圧感が、エリア全体を包み込んでいた。最高峰の重厚な防具を身に纏った前衛たちが地下への階段を埋め尽くし、後衛には広域探知スキルを持つ魔法職がズラリと立ち並ぶ。
単なる力押しではない。彼らは過去の失敗作――中堅や新参連合の全滅ログを徹底的に分析し、出入口を封鎖して『無名機関』を兵糧攻めにしつつ、探知魔法で地下の構造を暴くという着実な包囲網を敷いてきたのだ。
「フン……逃げ場を失ってじわじわ干上がるがいい、ゴミめ」
天狼の幹部は冷笑を浮かべ、じっと地上から監視を続けていた。
――だが、その頃。地下水道の深部。
「レン、地上の出入口が全部天狼に固められたよ! 探知魔法の波動も定期的に打ち込まれてる!」
ハックがモニターを睨みながら報告する。しかし、レンの表情には焦りどころか、呆れすら混じっていた。
「上から探知魔法を打てば打つほど、地下の音響特性と魔力密度が地上に筒抜けになる。……こちらにとっては、天狼の正確な配置図をタダで手に入れているようなものだ」
「完全に私たちの『手のひらの上』ね。正面の出口なんて、最初から使う気もないのに」
アーチェが凛とした笑みを浮かべ、長弓の弦を軽く弾く。
「はいっ! 粘土鉱石から作ったポーションの試作も完了して、MPもHPも全自動補給ラインが完璧に回っています!」
フィアが弾んだ声で報告し、隣ではアイアンとクレイが静かにレンの指示を待つ。
「天狼は『封鎖して兵糧攻め』にしているつもりだろうが、俺たちの補給線は地下で完全に完結している。……ハック、クレイの粘土穿ちを使って、天狼の包囲網の『真下』に第三地下バイパスを開削しろ」
「了解! 敵の足元をスカスカにして、自分たちが立っている地面ごとハメ殺す準備、始めるよ!」
大手ギルドが自信満々に敷いた「完璧な包囲網」。
それが自らの墓場へと変貌していくカウントダウンが、静かに始まった。




