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いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

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第96話 エキシビジョンマッチ

全面コートに切り替えて、Aグループ「3-D」とBグループ「2-A」の優勝決定戦が始まった。


「浩輔君と理那のクラスだよ。」


一華が困ったように呟く。


「優勝したら、俺たちと当たる。……浩輔、気まずくないのか?」


優勝した時の浩輔と理那を心配するシン。


「めちゃくちゃ嫌だよ! クラスメイトとガチでやり合うなんて、その後の教室の空気を想像しただけで胃が痛いぜ。負けてくんねーかなぁ……」


「私も同感。生徒会チームが勝つのは既定路線なんだから、負けろ負けろって念を送っちゃおう。」


理那は少しおどけて手振りで念を送ろうとする。


「理那、それ応援じゃなくて呪いだよ。」


真由が呆れ顔で突っ込む。


「3年も見てみろよ、あの気迫。負けろと応援しなくても3年が勝ちそうじゃないか?」と直哉。


「ねぇ、優勝チームって、休憩する時間ないよね。エキシビジョンマッチの前に休憩入れるの?」


一華が鬼気迫るプレーで優勝決定戦と言う名のエキシビジョンマッチを掛けた予選まで勝ち上がってきたメンバーを心配する。


「俺たち全然動いてないから、練習時間設けるか。その間に休憩させれば大丈夫だろ。」


「私たちもミニゲームなの?」


「試合数が前年より2試合多いからな。」


「今のうちにメンバー決めるぞ。」と浩輔。


「私以外の五人でいいんじゃない? 疲れたら1年と交代すれば……。」


一華は参加しないスタンスだ。


「一華は参加しないのか?」


「去年だって、おとりだったし……今年は通じないでしょ。」


メンバー構成が決定しないまま、優勝決定戦が終わった。


「3-D」が気迫あふれるプレーで優勝をもぎ取った。


浩輔と理那は「助かったー」と胸を撫で下ろした。


シンがマイクを取り、ステージ上からエキシビジョンマッチ開催について説明する。


「10分間の休憩の後、エキシビジョンマッチを開催する。特別ルールは廃止、第1ルールのみ順守すること。」



◇◆◇



10分間の休憩。生徒会チームのメンバーは練習のため、コート内に集まった。

シンがコートに出てきたことに女子生徒からは歓声が上がり、シンの姿を追っている。


ゴールリングへ向けてシュート練習する浩輔と直哉。パスの練習をする理那と真由。

1年もパスやシュートの練習をするが、バスケ部や元バスケ部は不在だ。みんな体育でやってきた程度のように見える。


「一華、出場するかは別として、少し体を動かしておくぞ。」


「わかった。」


一華とシンはパスの練習をした後、一華がシュートの練習をしていく。



1年、3年の女子生徒からは一華とシンの距離の近さに「二人の関係性」が気になっていた。

全校生徒の前で宣告はしたものの「兄妹」関係は一切口にしていないからだ。



練習が終わり、生徒会チーム全員が集まって作戦会議を始める。


「ジャンプボールの時、浩輔と直哉が両脇を固めろ。俺がボールをどちらかに落としたら、迷わず、ゴールリング目掛けて、天井高く投げろ。」


「「ラジャー」」


「疲れたら自分たちで交代しろよ。」


「「うん」」「「おう」」


優勝チーム「3-D」がコート内に戻ってきた。


審判等はバスケ部が引き受けてくれた。


いよいよエキシビジョンマッチの開始だ。中央のサークル内にジャンパー二人が向かい、浩輔と直哉が指示された通り、両脇を固める。理那と真由は後ろと前にわかれた。


「ピーッ」


ボールが高く投げられたと思ったら、シンが一番高い所でタップして浩輔側に落とした。受け取った浩輔はそのまま、全力でゴールリング目掛けて天井高く投げ上げた。


シンは着地と同時に、ボールの位置を確認しながら、ゴールリング目指して走り抜けた。

3年からしたら、まさか直接ゴールに向けて投げられるとは思っていなかった。追いかけるも間に合わない。


浩輔の投げたボールは放物線を描き、ゴール手前に落下してきていた。

シンは落下してくるボールを空中で捕らえ、そのままゴールリング目掛けて叩き込んだ。


「うおおおっ!!」「アリウープかよ!」どよめきが体育館を揺らす。


「きゃー」歓声が響き渡る。


3年がすかさず、スローインをしようとするが、シンが中央に位置し、その両隣を理那と真由、更に両隣を浩輔と直哉が補うよう固めている。


近くは隙が無いように思い、ゴールリング目掛けて思いっきり投げる。シンの後ろ側にいたチームメイトはボールを確認して後ろへ向けて走って行った。


シンも一早く反応した。相手が捕らえる前にジャンプして、ボールをカットしてドリブルしながら戻る。シュート体制に入るとあっけなくゴールリングに嵌って行った。


「きゃー」歓声が響き渡る。


また、3年のスローインから始まる。今度はチームメイトが移動して目の前に来たところにパスする。

パスしながらゴールリングを目指す作戦に出た。


浩輔達はディフェンスを頑張るが、相手はバスケ部だ、全然追いつけない。パスで回されたら、なかなかボールを奪うことが出来ない。

しかし、シンは一瞬の隙を難なくついて、ボールを奪取するとシュートする。


3ポイントラインの遥か外側からでも投げれば、ゴールリングに引っ張られるように吸い込まれていく。


「きゃー、会長、かっこいい!」


悲鳴に近い歓声が響き渡る中、一華はシンが魔力を使わず、身体能力だけで対戦していることに、ほっと胸を撫で下ろしていた。


また、3年のスローインから始まるが、どこにパスしても、全てのボールがシンに回ってくる。


理那と真由が疲れてきて、真凛、沙羅と交代した。

交代してディフェンスしてもボールは奪えない、走りまわっているだけだ。やっぱりバスケ部には敵わない。


浩輔と直哉もバスケ部には敵わないが、女子二人のディフェンスに回った。ボールは男子三人でパスし合っている。

ボールの進路が限られたことで、シンがすかさずカットしに行く。捕らえると、すぐさまシュートする。


ワンサイドゲームだ。何やっても、どうやっても3年がシュート体制に入ることなく前半が終了した。

5分間の休憩に入る。


浩輔、直哉、真凛、沙羅は肩で息をしている。


「後半は宗一郎と湊、後は一華と理那でいけるか?」


一華は出場するつもりがなかった……。


「私も出るの? 足手まといだよ。」


「去年のおとり作戦はできないが、コート中央に居てもディフェンスもつかないだろ。逆に穴になるはずだ。俺がパス回したら、思いっきりゴール目掛けて天井高く投げろ。」


「えっ? 浩輔君がやったみたいに?」


「あぁ 俺がどこにいても、とにかくゴール目掛けて天井高く投げろ。」


「……わかった、やってみる!」


「3年のスローインから始まる。女子に宗一郎と湊がディフェンスにつけ。男子三人でパス回しさせて、そのうち、女子にもパスが回ってきたらカットして俺までパスを回せ。」


「「はい」」


「後半も交代は自分の判断でしろ。」


「「はい」」


休憩時間が終わり、開始が告げられる。


「いくぞ!」


「「おー」」


シンを中央に、両隣は一華と理那、その両隣を宗一郎と湊が固めた。


3年はまた、一か八か、ゴールリング目掛けて思いっきり投げ込んだ。

バスケ部であっても、足の速さ・ジャンプ力、勝てる要素はない。どこにボールがあっても、シンの手に捕らえられる。


ドリブルしながらの移動は面倒で、ボールを手にした位置からシュートする……、ゴールリングに嵌って行く。


一華はあっちに走り、こっちに走りと付いていけなくなって一人中央にいる。案の定、ディフェンス外しにかかった。

誰も周りにいない。シンは気づくと一華にパスする。一華はシンに指示された通り、ボールを片手にゴールリング目指して天井高く投げた。浩輔のように力がない。ゴールには遠く離れた、3ポイントライン外に落下しそうだ。


「チャンスだ!」と3年が群がっていく。


シンは投げたボールを確認しながら、縫うように避けてボールの落下位置に移動してジャンプした。

3年もジャンプするが、シンの方が頭一つ分は高く飛んで、ボールを掴んだ。そのままゴール目掛けてシュートする。難なくゴールした。


「きゃー」歓声が響く。


一華がシンの方まで近寄ってきていた。シンは一華の方に駆け寄るとわずかに微笑み、「よくやった」と頭を軽くポンと叩いた。


「あ、また笑った……!」


シンのわずかに微笑んだ笑顔を見た生徒の声を聞いても聞き流した一華は笑い返した後、真由と交代した。


「真由、あとお願い。」


「うん、任して」


後半も前半同様、特に変化はない。ワンサイドゲームだ。パスを回そうが、遠くに投げても、いずれはシンにカットされボールを奪われる。シンの手に回れば、そこからは3年は奪うことが出来ない。


大人と子供の試合だ。

真由以外は疲れてきた、肩で息をしている。宗一郎、海斗、理那の3人は、浩輔、海斗、沙羅と交代した。


ディフェンスとしてコート上に居るだけでも、3年はちょこまかと動き回り、体力が消耗していく。


シンだけが通常運転で、自分でパスをカットしシュートする、の繰り返しだ。

3年は一度もシュートすることなく後半戦も終わった。生徒会チームの圧勝だ。


「わぁー」「きゃー」「うぉー」体育館中響き渡る歓声。生徒会チームというよりシンに向けたものだろう。


「終わったー」


コートには、精根尽き果てた3年D組のメンバーが倒れ込んでいる。

一度もシュート出来ず、ただただ走るだけだったゲームは早く終わって欲しかったのかもしれない。


「ハァ……ハァ……。今回は負けたが、体育祭は覚えてろよ……絶対リベンジしてやる。」


リーダー格の男子がシンを睨みつける。


「体育祭も勝負するんですか?」


シンは冷静に返す。


「あぁ、お前のせいで去年の体育祭はビリだったんだ。今度こそ負かせてやる。」


「やめた方が良いです。結果は見えています。」


「お、お前……っ、先輩を敬って少しは立てろ!」


「先輩は敬いますが俺は嘘はつけません。一華と約束したんです。」


やりとりを見ていた生徒から笑いが漏れた。



シンはマイクを握り、淡々と締めくくる。


「以上でバスケットボール大会は終了する。優勝者は3年D組。おめでとう!」


全校生徒からは3年D組を称える歓声が響いた。


疲れ果てた生徒会メンバーは協力して片付けを始める。審判を手伝ってくれたバスケ部たちも手伝ってくれたことで、早く終わらせることが出来た。


「1年はホームルーム終了後は帰っていいぞ。」


シンは1年に指示する。




ホームルーム出席後、生徒会室に戻った六人は一斉に椅子に沈み込んだ。


「終わった……もう一歩も動けねぇ……」


「次は2学期の体育祭と文化祭が控えている。少し休んでから始めるか。」


「そうだな。今日は疲れた。」


「みんな、明日はゆっくり休もう。」


勝利の余韻に浸ることよりも、無事に大会を完遂した安堵感で満たされた六人は帰路につくことにした。

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