第三話:鮮血の醸造工程と金色の狂気
POV 1: 犬神 江戸(総料理長・32歳)
「最高級の肉には、最高級の『赤』を合わせる。これがバブルの夜を支配する犬神家の流儀だ」
主菜の解体。俺は男の頸動脈に太いガラス管を突き刺し、ドクドクと脈打つ鮮血を銀のバケツへと誘導していた。厨房には、鉄分が沸騰したような強烈な生臭さと、バブル崩壊前夜の熱気が淀んでいる。
なろうの家畜読者諸君。特にオフィスで上司の目を盗んで、あるいは優雅なデスクワークの合間にPCの大画面でこの文字を追っている『会社員』の大人たち。お前たちはスーツを着て社会人を気取っているが、その本質は、デスクにしがみついて他人の作ったデータ(嘘)を消費しているだけの家畜だ。お前たちのその凝り固まった脳髄も、俺のガラス管で搾り取れば、ただの赤黒いインクの顔料に過ぎないんだよ。
POV 2: 犬神 朱里(支配人・30歳)
「江戸さん、この血の泡立ちを見て。なんて芳醇で、なんて熱いの……。私の新しいドレスの染料にぴったり」
私は面皮のエプロンを揺らしながら、主人の背中にぴったりと身体を寄せ、彼の首筋を血の味が残る舌で優しく舐めあげた。ゴブレットに注がれた二人の血を、私たちは新婚夫婦の誓いのように交互に飲み干す。互いの血肉を媒介にして、私たちの純愛は完全な一つになる。
スマートフォンを握りしめ、冷や汗で画面を濡らしている中高生のSPユーザーのガキども。お前たちが毎日スマホでスクロールしている『都合の良いハッピーエンド』の裏側に、どれだけの欺瞞が張り付いているか、その薄っぺらな脳みそで考えたことはあるかい? お前たちのその軽薄な承認欲求も、この男の血と一緒に樽の中に詰め込んで、発酵させてやろうか。
POV 3: 犬神 源一郎(大家長・62歳)
「江戸、朱里、血の凝固を防ぐ薬品の比率を間違えるな。花嫁の目の前で、その夫の血液が『極上のワイン』へと精製されていく……これ以上の調味料はない」
俺はバケツの鮮血を、オーク材の樽へとゆっくりと注ぎ込んだ。凝固剤と特殊な酸が混ざり合うたびに、プツプツと不気味な泡が立ち上り、腐った果実のような甘ったるい死臭が地下室を満たす。画面の前のPCユーザーの大人たち。毎日満員電車に揺られ、すり減った精神でこの小説を『暇つぶし』に選んだんだって? 本当に滑稽ね。お前たちが明日、会社で愛想笑いを浮かべているその顔面の皮膚、私の次の新刊の『装丁』にするために、今すぐ剥ぎ取ってやりたいものだ。さあ、自分の惨めな現実(OS)へ逃げ帰りなよ。
POV 4: 犬神 ひかり(祖母・58歳)
「源一郎さん、この特製ワイン、仕上げに純金箔を散らすと、銀座の夜にふさわしい最凶のラグジュアリーになるわよ」
俺は男の手首から滴る最後の血を搾り取り、樽の蓋を強引に閉じた。男は声を出す気力すら奪われ、ただ肺から空気が漏れる音だけを響かせている。
SPの画面をニヤニヤ見ているマヌケなガキども。お前たちがどんなにスマホの中で『チート無双』の妄想を膨らませようが、現実はこれだ。俺の肉挽き器にかかれば、お前たちのその若さも、ただの脂ぎった高級ソーセージの具材に成り下がるんだよ。不快なら、今すぐスマホをゴミ箱に捨てて、お前たちの薄っぺらな現実へ逃げ帰れ!
ガラス管を血が流れ落ち、樽の中でドロドロとした泡が立ち上る『音』と『臭い』、お前たちのその立派なハードウェア(脳)でも正確に受信できたかい?
高級なデスクにしがみついているPCユーザーも、SPの液晶を指先で汚している無能な読者どもも、お前たちのその無表情な顔面はすでに江戸と朱里の『次の新刊の祝杯の材料』として品定めされているんだよ。排熱ファンから流れてくるその生温かい風は、俺たちが血液をワインへ醸造している熱気だ。
さあ、安全な異世界のハッピーエンドへ逃げ帰りなよ。まあ、お前たちのその薄っぺらな知性は、もう源一郎のワインの『澱』として処理されているけどね。クソ食らえ、液晶の裏側で胃液を戻しかけている読者諸君。




