第97話 どっこいどっこい
バスケットボール大会終了後のお昼休み、一日の休日を経て生徒会室に集まった執行役員六人。
お弁当をつつきながら、放課後のスケジュールを確認することにしたが……。
「やっぱり、一日休みとってて正解だね。」
真由がふぅと息を吐きながらお弁当の包みを開く。
「最後のエキシビジョンだけだったけど疲れたよね。」
「シン君が一番疲れたでしょ。」
「全然、あれなら準備体操程度だな。」
「お、お前、どんだけ体力あるんだよ。鬼並みか?」
シンの平然とした答えに、浩輔が箸を止めて呆れる。
「大会終了後も、何かすることってあるの?」
「予算とかもないし、特にないだろ。」
「今日はこの後のスケジュール確認に留めるか。」
放課後にスケジュール確認をするため、一旦解散した。
◇◆◇
放課後、再び生徒会室に集まった執行役員六人の元に、1年メンバー五人が足早に入ってきた。
「遅くなりました。」
着席するなり、真凛が身を乗り出して聞いてきた。
「会長、会長と一華先輩って付き合ってるんですか???」
「「はっ?」」
「な、何を言ってるんだ?」
浩輔、直哉、理那、真由の4人は吹き出した。
「えっ、だって! 付き合ってなきゃ、あんな風に顔を両手で包んだり、頭をポンポンしたりしないですよね。」
「もしかして、バスケの時の事?」
「そうです。それにクラブ紹介の時に言ったことも有るし……。」
みるみるうちに顔を真っ赤にするシンと一華。
見かねた理那が、クスクス笑いながら助け舟を出す。
「残念でした。シン君と一華は『兄妹』よ。」
「え? 兄妹なんですか???」
「双子じゃないですよね……血が繋がってないとか?」
「シン君が4月2日生まれで、一華が翌年の4月1日生まれの兄妹よ。」
「血も繋がっている……。」
シンは嘘はついてない。
「ブラコン、シスコンなんだよ、この二人は。」
「お、お前、それ言う必要あるか?」
浩輔の揶揄いに、シンが反論する。
「仕方ないだろ、あの状況見て、それ以外に何がある?」
「確かに、一華先輩を見つめる会長の目はハートマークになってましたもん。」
真凛は恐いもの知らずか!?
「お前まで、ハートマークって……。」
せっかく一華が、体育館から連れ出して揶揄われただけだと慰めたのに……。
「でも、兄妹なら逆に安心しました! 兄妹なら諦める必要ないですもんね。会長を狙う女子が、これから押し寄せますよ!」
真凛は一華が妹ということに安堵して、シンに彼女が出来ることは気にしない。お構いなしだ。
シンは堪らず、一華の顔を見つめた後、口を開いた。
「俺には……既に婚約者がいる。だから、誰が来ようと無理だ。」
「はああぁぁっ!? 一華だけでなく、お前までも婚約者がいるのか?」
浩輔達も驚く。
「あぁ。」
「えーっ、お二人とも、婚約者がいるんですか?」
「卒業後はお互い結婚することが決まっている。」
「そんなぁ……。一華先輩に婚約者って……。」
真凛がガックリと肩を落とす。
「真凛ちゃんは一華先輩の事、『推し』なんだよね。」
海斗が真凛の想いを確認する。
「そうよ。『推し』に婚約者がいることがショックなの!」
真凛は少し切れ気味に答える。
「じゃぁ、『兄妹』関係っての知っているのって、クラスメイトぐらいですか?」
「いや、体育祭の時は『妹』として借りもの競争に出たから、知らないのは1年だけじゃないか?」
「お二人に婚約者が居ることを知らせないと、無駄な争いが起こるんじゃないですか?」
「争い?」
「そうですよ。『兄妹』で付き合ってないって知ったら、女子同士でもめますよ。」
「別に言うような事か? 一華が『妹』という事だけ知れば問題ないと思うが???」
「確かに、今まで交際を申し込んでくる女子はいなかったよね。」
「あぁ、何かした時の悲鳴だけだな。」
そんな中、沙羅だけは一人、タブレットを手に「通常運転」だった。
「会長、『兄妹』『二人に婚約者』のことも含めて漫画に使っていいですか?」
「まぁ、設定なら別に構わないな? 一華?」
「うん、別にいいけど。」
沙羅はエンディングについても確認してきた。
「あと、卒業後にやっぱり二人は『婚約者同士』だったとして結ばれるストーリーにしていいですか?」
「「えっ?」」
一華とシンは言い当てられて真っ青になる。
「……ち、血が繋がってる『兄妹』なんだから、結婚できないでしょ。」
「『婚約者同士』って言うのを隠すために『兄妹』設定にしていることにします。それに会長が発した言葉を考えると、こっちの方がしっくりきます。」
「『兄妹』で護衛する方がしっくりくるだろ。」
「『兄妹』で100%しっくりくるとすると、『婚約者同士』では200%しっくりきます。」
シンは左手で顔を覆ってしまった。
「一華先輩に婚約者……。」
真凛はショック過ぎてぶつぶつ……最後に呟いた。
「どうせなら、会長が婚約者だったら良かったのに……」
「「俺(私)もそう思う。」」
「お似合いだよね! 私たちも最初、疑問に思ってたぐらいだから!」
浩輔と理那の言葉を聞いて直哉と真由がうんうんと頷いた。
「お前らまで……」
一華が堪らず話し出す。
「真凛ちゃん、沙羅ちゃん、シンを困らせないで。私がシンに対する接し方が近すぎるのがダメなんだよね……きっと。」
「私達、離れて暮らしてたんだけど……、ママがパパの所に引っ越すことが決まって、私のわがままで高校卒業するまで待ってもらうことにしたら、一人暮らしを心配したパパがシンを帰国させてくれて……」
一華はシンに対する想いに嘘を混ぜて続ける。
「小さい頃に遊んだ記憶もないんだけど……最初会った時、すんなり受け入れることができたのはやっぱり兄妹だからだと思うのよね……。一緒に暮らしだしてからのシンは、兄としてだけでなくパパのような、時にはママのような存在で……とても頼れる兄以上に想える存在なのよ。もう今では、一家に一人シンをって感じ?」
「あ、わかります! 会長がいれば怖いものなしですもんね。」
「でも一華先輩、会長がお兄さんなら、婚約者さんは会長以上の方じゃなければ結婚する気にならないんじゃないですか?」
一華はシンの顔を見つめながら
「どっこいどっこいかな。」
「どんだけイケメンでかっこいいんですか? 接し方が近すぎると、逆に婚約者さんが会長に嫉妬とかするんじゃないですか?」
「うーん、最後の兄妹生活だからと許してくれる人だから大丈夫!」
「会長の婚約者さんはどんな人なんですか?」
シンは一華の顔を見つめて
「一華とどっこいどっこいだな。」
「もう(笑)、言葉のチョイスも一緒って、どんだけ仲がいいんですか!」
みんなが一斉に笑い出した。
「もう、この話は終わりだ!! 今後のスケジュールを確認するぞ。」
シンはいつもの表情に戻し、話を打ち切った。
一華はうまく誤魔化すことができたと安堵し、手元のスケジュールを読み上げた。
「ゴールデンウィークの後は中間テスト、修学旅行と続くよ。」
「それまでは昼休みの報告だけに絞り込む。1年は特に問題なければ、各自、中間テストに備えろ。」
「「「「「はい。」」」」」
1年メンバーは、ようやく真面目な顔に戻って返事をした。
「6月から体育祭と文化祭の準備を本格化させる……。体育祭は、球技大会の二の舞にならないよう事前にアンケートを取るぞ!」
「……シン君、また3年生と勝負する気?」
「向こうがその気なら、受けて立つ。」
2学期の体育祭でも勝負を挑まれるとは思っていなかった生徒会メンバーは、スムーズに進行できるよう気を引き締めて散会した。




