第18話:情報の撒き餌と重層陣形
「よし、クレイの魔法トリガーとハックの物理トラップの連動、異常なしだ」
地下水道の最奥。レンは自作魔法ゴーレム『クレイ』の背中にある魔導ダイヤルを調整し、満足げに頷いた。
「これで、敵がどれだけ力任せに壁や床を叩き割ろうとしても、クレイの『広域泥化(泥沼・粘着)』が瞬時に衝撃を吸収し、足元ごと拘束する。暴れれば暴れるほど粘着泥に絡め取られる、逃げ場のない監獄の完成だ」
「完璧だよレン! ……で、この完璧な罠に飛び込んでくる『お客様』の呼び込み方はどうするの?」
ハックがニヤリと笑いながら尋ねる。レンは手元の端末を操作し、地上の公開掲示板や各ギルドの噂話チャットへ『偽の情報コード』を流し込み始めた。
「簡単だ。『血塗られた鉄鎚』が撤退間際に地下水道の壁を破壊したことで、奥から未発見の『古代魔導窯(レア生産施設)』が露出した……という特大のデマを流す」
「うわぁ……! 今の地上は大手だけじゃなくて、新参や中小の初心者ギルドも功功りたがってるから、そんな噂を聞いたら一気に飛びついてくるよ!」
「ああ。『鋼鉄の誓い』や『血塗られた鉄鎚』といった中堅の失策を見て、自分たちならあの『無名機関』を数で押し潰して手柄を立てられると勘違いした新参どもがな」
レンの読み通り、地上の掲示板は即座に蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
『無名機関なんて少人数のハメ野郎だろ?』
『数の暴力で押し潰せば余裕! 一緒に地下水道を攻略する新参ギルド連合、大募集!』
画面に躍る浅はかな書き込みを見つめ、レンの口元に冷酷な笑みが浮かぶ。
「食いついたな。……集まれば集まるほど、狭小空間での自滅率は跳ね上がる。来いよ、新参連合。お前たちの愚かな数の暴力を、俺たちの新しい『魔法兵器』の初陣の糧にしてやる」




