第22話:都市伝説(アーバン・レジェンド)と蠢く大物
「……おいおい、マジかよ。『新参連合』の百人以上が、地下水道に入って十分足らずで全滅? 一人も戻ってきてないっての?」
地上、巨大ギルド『天狼』の作戦本部。
重厚な大剣を壁に立てかけ、幹部の一人が掲示板のログを冷ややかな目で見つめていた。
「ああ。生き残りの証言によれば、罠やモンスターの攻撃じゃないそうだ。物理攻撃をいくら叩き込んでも壁すら壊せず、足元から現れた泥と粘土に身動きを奪われ、暗闇から一方的に射殺されたらしい」
「……ただのハメ技じゃないな。地形判定とヘイト管理、それに新手の環境操作魔法を完璧に組み合わせた『システム殺戮陣形』だ」
『天狼』の幹部たちの間に、重苦しい沈黙が落ちる。
かつては「寄生」「雑魚」と笑い飛ばし、ギルドから追い出したレン。彼が率いる『オフライン軍隊』は、いまや廃都の地下に根を張る恐ろしい都市伝説として、全プレイヤーにその名をとどろかせていた。
「マスター。放置しておきますか? あの地下水道は不毛の地ですし、放っておいても――」
「バカ言え。あいつらは中堅ギルドを解体し、百人の大軍をノーダメージで完封したんだぞ? このまま放置すれば、いずれ俺たちの利権や市場まで侵食される。……『天狼』の本隊を動かす。あの生意気なBot使いどもを、根本から叩き潰すぞ」
――その頃、地下水道の最奥基地。
「レン、地上のチャットログの傍受完了したよ! 『天狼』のマスター・レオンが、ついに重い腰を上げたみたい。直属の精鋭部隊を編成して、地下水道の全面封鎖に乗り出すって!」
ハックがモニターを指さしながら声を張り上げる。
「いよいよ大本命の登場ね。私の矢も、今度ばかりは一筋縄じゃ通らない相手かも」
アーチェが長弓を握り直し、凛とした眼光を暗闇に向ける。フィアも緊張した面持ちでバフポーションの在庫を確認し、アイアンとクレイが静かにレンの前に並んだ。
「想定通りだ。中堅や新参を効率よく『処理』し続けたことで、向こうから一番大きな獲物が歩み寄ってきた」
レンは手帳を閉じ、冷酷な笑みを浮かべる。
「圧倒的なレベルと最高峰の装備……力押しの頂点に立つ『天狼』。あいつらの過信と組織のデカさこそ、最大の弱点だ。……地下水道全体を巨大な殺戮回路に改造するぞ。大手ギルドの崩壊劇、その始まりだ」




