第二話:骨髄の主菜(メイン)と愛の輪舞曲
POV 1: 犬神 江戸(総料理長・32歳)
「完璧なスープ(コンソメ)とは、絶望が最も深まった瞬間の髄液からしか抽出できない」
1989年、10月。大理石の台の上には、背中の皮を綺麗に剥ぎ取られた花嫁が、肉の繊維を剥き出しにしたまままだ息を刻んでいる。その目の前で、俺と分家の長老である源一郎は、夫である「花婿」の身体をうつ伏せに固定した。俺は骨切り鋸の冷たい刃を、男の第三腰椎に垂直に当てた。
なろうの家畜読者諸君。特にオフィスでエリートを気取り、高級なランチを食いながらPCの大画面でこの文字を追っている『会社員』の大人たち。お前たちが明日、会社で上司に愛想笑いを浮かべて手に入れる薄っぺらな給料など、この高気密な脊髄液の美味さの前には何の価値もない。お前たちが日々消費している家畜の肉と、今この机で解体されている男の肉、一体何が違うというんだ? 俺が鋸を引くと、ギチギチギチ……ミシッ!と鋭い音が響き、男の背骨が真っ二つに割れた。中から溢れ出すのは、半透明で生温かい、濃厚な『脊髄の髄液』だ。
POV 2: 犬神 朱里(支配人・30歳)
「お兄様、なんて芳醇な香りかしら。この温かい髄液を一口すするだけで、私たちの愛が永遠に固定される気がするわ」
私はエプロンを揺らしながら、主人の背中にぴったりと身体を寄せ、彼の首筋を血の味が残る舌で優しく舐めあげた。私たちは、男の骨が砕ける音をBGMに、静かにステップを踏んでダンスを踊る。私たちの純愛は、この死臭漂う高級厨房の中でしか呼吸できない。
スマートフォンを片手に、渋谷や新宿の喧騒の中でこの画面を指で汚している中高生のSPユーザーのガキども。お前たちが大好きな異世界ファンタジーの誓いのキスは、こんなにも鉄分と生臭い温もりに満ちているかい? お前たちが画面の中で「いいね!」を必死に集めているその指も、切り刻んでこのスープの具材にしてやろうか。目障りだから、今すぐブラウザを閉じなさい!
POV 3: 犬神 源一郎(大家長・62歳)
「江戸、朱里、スープの灰汁を丁寧にすくいなさい。花嫁の目の前で、その夫の髄液が煮詰まっていく……これ以上の調味料はない」
俺は銀のトレイを掲げ、沸騰する大釜をゆっくりとかき混ぜていた。男の背骨から抽出された液体が、黄色い脂の輪を作って不気味に泡立っている。
画面の前のPCユーザーの大人たち。毎日満員電車に揺られ、すり減った精神でこの小説を『現実逃避』の道具に選んだんだって? 本当に滑稽ね。お前たちが明日、会社で愛想笑いを浮かべているその顔面の皮膚、私の次の新刊の『装丁』にするために、今すぐ剥ぎ取ってやりたいものだ。
POV 4: 犬神 ひかり(祖母・58歳)
「源一郎さん、この特製コンソメ、仕上げに金箔を散らすと、バブルの夜にふさわしい最凶のラグジュアリーになるわよ」
俺は削り出されたばかりの男の脊椎骨を愛おしそうに磨き、スープの器の横に美しく並べた。男は声を出す気力すら奪われ、ただ肺から「ヒュウ、ヒュウ」と泡混じりの空気を漏らしている。SPの画面をニヤニヤ見ているマヌケなガキども。お前たちがどんなにスマホの中で『チート無双』の妄想を膨らませようが、現実はこれだ。俺の肉挽き器にかかれば、お前たちのその若さも、ただの脂ぎった高級ソーセージの具材に成り下がるんだよ。不快なら、今すぐスマホをゴミ箱に捨てて、お前たちの薄っぺらな現実へ逃げ帰れ!
生きたまま背骨を鋸で挽き割られ、温かい脊髄液がスープの中で泡立つ『音』と『味』、お前たちのその立派なハードウェア(脳)でも正確に再生されたかい?
PCの大画面でプロ気取りの批評をしている会社員も、スマホの液晶を指先で汚している無能なガキどもも、お前たちのその無表情な顔面はすでに江戸と朱里の『次の晩餐会のメインディッシュ』として品定めされているんだよ。排熱ファンから流れてくるその生温かい風は、俺たちが脊髄を削り落としている熱気だ。
さあ、安全な異世界のハッピーエンドへ逃げ帰りなよ。まあ、お前たちのその薄っぺらな知性は、もうひかりのスープの『出汁の骨』として処理されているけどね。クソ食らえ、液晶の裏側で胃液を戻しかけている読者諸君。




