第16話:狂乱の物理突破
「煙だの罠だの知るかよ! 全員、大槌を振り回せ! 目につく壁も敵もぶち壊して突き進めぇ!!」
『血塗られた鉄鎚』のリーダーが叫び、巨大な大槌を足元の床へ叩きつけた。
――ドガァァァン!
知略も陣形も無視した、完全な力押しの暴走。衝撃波で石畳が跳ね上がり、黒煙が吹き飛ぶ。
それに釣られたメンバーたちも正気を失い、狭い通路で無差別にスキルを乱打し始めた。水路の壁が砕け、天井から大量の土砂と水が崩れ落ちてくる。
「くそっ、システム的なハメ盤面を……ただの狂乱の物理破壊で力任せに破砕してくるとはな!」
計算し尽くされた罠も、エリアそのものを物理的に崩壊させられては機能しない。
崩れ渡る天井と、血眼で突撃してくる大集団。このままでは巻き込まれて全滅だ。
「レン! もうハメ技なんて通用しない! 正面突破で殴りかかってくるよ!」
「アイアン! 正面で受け止めろ! 全員、予備の『退避用逃走通路』へ後退する!」
ガキィィィィン!!
アイアンの大盾と敵リーダーの大槌が正面から激突し、凄まじい火花が散る。
100%パリィで相手の体勢を崩した瞬間に、アーチェが牽制の矢を放ち、フィアが間髪入れずに全員へ移動速度上昇のバフをかける。
「ハック、壁の爆破スイッチを入れろ! 逃走通路の入口を落石で塞ぐ!」
「了解! みんな、走れぇぇっ!」
俺たちは崩落する水路を駆け抜け、間一髪で隠し退避通路へと飛び込んだ。
直後、背後で巨大な岩石が崩れ落ち、追撃してくる敵の怒号と追走を完全に遮断する。
沈黙が戻った暗闇の中で、全員が荒い息を吐いた。
「ハァ……ハァ……。逃げ切れた、のか……?」
「ああ。だが……戦利品の回収どころか、仕掛けたトラップエリアごと物理的に潰された」
勝ちか負けかで言えば、拠点への侵入を防ぎ、無傷で離脱できた俺たちの『引き分け(辞退)』に近い。
システムの穴を突く戦術は完璧だった。しかし、なりふり構わず「マップ自体を力任せに破壊する」という野蛮なゴリ押しには、まだ課題が残る。
「……なるほどな。力押しのバカどもには、それ相応の『逃げ場のない死角』を用意してやる必要があるわけだ」
ダガーを握り直す俺の瞳に、冷ややかな闘志が宿る。
二度の足踏みを経て、俺たちの『無名機関』はさらなる進化を迫られていた。




