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いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

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第99話 修学旅行【2日目】

「一華、朝だぞー。」


「うーん」


一華は耳元で響くシンの低音の声で脳が目覚め、猫のように腕を伸ばして大きく伸びをして目を開ける。シンの顔が目の前にあった。


「えっ? ちょっちょっ なんで???」


一華は布団を握りしめて飛び起きた。寝ぼけてるのか、シンと同室だったことを忘れていた。


「昨夜は寝落ちしたから覚えてないのか?」


「???」


一華は頭を傾げて、考える。


「そうだ、シンがベッド壊して同室になったんだった。それで、昨夜はみんなでトランプしていて……私、いつ寝たっけ?」


「座ったまま寝てたから、俺がベッドまで運んで寝かせた。」


「そ、そうなんだ。ありがとう。」


「……一華は無防備すぎる。少しは警戒した方が良い。」


「無防備?」


「あぁ、俺以外の男がいるところで寝るなんて、無防備すぎるだろ!」


「シンが居るのにあの状況で、誰が私に手を出すの?」


「手を出すって……俺がいたから出せなかっただけだろ。」


「大丈夫だって。寝落ちしたのもシンが居て安心したからだよ……それより早く支度しよ。朝食に遅れちゃう。」


一華は大慌てで身支度を整えるため、シャワー室に籠った。


「……」


安心したからという一華の言葉に何も言い返せないシンも身支度に取り掛かったが、気は晴れていなかった。



◇◆◇



朝食はバイキング形式だ。


理那たち四人が部屋まで呼びに来てくれて、一緒に食堂までやってきた。

朝食らしい料理の品が並んでいる。好き好きに来て、食べて部屋まで帰っていく。


一華とシンも好きなものをお皿に取り、テーブルに着いた。


「「「「「「いただきます」」」」」」


理那が口を開いた。


「一華、昨夜は寝落ちしてたけど、良く眠れた?」


「うん、シンに起こされるまでぐっすり。」


一華は隣のシンの顔を伺う。いつにも増して仏頂面だ。


「あの状況で寝落ちするなんて、一昨日は眠れなかったの? バスでも眠ってたし。」


「サンちゃんを初めて預けることになって心配で眠れなかったからなぁ、昨日は眠くて眠くて……いつ寝たのかも覚えてないんだよね。」


「一華、さすがに、あの状況で寝落ちはしない方が良いよ。眠くなったら言って。私達、帰るから。」


「今日は大丈夫と思う。シンにも心配させたから気を付ける……。」


「兄妹げんかでもした??? シン君の顔、ちょっと怖いんだけど……。」


「起きたと思ったら無防備だって怒られた……。」


「ははは、シン君が正解だよ。」


「……シン、まだ怒ってる?」


一華はシンの顔を覗き込みながら聞く。


「っん、……もう怒っては無いが……。」


シンは晴れない気持ちをどう晴らせばいいのかわからずにいた。


「一華、ゆっくり話せる時間はないから強行突破だ。『あーん』でもして機嫌取ってやれ。」


「えっ?」「はあっ!?」


二人の声が重なった。


「お前、昨日は、半分こするなって言ってたよな。」


「あぁ、昨日はな。だが、この状態で夜までいるつもりか?」


浩輔は、今のシンの不機嫌オーラを払拭させることが先決だと判断した結果、「半分こ」以上の「あーん」を提案してきた。


「そのつもりはないが……。」


シンは一華の顔を見ると


「一華、この後、少し話そう。」


「……わかった。」


一華にはシンが怒るほどのことだったのかが理解できないでいた。

朝食を食べ終えたシンは、浩輔に「集合時間に遅れた時は適当に誤魔化しておいてくれ。」と頼み、一華と自室に戻って行った。



◇◆◇



自室に戻ったシンは、一華を先に入らせると、思わず、抱き締めた。


「ちょ、ちょっと、シン、どうしたの?」


「一華は、無防備にも寝てしまったのは俺がいたからと言った。」


「うん」


「俺と同室で警戒しないのか?」


「えっ?」


一華はシンの顔を見上げる。


「俺が手を出すとは思わないのか?」


「だって、兄妹設定なんだから、出さないでしょ。それに、同じベッドで寝たこともあったし……。」


「俺にもう、ドキドキしないのか? パパやママとして感じる時もあるんだろ。」


「そ、それは、沙羅ちゃん達に兄妹設定を信じさせるための噓でしょ。……………それに、こんな状態だよ……ドキドキするよ……。」


「俺がいることに安心してくれるのはいいのだが……、俺に対して警戒してほしくはないが、安心と思わないで欲しいというか……」


「それは、兄としてではなく、一人の男として見て欲しいという事?」


「二人の時は婚約者として見て欲しい。」


「……て、手を出したいという事?」


「卒業するまでは手を出さない。それは約束する。」


「これは?」


「これは、兄妹でもするスキンシップだ。」


「ふふ、シンの事、兄と思った事無いよ。だから、こんなことされると、ドキドキする。……それじゃ、ダメなの? シンの前では寝落ちさせてもらえないの?」


「無防備にも寝落ちされると、手を出したくなる……。」


「出してもいいよって言いたいけど、妹設定できなくなる……。」


「それは、困るな。俺も兄設定でいられないな。」


「困ったね。みんなに兄妹じゃなくて婚約者だってばらす?」


「ばらさない。」


「それとも今すぐ魔界に連れて行く? いいよ。シンと離れて暮らすの想像できないし、卒業できないのは残念だけど。」


「連れて行きたいのは山々だがそれも出来ない。一華が望んでいない事は後味が悪い。」


「……シンが傍にいると守られているって感じられるから、安心して寝られるのは本当だよ。……台風の時も助かったし。」


「……」


「……シンの欲しい言葉じゃないかもしれないけど、今の私には、シンの言葉を信じる。と言うか信じてる。シン自身を信頼してる。信頼してるから無防備にもなれる。って言うのがピッタリなんだけど……微妙だけどそれじゃダメかな?」


「ダメじゃない。今はそれで充分だ。」


「じゃぁ、出発の準備しよ。」


「んー、離れたくない……。離したくない……。」


「また、浩輔君に揶揄われるよ! 今ならギリギリ集合時間に間に合うから!」


「あぁ、浩輔に何言われるかわからないな。」


二人は互いの体温を感じながら、なんとか離れる理由を口にして出発の準備に取り掛かった。





集合時間ギリギリ、一番最後にバスに乗り込むことが出来た。


「ふふんっ、間に合ったか。腹痛でトイレから出られない事にするつもりだったんだが……助かったな。」


既に通路を挟んで座っていた浩輔がシンを揶揄ってくる。


「あぁ、完全復活した! お前こそ命拾いしたな!」


シンも負けずに返す。


「お前たちは素直じゃないなー。」


二人のやり取りを見ていた直哉に突っ込まれる。


「浩輔とシン君って、仲が良いのか悪いのか……。」


理那も二人のじゃれ合いに思わず口にしていた。


「こいつら、同室だったんだぞ。」


「いいじゃない。兄妹なんだから。」


「お、俺だって……(****)と同室になりたいんだよ。」


「お前ら、また、俺たちが原因で夫婦げんかか!?」


シンに突っ込まれる浩輔と理那。


「ふ、夫婦げんかって……お、俺ら、まだ結婚してないぞ。」


浩輔は反論するが、理那は真っ赤になって俯いている。


「まだって……公開プロポーズか!」


とうとう、シンの公開処刑が始まってしまった……。

このまま、放置していればいつまでも続きそうなので一華はシンを窘める。


「シン、もう止めてあげて。理那が困ってるから……。」


「あぁ、そうだな。理那に免じてこのぐらいにしておくか。」


二人の勝負はシンの勝ちで幕が下りた。


(今日は朝から、濃いーよ!)


修学旅行2日目が始まったばかりにもかかわらず、既に一華の心はクタクタだ。



◇◆◇



今日のルートは一華でも楽しめた。有名な江戸時代のお城から始まり、昼食を兼ねた映画村では、短いが自由時間が設けられていて、初めて見る時代劇のセットに興奮気味だ。脳内では見て来た時代劇の光景が溢れてくる。


「早く早く」


自然と足取りが軽くなった一華は、しまいにはシンの手を取り、小走りになっている。

目的地は小さい頃から見ていた大好きな時代劇が撮影された場所だ。テレビで見ると広く感じるその場所も実際の目で見ると結構狭い。


「うわぁー!!!」「見てみて!」「小さーい!」


一華のテンションは最高潮だ! 興奮する声を聞きながら、一華について行くシン。一華に付き合わされて何回かDVDを見たことがある程度で、撮影のために作られたセットでは興奮しないが、隣で興奮する一華の顔を見ているだけで楽しめる。


気がついた時は理那達とは、はぐれていた。


「あれ? 理那たちは?」


一華はキョロキョロと周りを探している。


「あぁ、いつの間にかいなかったな。」


「そうなんだ。興味なかったかな?」


「一華のスピードに着いて来れなかっただけだろ。」


「え? そうなの? こんな楽しいところ普通に歩いて回れないよ。」


「遊園地より楽しそうだな。」


「そう? やっぱり初めて見る光景だからねぇ。それに、今まで見ていた時代劇の中に、現代人が紛れているなんて、それだけで違和感あって面白いし。」


「でも、もうそろそろ自由時間も終わりだ。集合場所に向かうぞ。」


「えーっ、もう終わりなの? あーぁ、帰りたくないなー。」


一華は仕方なく、シンと一緒にゆっくりと歩いて集合場所に向かうことにしたが、お土産を買ってないことに気付いた。


「シン、お土産買ってない。買いに行こう。」


「なら、急ぐぞ。」




一華は時間が迫ってくることで、お土産があふれるお店の中でパニック状態だ。


「シン、何買おう。」


「ここでしか買えないお菓子か、キーホルダー、グッズ系か?」


シンは選択肢を一華に告げる。


「うわっ、いっぱいあり過ぎて迷うよ。」


「一華、落ち着け。帰ってお菓子食べたいか?」


「ここにしかない味とかなら食べたい。」


お菓子の売り場に一華を連れて行くシン。


「一華、ここに食べたことのないお菓子はあるか?」


「うーんとね。あっこれ、食べたことない味。これにする。」


一華はショコラ味のお菓子の箱を手に取る。

シンは一華の手を取り、他のお土産を見て回る。


「キーホルダーは必要か? 他にもいろいろグッズもあるぞ。」


「キーホルダーはいいかな。グッズは……、シン、これは?」


一華はあるグッズを手に取り、シンに渡す。


「こ、これは、なんだ?」


一華はニッと笑って教える。


「ふ・ん・ど・し」


「江戸時代の人がパンツの代わりに身につけてたの。この国の伝統だよ! 今でも、裸祭りでは着けている人いるけど。」


「どうする? 試してみない?」


「一華も試すのか?」


「女の人は腰巻って言うのをつけてたから、男の人だけだよ。」


「試しに買って行こうよ。」


一華はお菓子の箱とふんどしを買うことにした。支払いはシンがした。

「急げー」とお土産袋を提げて一華とシンは集合場所まで走って行った。




最後の目的地、世界文化遺産であるお寺に移動した。中に入れないため、ただの散歩だ。

順路に従ってついて行くだけだ。


映画村で歩き通しでへとへとだった一華に目が入ったのは売店。


「シン、何か食べたい。」


シンの手を引いて売店前までやってきた。


「これ、食べたい。」


一華は金箔が輝く抹茶味のソフトクリームを指さしてきた。


シンは二つ同じものを買う。

抹茶が濃厚でほろ苦い。一華は抹茶が苦手だったが、ミルクのコクですっきりとした上品な甘さで食べられた。


「美味いな。」


ほろ苦いく甘ったるくないすっきりとした味がシンには好みだった。


食べ歩きしながら順路に沿って歩いて行く。1時間弱のコースが終了すると、次の宿泊先に向かった。


「***(シン、今日の部屋どうなってるの? 理由考えるの忘れてた。)***」


「***(そうだろ。一華が興奮している時間にもう対策済みだ。)***」


「***(何したの?)***」


「***(勘違いさせた。3人室2部屋を2人室3部屋に変更させた。)***」


「***(ベッドを壊してないなら、まぁいっかー。)***」


宿泊先にバスが到着した。案の定、生徒会長であるシンが呼ばれた。


「予約ミスで3人室2部屋を2人室3部屋でとられているらしい。今日もお前と一華でいいか?」


「承知しました。」


シンは鍵を受け取り、一華と部屋へ移動していった。

昨日とは違い、浩輔達とは離れた場所にある。

一華は予想していた部屋とは違っていたことに声が漏れた。


「すっごーい。広ーい。景色もいいなんて最高!」


目の前に広がる景色はこの国独特の庭園だ。四季の景色が楽しめるよう整えられた木々や池など、散策できる朱色の太鼓橋も掛けられている。とても修学旅行で泊まるような部屋ではないことは確かだ。


「お風呂もあるし。みんなも驚くね。」


「俺たちだけだ。」


「えっ?」


「他の生徒は普通の2~3人室で、昨日と大差ない。俺が部屋をこちらに変更させた。昨日はお風呂入れなかっただろ。」


「ここまでする必要あった?」


「毎日シャワーじゃ疲れも取れない。魔界のベッドでは眠れないんだ。入浴して疲労回復は必要だ。それに、魔界のプリンスとプリンセスが泊まるには妥当だろ。」


「……今はただの修学旅行生だよ。みんなには内緒なの?」


「別に知られても大丈夫だろ。差額は支払い済だ。」


「よかったー。私達だけ特別なのは話しづらくなる。」


「今日こそはここで、生徒会の話し合いするの?」


「そのつもりだが……、浩輔に卓球を誘われた。」


「いつの間に……勝負するんだ?」


「あぁ、朝のリベンジらしい。」


「シンは、卓球って体育でやったことあるの?」


「ないな。」


「えー? それなのに受けて立つの?」


「まぁ、一度見れば大丈夫だろ。」


一華はスマホで卓球の試合動画を見せる。


「こんなんだよ。大丈夫?」


「ボールがラケットに当たれば大丈夫だ。」


「浩輔君もほんと、負けず嫌いだよね。」



◇◆◇



夕食後、ゆっくりと檜の湯船につかることができた一華。

シンが入浴中、お土産を見る時間だけは残そうと明日の最大の楽しみだったテーマパークをスマホで確認しながら妄想している。


「ピコン♪」


シンが出て来た頃に一華とシンのスマホに浩輔からのメッセージ音が鳴った。


「シン、浩輔君から卓球の試合するから来いって。」


「早いな。今出たところだぞ。」


シンは(直哉と準備体操でもしておけ)とメッセージを返信した。


「また、煽って。浩輔君が強かったらどうするの?」


「問題ない。浩輔だろうが誰だろうが、俺の前に立つ人間のボールなんかどうとでもなる。」


「魔力使うんだろうけど、違和感なくやってね。」


「承知した。」



シンはゆっくりと髪を乾かした後、卓球場まで一華を連れ立っていく。

浩輔と直哉が試合をしている。


「待たせたな。」


「遅いぞ。」


浩輔がシンと勝負することを聞きつけた他の生徒までも集まっていた。

浩輔と直哉の勝敗がついた。結果は浩輔の勝ちだ。直哉が手を抜いたのか、実力なのかは不明だ。


「準備体操は終わったのか?」


「あぁ、お前は準備体操しなくて大丈夫なのか?」


「不要だ!」


「始めるか!」


一華と理那は採点係をすることにした。直哉と真由も近くで見守る。

試合が始まった。


じゃんけんをして勝った、シンのサーブからだ。


シンが打つサーブのスピードに浩輔が追いつかない。強力なサービスにスピードも追加していた。

魔力を使わずとも超人的な動体視力と反射神経により、浩輔のコートの角を正確に射抜いた。


「お、お前、卓球もできるのか!?」


「俺ができないと思って試合を申し込んだのか? 無謀な奴だな。」


シンがサーブのスピードを緩めた。一方的な勝負は妥当でないと考えを改めたからだ。

浩輔は緩くなったサーブに追いつき返すことが出来た。シンは返って来たボールを打ち込む。

案の定、浩輔は追いつけない。


サーブ権が浩輔に回ってきた。ここでサービスエースを狙うことにした浩輔。ネットぎりぎりのスピードのあるサーブを打った。が、シンにとっては緩いボールにしか見えない。思いっきり打ち込んだ。浩輔のラケットに当たったが、大きく跳ね上がり、シンのコートを追い越していった。


2球目のサーブを打ち込む浩輔。難なくスピードに追い付き、浩輔のコートに打ち込んだ。浩輔のラケットに当たっても届かない。



サーブ権が再びシンに戻ってきた。サーブ権があろうがなかろうが、決まるのはシンだけだ。浩輔が打ち込んだボールは難なく浩輔のコートに戻って行くが、浩輔はシンのコートに打ち込めない。


容赦ないスマッシュが炸裂し、結局、シンの圧勝で終わった。


「終わったな。俺の勝ちだ!」


「次、俺」「俺が先だ!」


周りで見ていた他の生徒がシンに挑もうとする。

浩輔は項垂れている。リベンジ失敗だ。

一華は浩輔が可哀想になってきた。


「***(シン、部屋に戻って、六人で明日のテーマパークのこと話さない?)***」


「***(俺はいいが、浩輔達は来るのか?)***」


「***(誘ってみる!)***」


「ねぇ、私たちの部屋で明日のテーマパークの事話さない?」


理那と真由が乗ってきた。


「いいね。勝負なんか止めて、明日、回るところ考えようよ。」


「うん、そうしよ。」


「直哉、行こう!」


「あぁ」


「浩輔も行こう!?」


「ん? あぁ」


一華は全員から承諾を貰うとシンの方に向いた。


「俺たちは部屋に戻るから、お前たちでやってろ。」


シンは周りの生徒にそう言うと、六人で自分たちの部屋に戻って行った。途中、自販機でジュースを買って。



◇◆◇



一華とシンの部屋に入った浩輔、直哉、理那、真由の四人は自分たちの部屋との違いに驚く。


「広ーい。お風呂もついてる。景色もすごいね。新婚旅行の部屋みたい。」


景色は一華達が見た時と違って、木々がライトアップされていた。確かにカップルとして訪れたいところではある。


「しっ、新婚旅行って……。」


一華は理那が言ったまさかの言葉に心臓がバクバクしだした。


「お前らばっかり……ずるいよな。」


浩輔が朝の事を思い出した。俺も同室になりたかったとバスで呟いていた。


「お前は、兄妹じゃないだろ。修学旅行では無理な話だ!」


シンが浩輔を宥める。


理那と真由は素直に部屋のことに驚いてくれたが、浩輔がまさかの反応するとは思っていなかった。よこしまな気持ちを目覚めさせてしまった。一華は浩輔達を誘ったことを後悔していた。



「そうだぞ浩輔。お前が同室になりたくても、理那が困るだろ。先生だけじゃなく、他の生徒にもバレるんだぞ。少しは理那の事、考えてやれよ。」


「そうだよ。何もなくても他の人が面白半分に想像して揶揄われるのは理那だよ。」


直哉と真由も浩輔を宥める。理那だけがどう返せばいいのか、わからずただ、立ち尽くしていた。


「……ごめん。いつもシンが一華と一緒だから……羨ましくて、つい、口にしてた。」


「……私、先に帰る……。」


理那は堪らず、自室に戻って行った。真由も理那に着いて戻って行く。


「浩輔、俺たちも部屋に戻ろう。明日もまだ旅行は続くんだ。」


「……ん。」


浩輔も直哉に連れられて自室に戻って行った。

二人きりになれない浩輔と理那は、自分達のように仲直りすることができない。

残された一華とシン。後味が悪い。誘わなければ良かった。二人の仲が心配だ。


「シン、どうしよ!?」


「こればっかりは、浩輔と理那の問題だからな。」


「あと一泊あるのに……明日、大丈夫かな……。」


「脳内に入って、浄化できればいいんだが……。」


「えっ? 浄化の魔力で何とかなるの?」


「たぶんな。だが、一華は覚醒してないんだろ?」


「どうやって浄化するのか、イメージ付かないから覚醒してないと思うんだけど……。」


「浩輔の脳内に、焦らなくても未来があるというイメージを送り込み、上書きする感じだ。」


「やってみる。」


一華は目を閉じて、浩輔を思い浮かべ、『今は焦らずとも、大学生になれば未来がある。二人で旅行に行けるようになってからでも遅くない。』と浩輔の脳内に送り込み、上書きしていくイメージをする。


一華は目を開けて「ふー」と深呼吸をする。


「シンの言う通りにしてみたけど、成功したかわからないよ。」


「確かめには行けないからな。明朝だな。」


「理那はどうしよ。理那の気持ちがわからないよ。理系を選択したのは『いずれは結婚を考えてるから』って言ってたけど、今どうなりたいかなんて、話したことないし。」


「そうか、理那は明朝の状態を確認してからでも大丈夫だろ。浩輔が浄化できていれば、理那は自然と元の仲に戻れるだろ。」


「そうだね。」


今日一日、朝から寝るまで、脳と心が疲れてしまった。


「一華、もう寝るか。明日も、魔力の出番が有るかもしれないからな。疲労回復だ。」


「そうだね。庭園の散策もしてみたかったけど、自分達だけ楽しむのはできないし……、今日こそは寝落ちせず、キチンと寝る。」


一華とシンは隣り合うベッドに潜り込み、2日目の夜を終えた。

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