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いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

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第91話 生徒会始動

放課後の生徒会室。今日から新メンバーを含む生徒会が本格始動する。

執行役員六人と、昨日採用されたばかりの新入生四人。少し緊張感の漂う中、今年度のスケジュール確認が始まろうとしたその時、静寂を破るようにドアがノックされた。


ドア近くに座った真凛が、不思議そうな顔で席を立ちドアを開けに行った。


「はい……って、なんであんたがここに来るのよ!」


真凛の荒げた声に、室内がざわつく。心配した真由が駆け寄ると、廊下には困り果てたような顔の男子生徒が立っていた。


「どうしたの?」


「……あの、入会希望です。」


「えっ? あんた生徒会に入会するの?」


「入会希望だって。」


真由はシンに向かって報告する。


「なら、入って貰え、今から面接する。」


シンが真由に指示を出す。


「今から面接するから、中入って座って。」


真凛は席を男子生徒に譲った。緊張しながら入ってきた男子生徒は顔が強張っている。

真由が優しい口調で話しかける。


「クラスと名前を言ってね。」


「1年E組、海斗です。」


「入会希望の動機は何だ?」


今日は直接、シンが質問した。


「……昨日、真凛ちゃんが生徒会に入会したって聞いたので、僕も入会することにしました。」


「生徒会に興味はないのか?」


「興味が無いというわけではないのですが……真凛ちゃんが心配で……。」


「お前たちは付き合っているのか?」


「ま、まさか! 付き合っていません。ただの幼馴染です。」


真凛が真っ赤に顔を染めて、シンに向けて必死で否定する。


「でも、僕たち小中学校の通学はいつも一緒だったし、昨年の文化祭の時も一緒に見に来ました。昨日の朝だって一緒に通学したのに、帰りは初めて一人だったんです。高校3年間も一緒に通学するつもりでいたのに……。」


「べ、別に、もう一緒に通学しなくてもいいよ。」


「お前たちは家が近いのか?」


「隣同士です。生まれた日が一緒で家族同士仲良くて、双子のようにいつも一緒でした。なので、心配なんです。クラスは離れてしまったうえに、帰宅時は一人で帰ることになるので。」


「もう一度聞く。生徒会は手伝えるのか?」


「真凛ちゃんと一緒に頑張ります。」


「***(一華、本音か?)***」


「***(そうみたい。真凛ちゃんのことを心配してる!)***」


「なら、採用! 真凛を守ってやれ!」


「ありがとうございます。」


海斗は真凛の方に向いて「これからも一緒だね。」と顔を綻ばせた。


真凛は気恥ずかしさで更に顔を真っ赤に染めた。


「***(海斗君、真凛ちゃんにぞっこんだね!)***」


「***(好きな子がいるんだ、一華に手は出さないな!)***」


「***(でも、真凛ちゃんは私に対する一目ぼれが動機でしょ。逆に嫉妬対象にならないかな?……)***」


「確認だが……真凛は一華に一目ぼれしたのが入会動機だが、海斗は一華に嫉妬しないのか?」


シンはド直球な質問をする。


「異性ではないですし、恋愛感情ではなく、あくまで『推し』としてのリスペクトですから、大丈夫です。」


「そうか。……理解はできんが、問題ないならいい。」


シンは安堵した。まさか同性に一目ぼれする感覚はもちろんの事、推しを嫉妬対象とする感覚を、魔界のシンには理解できなかったからだ。


「沙羅、通学路は誰かと一緒か?」


シンは沙羅の通学路を心配する。


「朝は友達と一緒だけど、帰りは一人です。」


「家はどこだ? この中で一緒の通学路は誰かいるか?」


「俺が送ります。」


湊が手を挙げた。正式に採用してもらうために執行役員に下心が無いというところを見せたい。


「湊、お前の家は沙羅の家と近いのか?」


「……わかりません。」


「わからないならダメだろ!」


「沙羅の家はどこだ?」


「私の家は学校の北側でここから近いです。」


「湊の家は近いのか?」


「北側にある住宅地なら、少し遠回りになる程度です。自転車なので大丈夫です。責任を持って送り届けます!」


湊が必死に食い下がる。


「いいだろう! 湊、沙羅を責任もって送り届けろよ。」


「はい。」


「新メンバーも増えたから改めて自己紹介してくれ! 沙羅から時計回りに。」


「はい」新入生が緊張した。


「1年C組、沙羅です。最高のネタ提供よろしくお願いします。」


「1年A組、真凛です。一華先輩推しは任せてください。」


「1年E組、海斗です。真凛ちゃんと頑張ります。」


「1年D組、湊です。憧れの先輩達を目標に頑張ります。」


「1年B組、宗一郎です。次期生徒会長を目標に生徒会を学ばせていただきます。」


一華は五者五様の、個性が強すぎる後輩たちが集まったもんだと感心する。


「よし、挨拶は終わりだ。……仕事にかかるぞ。まずは年間スケジュール確認だ。」


年間スケジュールを新メンバーにも情報共有する。


「直近の全体行事といえば、7月の球技大会……、近年の猛暑を考えると屋外のスポーツをどうするかが課題だが……意見はあるか?」


「去年はフットサルの連中がかなり熱中症でやられたらしいぞ。」


浩輔が去年のことを思い出して報告する。


「だろうな。今年はどうするかだな。フットサルを止めればサッカー部からクレームが上がるだろうな。」


「場所を体育館に絞って、ドッヂボールの場所をフットサルに譲るか?」


直哉が提案する。


「バスケとフットサルの2択か……。」


「あのー」


新メンバーの宗一郎がおずおずと手を挙げる。


「意見か? なんだ?」


「球技大会を前倒しすることはできないでしょうか? 4月中ならまだ屋外でも安全なんじゃないかと……。」


「前倒しか!? 月末辺りなら今から準備しても間に合うな! 後は1日授業を潰すことになるから、顧問に相談だな。」


「相談しても授業日程が調整できない場合もあろうが、毎年の課題として残すことになるから、今解決しておく方が良いな。」


「熱中症対策を前面に出せば、顧問も調整してくれないかな……。」


理那がぽろっと口にした。


今日から本格的に生徒会始動することは顧問には事前に伝えてある。もうすぐ来るだろう。

シンはその前に生徒会としての意見をまとめる。


「顧問来る前にまとめるぞ。例年の7月開催を4月開催へ調整してもらう。理由は熱中症対策。体育館のみの球技大会では生徒全員の参加が難しい。バスケとドッヂボールだけだと、サッカー部からクレームが来る可能性あり。フットサルを体育館で行うには半面では狭すぎる。これぐらいか!?」


「あと、夏休み前より早いうちにクラスの団結を高める行事として球技大会を位置付けては?」


一華が提案する。


「そうだな。俺たちの時、クラス全員で参加した行事は、1学期は7月の球技大会だけだったよな。」


「一華、それいいアイデア! クラスの団結を高めるには最高のタイミングだよ!」


理那が賛同する。


「他に意見はあるか?……ないな。」


ようやく、生徒会顧問の市川先生が来室した。独特の威圧感を持つ先生の登場だ。


「なんか、困ったことあるか?」


「市川先生、たった今、意見がまとまりました。」


シンは立ち上がり顧問の方を向いて冷静に説明していく。


「なんだ?」


「7月開催の球技大会を4月開催に調整できないかという意見がありました。理由としては猛暑の時期に屋外で行ったフットサルで熱中症になった人数が多いということです。体育館のみで行う球技大会に絞るとフットサルでは狭く、バスケとドッジボールの2択にすれば参加人数が減り、サッカー部からもクレームが出るでしょう。それに、クラス全員参加の行事が入学式以降、球技大会までありません。入学早々に球技大会を行うことでクラスの団結を高める位置づけにしたいと思います。」


市川先生は目を閉じて腕を組みながら、シンからの意見を静かに聞いていた。


「ということは、授業の日程調整が必要という事だな!」


「はい。そういうことになります。」


「わかった。生徒の健康は守らなければならない、クラスの団結も切っ掛けが必要だろう。明日、職員会議にかける。それまで保留でいいか?」


「はい、お願いします。」


「明日、職員会議をかけるための資料を放課後までに用意できるか!?」


「承知しました。今の内容をまとめた資料をお持ちします。」


「他にあるか?」


「はい、今日から参加する新メンバーの1年、沙羅、真凛、海斗、湊、宗一郎です。」


シンが新メンバーを顧問に紹介した。


「あぁ、新しいやり方だな。来年度に向けて楽しみだ。今から生徒会を学んでおいてくれ。俺は職員室にいるから、用があれば声を掛けてくれ。遅くなるなよ。」


市川先生は職員室に帰って行った。


1年生五人は「ふーーっ」と一斉に溜息を洩らした。相当緊張していたようだ。


「理那と真由は、今の内容をまとめて俺まで送ってくれ。」


シンは書記の二人に指示を出す。


「「ラジャー」」


「シン先輩、かっこよすぎです! あの市川先生を前にして緊張しないんですか?」


沙羅が興奮気味にシンに問いかけて来た。


「ん? 緊張しないが???」


「市川先生ってちょっと強面というか……厳しそうじゃないですか……それに、たった今意見をまとめた上で、その意見を詰まることなくすらすらと喋ってるし。先生も疑問を持つことなくすべきことを理解してるし。これ、ネタにしていいですか?」


「まぁ、いいだろう……これぐらい誰でも言えるだろ!」


素っ気なく返すシンに対して、直哉が後を繋いだ。


「関係性が築けていれば、すらすら言えるだろうが、考えながらだと詰まることも有る。先生としては必要最低限の言葉で済んだぞ。しかもものの数分しかいなかったし。」


「職員会議終了までは一旦保留だが、あの口ぶりでは確定するな。開催日は4月28日にするぞ。」


シンはカレンダーアプリを見ながら答える。


「翌日休みだから、休息にもなるし、この日がいいかも。」


理那と真由が日付を変更していく。


「競技はバスケ、ドッヂボール、フットサルの例年通りでいいな。」


「執行役員六人は、実行委員だから参加できないが、1年はどれかに必ず参加しろよ!」


「私も先輩たちと一緒に実行委員を務めます。」


沙羅が口にすると、真凛も「私も先輩たちと一緒に務めます。」と口にする。


男子三人は女子二人に賛同し、結局1年生五人とも実行委員を務めると言い出した。せっかく生徒会に入会したんだ。執行役員と一緒に働きたいという純粋な気持ちからだろう。


「却下だ。入学後、初めての行事だ。まずはクラスの輪に入れ!」


シンは冷たく突き放す。


「先輩たちと一緒にいたいですー!」


「入学したばかりの時期だぞ。クラスを離れてここで役員面してどうする。まずは自分の足元を固め、クラス内に仲間を作れ。それができない者に、生徒会の仕事は任せられない。」


「でも……。」


「今日はもう遅いから、少し考えろ。散会!」


シンは冷たく言い放った。後輩たちは肩を落として部屋を出て行った。

1年が帰った後、理那と真由の資料作りを手伝いながら残っている。


「シン、ちょっと厳しすぎない?」


一華は1年に対して厳しくし過ぎだと感じていた。


「そうだぞ。お前たちの推しで一緒に居たいのはわかるだろ。」


浩輔が続いた。


「2年3年なら、他のクラスにも友人はいるだろうが、1年は違う。同じ中学じゃなければ友人は居ない。孤立する恐れがある。まずは、『クラスの一員』として認められなければ後々苦労する。それに、孤立してしまうと、良い情報は集められない!」


「あぁ、そうだな。言い方は強すぎだが1年の事を考えた上でのことだったか。」


浩輔は言い含められてしまった。


「資料できたから、シン君まで送ったよ。」


理那と真由が作業を終え、六人は疲労感を感じていた。


「あぁ、俺たちも帰るぞ。続きは明日だ。」


資料を受け取ったシンは帰宅後に確認することにした。

六人は生徒会室を後にした。

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