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いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

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第122話 ダンスシューズ

クリスマスの朝、いつも通りの時間に起きて来たシン。一華はアラームを掛けず、布団にくるまっている。

サンに朝ご飯を用意して、自分たちの朝食作りに取り掛かった。


キッチンからトントントンと包丁の音がリズミカルに響いている。


一華の耳にトントントンというリズミカルな音が入ってきた。脳内でシンの包丁の音だと認識すると、布団から抜け出して洗面所に向かった。



「おはよう」


「おはよう」


ダイニングテーブルの上には目玉焼きと味噌汁が既に運ばれていた。


「シンは休みでも起きる時間、変わらないんだね。」


「あぁ、規則正しい生活が一番効率的で調子がいいからな!」


「うん、わかってるんだけど……寒くなると布団から出るのが難しくて……。」


ほかほかご飯がテーブルに運ばれてきた。


「さぁ、冷めないうちに食べよう!」


「「いただきます!」」


「出掛けるのはいつ頃だ!?」


「本当は夕方の方がいいんだけど、午後から出掛けたい!」


「夕方の方がいいのか?」


「うん。足は夕方にかけて浮腫んでくるから、その時に試着する方が痛くならないんだよ!」


「そうなのか? 他に寄りたい所はないのか?」


「ある。新しい服をもう買っておきたい。去年は毎日出掛けてたから、しんどかったし。」


「なら、昼前に出かけていってランチもしよう!」


「いいの?」


「あぁ」


「やったー!」




◇◆◇



早めにマンションを出て行った一華とシン。シューズ専門店は電車でいくつか先の駅で下りる。

駅近くのカフェ目指して歩いて行く。


お目当てのカフェからはスパイスの芳醇な香りが漂っている。

一華は野菜たっぷりのスープカレーのセット、シンはハンバーグ入り野菜スープカレーのセットを注文した。


少しピリ辛のスープだが、シンの舌には想定内の辛さで、辛いという感覚はなかった。


「辛っ」


「辛いのか? 食べれるか?」


一華は一口スープを飲むと舌がピリッとした。急いで水を飲み鎮めようとした。

今度はご飯を一掬いし、少しだけスープに浸して口に運んだ。


「あ、ピリッとするけど大丈夫。美味しい。なんかこのピリッとする味が後を引いてて、また食べたくなるね。」


「あぁ、美味いな。家のカレーはご飯を食べる感じだが、このスープカレーは野菜や肉がメインだな!」


「うん、美味しい!」


一華とシンはいつも食べるカレーとの違いを堪能し、お洒落なカフェを後にする。

お正月用の服を探しに近くにある大型店舗を目指した。


一華はフレアのロングスカートかワンピースを探していた。

一華の目に飛び込んできたのは、ハイウエストのロングスカートだ。Aラインスカートに見えるが、動けば大きく広がる。2枚重ねでふわふわとボリュームがある。探していたデザインにピッタリだった。


「何色にしようかな?」


「何色で迷ってるんだ?」


「こっちのブルーと水色、あと、こっちの落ち着いた感じのオレンジ色、コーヒー色もいいなと思って……。」


「ダンスの練習用にいいな。」


「でしょー! 普段も着られるのがいいかなと思って。」


「ブルーとオレンジがいいな。水色は鮮やかすぎるし、コーヒー色は一華には地味じゃないか?」


「でも、どっちにしよう?」


「両方買えばいい!」


「いいの?」


「あぁ、練習にも着るんだろ。」


「やったー。じゃぁ、ブルーとオレンジにする。」


他にもアウターなどもスカートに合うものを選んでいく。シンも一式選んで、シンがまとめて打ち出の小槌で支払いした。それぞれに入れられた袋はシンが受け取った。


「シン、1万円送って。」


一華はスマホをシンに向けて見せた。


「あぁ、下着用のか!?」


一華はお店を指さして

「うん。あのお店で買おうと思って。」


シンは一華のスマホに送金する。


「メンズ用もあるかな?」


「専門店だからあるんじゃない。一緒に入るのはいいけど、店内では近づいて来ないでよ。それに思考も読まないでよ。」


「承知した。」


「じゃぁ、買い終わったら店の外で待ち合わせね。」


一華とシンは二人でお店に入り、それぞれの売り場へと離れて行く。


シンのショッピング時間は早い。目当ての物が見つかると同じものを数枚買うだけだ。

それに比べて一華は、好みの物を数枚手に取り、そこから厳選していく。他に好みの物が見つかると入れ替えて行く。気がつくと、予算オーバーになってしまっていた。その中から、予算内に収まるよう更に厳選していった。


ようやく、ショッピングが終わった一華が店の外で待っているシンの隣に寄ってきた。


「お待たせ。」


「じゃ、シューズを買いに行くか!?」


「うん。」




少し歩いて目的のダンスシューズ専門店にやってきた。


「いらっしゃいませー」


専門店というだけあって、クリスマスの日にはお客さんはそこまで多くなかった。

だが、ダンスシューズは色とりどり、ヒールの高さもいろいろあって、何を選べばいいのかわからない。


「あのー、社交ダンスのシューズなんですけど、どう選べばいいんですか?」


一華は近くにいる女性店員に声を掛けた。


「お二人がペアかしら?」


「「はい」」


店員は二人を眺めて

「身長差があるから、10cmヒールのシューズがいいと思いますよ。」


「えーっ、10cm?」


「ハイヒールは履きなれてないのかしら?」


「はい。高校生なのでいつもぺったんこの靴です。」


「高校生なのね。ダンスを始めて浅いの?」


「はい。1カ月経ってません。」


「理想の身長差は15cmから10cm程度だから、10cmを薦めるんだけど、少し低くして7~8cm位はどう?」


「それでも、その高さなんですね……。」


「一度、試着してみない? ここら辺で好きなシューズはあるかしら?」


店員は7~8cmのシューズが置かれている棚を指して聞いてきた。


「このピンクゴールドの……生地も柔らかいし。」


「ちょっと、履いてみて。」


一華は椅子に腰かけて、履き替える。

生地は柔らかい、痛くはない。立ち上がった。


「うわぁ、これで踊るの?」


「少し、歩いてみて。」


一華はバランスが定まらず、正しい姿勢を保つことが出来ない。


シンは一華の手を取った。


「一華、まっすぐ立ってみろ。」


「うん」


店員がハイヒールの歩き方を教えてくれた。


「歩幅は小さく、膝を伸ばし、つま先とかかとを同時に着地させるように歩いて見て。」


一華はシンに手を支えてもらったまま、正しい姿勢を意識する。それから一歩を踏み出した。


「そうそう、上手に歩けてるわよ!」


店員が褒めてくれた。

一華から笑みが漏れた。


「後は高さなんだけど、今、ホールドして見てどうかな?」


シンは一華の前に立ち、ホールドの形をとってみる。理想的な身長差に近づいたことで、シンの顔が近くになる。一華の胸がきゅんとした……。いつも見上げている距離よりずっと近くにお互いの顔がある。気づかれないよう一華も手を添える。


「どう? もう少し、欲しいけど……。10cmで一度試してみない?」


店員が同じようなデザインのシューズを持って来た。

一華は履き替えて、立ち上がった。


「うわぁ、高い……!」


歩いてみる。3cmの差は足の負担が全く異なる。ホールドの形をとると、理想的な身長差になったことで、更にシンの顔が近付いた。またまた、きゅんとする……。


「一華、足は大丈夫か?」


「歩けなくはないけど……。バランスを保つの難しい……。」


「こういうのはどう?」


店員は厚底の10cmヒールのシューズを持って来た。ヒールも太く、バランスも保てそうだ。

一華は履き替えてみた。高低差は7~8cm程度、最初に履いたシューズと変わりない。


「あ、これ、高いのに楽です。」


一華は7~8cmのヒールでも高いと言っていたのに、一度10cmを経験して7~8cmの高低差に戻ると、逆に楽に感じたようだ。


「ちょっと、シン、ホールドして。」


シンはホールドする形を取った。


「これなら、俺も膝を曲げずに済むな。」


「これにする。」


「良かったわ。好みに近いのはゴールドなんだけど、他にもシルバーや白、赤、黒もあるの。何色にします?」


「赤がいい……。」


シンがポツリと呟いた。


「赤にします。」


一華はシンの呟きを聞き逃さず、シンが希望した赤をチョイスした。


「赤の23cmでいいかしら?」


「はい。」


店員が赤の23cmを手にして会計に持って行った。後ろからシンがついていく。


「クリスマス・プレゼントかしら?」


「はい。」


「何色のリボンがいいかしら?」


シンの目の前には赤やピンク、水色にゴールドなど色々なリボンが並べられている。


「ピンクで。」


シンの好きなピンク色を選択した。

店員はダンスシューズを箱詰めしてピンクのリボンで可愛くラッピングする。紙袋に崩れないよう入れると、シンに手渡した。


「一華、帰ろう!」


「うん」


「ありがとうございましたー!」


一華とシンは店員に見送られてお店を後にした。


「いいのあって、良かったな。」


「うん。ありがとう!」


「これで、毎日、特訓ができるな!」


一華は思わずシンの顔を見上げた、悪魔の顔つきだ。


「……もう、プレゼント買ってもらってテンション爆上がりなんだから、落とさないでよー」


一華は頬を膨らませて抗議した。

シンはそんな一華の顔を見おろすと、更に脳内に悪魔のささやきが響いた。

一華の膨らんだ頬に人差し指を押していた。


「ぷっ」


「あははは」


シンは自分のしたことに爆笑している。


「ちょっとー」


一華は更に抗議しようとするが、シンの笑顔に釣られて一緒に爆笑してしまった。


「あははは」


(もう、そんなことどこで覚えたのよー)


笑いながら帰路についた二人だった。


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