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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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35/82

第35話 テレパシー覚醒

バックムーンの月光パワーを受けた翌朝、一華は回復モードの魔力のおかげで完全に体力を回復させていた。キッチンで朝食を作るシンの隣に立ち、いつも通りお弁当の準備を手伝う。


「おはよう。」


「おはよう。体は回復したか?」


「うん、完全回復!」


朝食の準備を終え、二人はテーブルに向かい合った。


シンは茶碗を持ちながら「で、テレパシーの魔力は覚醒したのか? 何か感じるか?」


首を傾げる一華。


「どうだろ。今はなんとも感じないよ。」


「そうか……。そのうち覚醒するのか、それとも違う魔力が覚醒したのか、様子を見るしかないな。」


「今日はこのまま、学校行っても大丈夫だよね?」


「ああ。ブレスレットがあるから、魔力暴走の心配は無用だ。」


一華は安堵しつつも、少しがっかりしていた。


(前回は数時間後に覚醒したのに、今回はいまだに覚醒してないなんて……私の願い、届かなかったのかなぁ)


シンは箸を止めて答える。


「俺は変化には気づいたが、魔力はまだ感知してないな。」


「え? 変化があったの?」


「ああ、多少魔力の揺らぎを感知した。ただ、魔力そのものが外に出ている感じはない。」


「そっかぁ。じゃあ、あとのお楽しみだね!」


一気に嬉々としだす一華。

朝食を終えた二人は、身支度を整えて家を出た。学校に着くまで、特に変わったことは起こらなかった。



◇◆◇



朝のホームルーム。担任が来週から始まる期末テストの日程を貼り出した。


「***(あぁ、またテスト勉強の時期かぁ。ママに怒られても、シンが代わりに受けてくれないかなぁ。)***」


その瞬間、隣の席のシンがピクリと反応し、一華の方を見た。


「ん? 何か言ったか?」


驚く一華。


「何も喋ってないよ?」


「***(そんなことないだろ…… あぁ、またテスト勉強の時期かぁ。ママに怒られてもシンが受けてくれないかなぁ。…と言っただろ。)***」


顔を硬直させ、声を潜める一華。


「えっ!? なんでそれを知ってるの!?」


「ああ……そういうことか。」


ニヤリと笑う。シンの瞳は、確信の光を帯びていた。


「***(覚醒したな。今はテレパシーで会話してるぞ。聞こえるか?)***」


シンを凝視し、小さく頷く一華。


「***(シンの声が頭の中で聞こえるよ!)***」


一華は机の下で小さくガッツポーズをした。願いが届いたことに興奮が収まらない。その後、一華は授業に身が入らず、シンをチラチラと見つめるだけで、気持ちだけがそわそわしていた。


「***(落ち着け、一華。授業を聞け。)***」


一華はシンの顔を見つめるだけで、頭の中の注意を無視しているようだった。シンは頭を抱えた。このままでは期末テストどころではない。

帰りのホームルームが終わると、二人は即座に家に帰った。



◇◆◇



夕食の準備中、興奮冷めやらぬ一華が話し出した。


「やっぱり願いは届いてたんだね! 本当にテレパシーができるようになるなんて! 満月様すごぉーい!」


皮肉っぽく注意するシン。


「喜ぶのは早いな。今日の一華は授業に全く身が入ってなかったぞ。」


一華はバツが悪そうに言い訳する。


「うっ……嬉しすぎて気持ちがコントロールできなかったんだよ。」


「わかるが、このままではダメだ。夕食後は精神統一の訓練をするぞ。」


「訓練もだけど、期末テストは来週だよ? 勉強は?」


「このままでは、テストどころか、今日の授業の内容も思い出せないだろ。」


一華は反論できず沈黙する。


「***(確かにそうだ……。)***」


「決まりだな。とりあえず、今日は精神統一が優先だ。」


夕食と入浴を済ませ、二人はリビングに集まった。シンが持ち出したのは、書道セットだった。


「精神統一と言えば、書道だ。」


一華は墨をすりながら聞く。


「どんな字を書くの?」


「自分の名前を、ただひたすら紙いっぱいに書け。」


一華が筆を握り、名前を書き始めたその時、シンがテレパシーを送り始めた。


「***(一華、聞こえるか? テレパシーで返せ。)***」


筆が止まり、シンを見る一華。


「***(聞こえてるけど……これじゃ精神統一できないよ!)***」


冷徹に言い放つシン。


「***(これが訓練だ。テレパシーは自分でシャットアウトできないだろ。聞こえても、手は止めるな。)***」


一華は筆を再び動かし始める。


「***(一華の頭で思ったことはすべて、俺にストレートに入ってくる。)***」


「***(うん。)***」


「***(だから、俺に話しかけているのか、ただの思考なのか、俺も判断に困る。ルールを決めるぞ。)***」


「***(うん。どうすればいいの?)***」


「***(そうだな。まず「シン」と二回呼びかけて確認する必要はある。そうすれば俺は会話と認識する。)***」


「***(わかった。『シン、シン聞こえる?』って言う感じかな?)***」


「***(そうだ。今日はなんで心ここにあらずだったんだ?)***」


「***(うん……。テレパシーで会話できるのはいいんだけど。頭の中で考えていることが全て、シンにバレるわけじゃない?)***」


「***(あぁ、この人が好きとか嫌いとか、みたいな?)***」


「***(うん。冗談だとしても口に出していないことは、自分の中で楽しんでるというか。出さないから楽しめるのに、心を無にしなくちゃいけなくなるのが気になって……。)***」


「***(俺が一華の頭の中を盗み読みしてるみたいに感じたのか?)***」


「***(うん。悪口言ってるわけじゃないけど、隠したい心もあるのよ。誰にも。特に乙女はね。)***」


深く反省するシン。


「***(あぁ。そうだな。それは一華だけじゃない。俺もコントロールしていた。)***」


「***(コントロール?……。私にもできるかな?)***」


「***(まずは、精神を統一させて、話しかけるものと、自分だけの思考とに分けることだ。会話するときは、脳の外に向けて念を送る感じで。思考する時は、内に向ける。)***」


「***(そうか、口に出すときと同じように、相手がいること前提かぁ。)***」


「***(この状態で、一華は俺に話しかけず、書道しながら思考してみろ。)***」


「***(思考……。)***」


一華は筆を進めながら、心の中で自分の名前を呪文のように唱え始めた。


「***(……一華、一華、一華……)***」


「くくっ。」抑え気味に笑いだすシン。


筆を止めてシンの方を向く一華。


「何?」


「聞こえてるぞ。『一華、一華、一華』って。」


「……もう!」一華は顔を真っ赤にして怒っている。


シンは笑いを収め、優しく諭す。


「会話の時は脳の外に向けて、思考の時は、自分のここに向ける感じと言えばわかるか?」


シンは一華の心臓のあたりを指さした。


一華は心臓あたりに指をさしながら「ここに向けて……。」


一華は再び集中し、心臓に向かって思考を向けた。


「***(一華あんたはえらい。)***」


「***(シン、シン聞こえる?)***」


「***(あぁ、聞こえてる。)***」


「***(さっきの思考、わかった?)***」


「***(……聞こえなかったぞ。思考していたのか?)***」


「***(そうだよ。)***」


「***(なんて言ったんだ? 聞いてもいいやつか?)***」


「***(うん、大丈夫……『一華あんたはえらい』って褒めた。)***」


「ははは。あぁ、一華はえらいな。習得したな。」


シンは一華の頭を優しく撫でた。

笑顔になり、自信を取り戻した一華。


「ね。明日から、もう大丈夫だよ!」


二人は大声で笑い合った。テレパシーという強力な魔力は、一華にとって新たな武器であり、シンとの絆を深める秘密の道具となった。


「明日からは、心おきなくテスト勉強に集中できるな。」


またまた悪魔のような表情で一華を地獄に突き落とすシン。


「これで、シンが頭の中で回答を読み上げてくれれば、勉強する必要もなくなったわけだよね。」


負けず劣らず、一華も悪魔の思考で返す。


「……おっ おまえは……なんてことを考えるんだ。もしかしてテレパシーを願ったのはこの為か?」


シンは動揺を隠せない。


「ふふふっ……そんなこと……」と誤魔化す一華。


シンはテレパシー覚醒を一緒に願ったことを後悔したことは自分の胸に収めた。


書道セットを片づけて、一華は嬉々として、シンは落胆したまま二人はベッドに滑り込んだ。

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