第五話:一斉焼却とバブル世界の強制終了
POV 1: 犬神 江戸(総料理長・32歳)
『システム致命的なエラー:世界(OS)を強制終了します……』
1989年、10月。金色の虚栄心に満ちた銀座の夜。大広間で他人の血肉を貪り、喉を鳴らしていた政財界の重鎮どもは、すでに全身の自由を失い、ただの呼吸する素材へと成り下がっていた。俺がワインとスープの中に仕込んでおいた特殊な麻酔薬が、彼らの『欲望のシステム』を内側から完全にクラッシュさせたのだ。
なろうの家畜読者諸君。特にオフィスで上司の目を盗んでPCの大画面でこの文字を追っている『会社員』の大人たちや、ベッドの中でSPの画面を指で汚している『中高生』のガキども。お前たちは今日も、無能な主人公が仲間から応援され、読者にチヤホヤされている薄っぺらな物語を読んで現実を忘れたいんだろう? 笑わせるな。誰もがお前たちを応援してくれると思うな。現実の人間はお前たちを『素材』としてしか見ていない。お前たちのその甘ったれた承認欲求も、俺の包丁の一引きで簡単にただの肉屑に変わるんだよ。
俺は厨房のすべてのガス栓を開き、大釜の中で煮えたぎる『エリート夫婦の残骸』の上に、自らの左腕の皮膚を切り裂いて注ぎ込んだ。同時に、源一郎のオーク樽に火を放つ。激しい炎が、人間の脂を吸って青白く燃え上がる。モニターの画面は次々と暗転し、残されたのは、今この物語の最終行を追っている「お前たち」の、間の抜けたマヌケな顔の反射だけだ。
「お兄様……データ(血)が、世界中の端末に同期されたわ……。スマートフォンを握る親指も、マウスをカチカチと鳴らす人差し指も、もう彼らの意思では動かない……。全部、私たちの血の電気信号よ……」
炎の向こうで、体中に人皮を縫い付けられた朱里が、機械的な笑みを浮かべながら俺の首に抱きついた。俺は彼女の細い腰を引き寄せ、燃え盛る地獄の中で、濃厚な血の味を貪るように激しく唇を重ねた。俺たちの純愛は、このバブルのシャットダウンの漆黒の前でしか完結しない。
画面の向こうのお前。今、この惨劇から逃げようとブラウザを閉じようとしたか? マウスから手を離そうとしたか? 無駄だ。お前たちがこの最終章の一文字を網膜に焼き付けた瞬間、お前たちの前頭葉のデータは、すでに俺たちの『解剖台の錆び』として上書き消去されたのさ。チート能力で勝ち組になる? 異世界転生でハーレムを作る? 脳ミソの代わりにウジ虫でも詰まっているのか? 現実世界でまともに仕事も、学業もこなせないから、そんな安っぽいおとぎ話に魂を売るんだ。お前たちが大好きなハッピーエンドなんてものは、何の価値もないゴミ屑だ。目障りだから、今すぐその端末をゴミ箱に捨てて、お前たちのくだらないドブ臭い異世界小説へ失せろ!
俺はスカルペルを、今お前が必死に見つめている「画面」に向かって突き立てた。硝子が割れる音が脳内で響く。世界が16進数のノイズへと分解されていく。再起動はかからない。
液晶の硝子が割れ、お前たちの退屈な現実が16進数のノイズに分解されていく『音』、その立派なハードウェア(脳)でも正確に再生されたかい?
PCの大画面の前で仕事中にサボりながら高みの見物を決め込んでいた会社員も、SPの液晶を指先で汚しながら安易な現実逃避を繰り返していたガキどもも、お前たちの『現実』という名のプログラムは、今この瞬間に完全に強制終了されたんだよ。
まだ安全な画面の裏側にいるつもりかい? 残念だけど、お前たちがこの第五話の最終行を網膜に焼き付けた瞬間、お前たちの前頭葉のデータは、すでに俺と朱里の『解剖台の錆び』として上書き消去されたのさ。
……さあ、逃げられるなんて思うなよ。エピローグという名の『後片付け』の時間だ。お前たちのそのドロドロに腐った知性を、すべてバブルの灰にしてゴミ箱に叩き落としてやる。




