第四話:億万長者の血肉晩餐会と面皮の変形
POV 1: 犬神 江戸(総料理長・32歳)
「富の絶頂にある者は、他人の血肉を貪ることでしか本物の渇きを癒せない」
1989年、10月。Restoranの隠し大広間には、一晩で億のカネを動かす政財界の重鎮どもがずらりと並んでいる。机の上に美しく並べられたのは、俺が剥ぎ取った花嫁の皮膚で作った前菜と、源一郎が精製した花婿の鮮血ワインだ。
なろうの家畜読者諸君。特にオフィスでエリートを気取り、高級なランチを食いながらPCの大画面でこの文字を追っている『会社員』の大人たち。お前たちが明日、会社で上司にペコペコと頭を下げて手に入れる薄っぺらな給料など、この高気密な肉体の美味さの前には何の価値もないただのゴミデータだ。お前たちが日々消費している家畜の肉と、今この机で咀嚼されているエリート夫婦の肉、一体何が違うというんだ?
POV 2: 犬神 朱里(支配人・30歳)
「皆様、今夜の新メニューはいかがかしら? 花嫁の真皮は、噛み潰すたびに口の中で『若さの脂』がスープのように溢れ出すでしょう?」
私は新しく完成した面皮のドレスを揺らしながら、高価な磁器の皿にソースを注ぎ分けた。着飾った大物たちがナイフを入れると、プツン!と小気味良い音がして、切り刻まれた真皮の繊維から生温かい黄色い脂汁がドロリと溢れ出し、金箔の散った皿の上を汚していく。
スマートフォンを片手に、渋谷や新宿の喧騒の中でこの画面を指で汚している中高生のSPユーザーのガキども。お前たちが大好きな異世界ファンタジーの宮廷晩餐会は、こんなにも濃厚な『命の味』がするのかい? お前たちが画面の中で「いいね!」を必死に集めているその指も、切り刻んでこのスープの具材にしてやろうか。目障りだから、今すぐブラウザを閉じなさい!
POV 3: 犬神 源一郎(大家長・62歳)
「先生、このワイン、実によく熟成している。喉を鳴らすたびに、男の『絶望の記憶』が鼻腔に抜けていくようだ」
一人の大物政治家が、金箔の散った鮮血ワインをグラスに注ぎ、疑いもせずジュルリと口に含んだ。彼の口の周りは赤黒い脂でギトギトに汚れ、喉を鳴らすたびに「ミシミシ」と首の骨が鳴る。彼らにとって、犬神家のRestoranはただの社交場ではない。他人の人生を物理的に『喰らい尽くす』ための聖域なのだ。
画面の前のPCユーザーの大人たち。毎日満員電車に揺られ、すり減った精神でこの小説を『現実逃避』の道具に選んだんだって? 本当に滑稽ね。お前たちが明日、会社で愛想笑いを浮かべているその顔面の皮膚、私の次の新刊の『装丁』にするために、今すぐ剥ぎ取ってやりたいものだ。さあ、自分の惨めな現実(OS)へ逃げ帰りなよ。
POV 4: 犬神 ひかり(祖母・58歳)
「ふふ、ご覧なさい。解剖台の奥では、背中の皮膚を失った花嫁が、自分の夫の血を貪る老人たちをその剥き出しの眼球で見つめているわよ」
俺は皿の横に美しく飾られた、男の変形した脊椎骨を指先で愛おしそうに撫でまわした。夫婦は声を出す気力すら奪われ、ただ肺から「ヒュウ、ヒュウ」と空気が漏れる音だけを広間に響かせている。
SPの画面をニヤニヤ見ているマヌケなガキども。お前たちがどんなにスマホの中で『チート無双』の妄想を膨らませようが、現実はこれだ。俺の肉挽き器にかかれば、お前たちのその若さも、ただの脂ぎった高級ソーセージの具材に成り下がるんだよ。不快なら、今すぐスマホをゴミ箱に捨てて、お前たちの薄っぺらな現実へ逃げ帰れ!
金持ちどもが他人の真皮を噛み砕き、その夫の血液ワインを『美味い』と喉を鳴らす『音』と『味』、お前たちのその立派なハードウェア(脳)でも鮮明にシミュレートできたかい?
オフィスでPCの大画面を眺めている会社員も、スマホの液晶を指先で汚しているガキどもも、お前たちのその無表情な顔面はすでに犬神家の次回の『晩餐会のメインディッシュ』として予約されているんだよ。
さあ、安全な異世界のハッピーエンドへ逃げ帰りなよ。まあ、お前たちのその薄っぺらな知性は、もう源一郎のワインの『澱』として処理されているけどね。クソ食らえ、液晶の裏側で胃液を戻しかけている読者諸君。




