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温故知新

鈴はゆっくりと目を見開いた。


少し埃っぽく、所狭しと荷物が積み上げられている。

この場所は、見覚えがあった。

未来で壊れる前の、実家……林家の土蔵だ。


(でも、一体いつの土蔵なんだろう)

いつに飛ばされたのかわからない。


元々いた時代、つまり天明元年ではここまで散らかってはいなかった。

少なくとも天明元年よりも昔であるのは間違いないだろう。


「え、あれ?」

土蔵から出ようとするが、外から鍵がかかっていて開かない。

扉の奥からチャリチャリと音がする。


そうだった、土蔵とは本来鍵がかかっているものである。

いつも鍵がかかっていなかったから、忘れていた。

どうしよう、出られない。


「ええい、どうにでもなっちゃえ」

大声を出して戸を叩く。




「すみませーん、誰か開けてくださーい!助けてくださーい!」

もう恥も外聞も知ったことではない。


あの強烈な未来を見てきた後では、どんな恥もかき捨てられる気がした。




しばらくそうやって土蔵の戸を叩き、声を上げ続ける。

すると、扉の前に人の気配があり、ガチャリと扉の向こうの錠が開く音がした。


「何事か」

ぎぃ、という音を立てて土蔵の扉が開くと、自分の腰丈くらいの子供が立っていた。

髷をしておらず、腰には脇差を指しているが、武士の子供のようだった。


「…盗人か?」

「盗人が、どうして自分から土蔵に閉じ込められるのよ」

子供はひとしきり悩んだ後、鈴を見つめる。

見覚えがあるような、ないような……。


(ああもう! 私の記憶力、あてにならなすぎる……!)

こういう時は、正直に言ってしまうのが一番かもしれない。

鈴は息を吸い、力強く、はっきり答える。


「ここは、私の家です」

「…この土蔵が、か?」

「林家が、私の家です!」

子供は驚きの表情を浮かべる。

混乱しているのか、「いや、そうだとすると…」と腕を組んで考え始めてしまった。


「どうした、騒がしいぞ」

「それが、この娘が……林家は自分の家だと申しているものですから」

後ろからもう一人の少年と大人の男が現れる。


あれ、と息をのむ。その顔には見覚えがあった。

――父と見紛うほど、よく似た男だった。


「父上」

あっ、と思った時には遅かった。


父であるはずがない。

そんなことは分かっていたのに。

「父上」と呟かれた男へ、二人の子供が視線を向ける。


「「………」」

「いや、待て。覚えがない。そんなわけあるはずなかろう!」

「では、なぜ……この娘を土蔵に隔離していたのですか……?」

二人の子供は、父上と呼んでしまった男に胡乱げに目をやる。

男は大きくため息を吐き、パンパンと手を叩く。


「……そのような子は知らぬ。誰ぞ、つまみ出せ!」

鈴は実家から追い出された。



生まれて初めての勘当である。

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