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いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

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第120話 セクハラ?

自宅リビング。

昨日、来年度から社交ダンスの必修化が決定したことで、シンの特訓の手が緩くなると淡い期待は見事に打ち砕かれていたところに、更に新しいステップの特訓が始まろうとしていた。


「一華、次のステップを教える。」


「えーっ? 今? ねぇ、新しいステップ覚えるのは冬休み入ってからにしない?」


「なぜだ!?」


シンの鋭い眼光に、一華は一瞬怯むが、何事もなかったように続けた。


「…っ、もうすぐ、期末テストだよ! せめて、期末テストが終わってからにして、お願い!」


一華は両手を顔の前で合わせて、シンの目を見つめながら懇願した。


「っう、(そんな顔をされては……仕方ない。)承知した。ただし、姿勢矯正とバックエクステンションは継続する事!」


シンは表情を一旦緩めたが、気を取り直し厳しい表情で告げた。


「わかったよ。ありがとう、シン!」


一華はシンの厳しい表情をものともせず、更に小悪魔かと思うような笑顔をシンに向けた。


「あとね、クリスマスプレゼントなんだけど……。」


「あぁ、今年は何が欲しいんだ?」


「お小遣いでは買えないから……ダンスシューズが欲しいの。」


「普通の靴屋で買えるのか?」


「初めてだから専門店で試して買いたい。」


「承知した。25日に出掛けよう。」


「やったー! シンは何がいい?」


「一華からのプレゼントなら何でもいい!」


「それが一番困るんだってば!」


「欲しいものが浮かばないんだが……。」


「えー? なんか無いの?」


一華はおもむろにこたつの布団を上げた。中にはサンがへそ天で寝ていた。


「サンちゃんはクリスマスプレゼント何がいい?」


「にゃん……(肉にゃ!)」


サンは寝ていても欲しい物はきちんと口にした。


「ほらぁ、サンちゃんは即答するよ。本当に何にもないの?」


シンは少し考え、小声で答えた。


「……一華の手料理がいい。」


「それでいいの?」


「あぁ」


「じゃぁ、終業式の日に寄って材料買わなきゃね。何がいい?」


「ビーフシチュー」


「去年と同じだよ!?」


「去年は一緒に作ったが、今年は一華だけで頼む。」


「わかった。買い忘れしないようにリストアップしなくちゃ!」


一華はスマホでレシピを見ながら、材料をメモしていく。


「あ、それとサンちゃん用のクリスマスケーキも予約しなくちゃね。今年はローストチキンがいいかな?」


更にローストチキンのレシピを検索して材料をメモった。


「ローストチキンまで作るのか?」


「うん、そのつもりだけど……?」


「大丈夫か?」


「だって、ほら、オーブンでほったらかしだよ。大丈夫、大丈夫。」


一華はシンにレシピのサイトを見せて気楽だ。

シンは希望以上の事をやろうとする一華を心配していた。


「あー、不安なんでしょ。失敗して食べられなくなっちゃうかもって……。」


シンは一華に図星を付かれて、隠すように言い放った。


「まぁ、そうなった時の非常食は用意しておこう!」


「無駄にならないから、買ってもいいよ。」


一華は自信満々だ。



◇◆◇



数日後、お昼休みの終わりに、一華と理那、真由はトイレでついつい花を咲かせていた。


「一華、今年はどうするの?」


「何が?」


「クリスマスプレゼント!」


「あぁ、今年は私の方からお強請りしたから、何が欲しいか聞いたんだけど……、シンは何もいらないって言うから今年は買いに行かないつもり。」


「そうなんだ……。」


「理那と真由はどうするの?」


「何がいいか、わからなくて、一華が一緒なら何かヒントがあるかなって思ってたんだけど……。」


「私も同じ。」真由も何を買ったらいいのか分からないらしい。


「そうだよね。実は私も何をプレゼントしたらいいかわからないから、聞いたんだけど、何も浮かばないって言うんだよ。男子って、欲しい物ないのかな?」


「女子にはいっぱいあるのにね。」


「ほんとほんと。」


「一華はシン君に何もあげないの?」


「うん、いつもシンが料理してくれるから、私だけで作る料理が良いって、夕食だけ頑張るの!」


「一華にはそういう事ができて、いいな……。」


理那が羨ましそうに呟いた。理那も浩輔に似ていて、二人を羨ましいと思っている所を隠さない。

一華は高校生らしいものを提案することにした。


「勉強を頑張れるようなものにするとかは?」


「シャーペンとか? 去年もそんなこと言ってたよね。他に何があったかな?」


理那は去年も相談し合ったことを思いだした。


「マグカップ! お揃いの! どう!? 勉強中にも目に入るし、堂々とペアだよー!」


「学校で使うならマグボトルもいいかも!?」


真由も思いついたものを口にした。


「ちょっと予算オーバーするなら、お揃いのをお互いが送り合えば!? 二人で見て回って、一緒に探せるよ!」


デートも兼ねた提案をしてみる。二人の瞳が輝きだした。


「それ、いいかも。事前に買いに行くのもいいけど、25日に一緒に買いに行くのもいいよね。」


去年はクリスマスイブにデートに誘われないからと、パーティに誘ってきた理那だったが、今年は全く気にしていないようだ。


「うんうん。イメージ出来た?」


「出来た! ありがとう。浩輔と話してみる。真由はどう?」


「うん、直哉と話してみる。」


「よかったー。」


「一華は何、お強請りしたの?」


「ダンスシューズ。高いんだもん!」


「私たちも来年度から必要なのかなぁ?」


「どうだろう? 始まってからじゃないと、何もわからないよね。」


お昼休み終了のチャイムが鳴るまで3人は喋り続けていた。急いで教室へと戻って行った。




「遅かったな。ギリギリだぞ。」


「うん、話に花が咲いて……お昼休みが終わるまで気づかなかった。」


「***(クリスマスプレゼント、買いに行くのか?)***」


シンの声が脳内に響いた。ここから先はクラスメイトには聞かれたくないからだ。


「***(また、思考読んでる……)***」


「***(一華の帰りが遅いからで、最初からじゃないぞ!)***」


「***(どこから読んだの? トイレ中は読んでないよね!? セクハラだよ!)***」


「***(セ、セクハラって……、よ、読んでない……。理那が、今年はどうするか聞いたところからだ!)***」


シンの目が泳いだ。顔を赤らめ否定した。


「***(ほぼ、最初からだよ……。)***」


「***(俺も、浩輔と直哉から相談されたんだよ!)***」


「***(一緒に買いに行くの?)***」


「***(行かない! 俺は25日に一華と買いに行くことは伝えた。)***」


「***(そうなんだ。で、二人はなんて?)***」


「***(何かヒントくれって!)***」


「***(やっぱり、そう来るよね。去年は、シンが私の思考を読んで教えたんだよね……。)***」


「***(あぁ)***」


「***(また読んだんだから、もうわかるでしょ!)***」


「***(あぁ、お揃いのマグカップだろ!)***」


「***(うん。理那と真由は、二人と話して見るそうだから、ヒントは教えなくていいよね。)***」


「***(もう必要ないだろ!)***」


「***(ねぇ、シン?)***」


「***(なんだ!?)***」


「***(勝手に私の思考、読むの、止めてくれない?)***」


「***(っう、だが、離れた時の護衛は思考を読むことしかできない……。)***」


「***(うん、わかるよ。わかるけど……セクハラだよ! プライバシーの侵害だよ!……何かあれば、テレパシーで話しかけるから。)***」


「***(だが、テレパシーが使えない時は困るだろ!)***」


「***(どんな時?)***」


「***(トイレとかお風呂とかで倒れた時、気を失っている時などを想定している……。)***」


「***(っう、……今までは無かったけど……今後も無いとは言えない……。)***」


「***(そうだろ? 常に意識を向けておかないと心配なんだよ……。)***」


「***(でも、寝てる時以外は、ずっと意識を向けてると、緊張しっぱなしでしょ……。今度からは、私が承諾した時だけにしてくれない?)***」


「***(……本当に大丈夫か?)***」


「***(大丈夫だって。)***」


「***(……仕方ない。承知した。)***」


「***(良かった。約束は守ってよ!)***」


「***(あぁ、約束する!)***」


授業終了のチャイムが鳴りだした。


「***(一華、すまない。授業が終わってしまった……。)***」


「***(えぇぇ!授業全く聞いてないよ……。)***」


「***(帰ったら、復習だ!)***」


「***(なんか、自分だけ損した気分なんだけど……。)***」


「***(帰りにアイスでもプリンでも、なんでも好きな物、買ってやるから……。)***」


シンは自分のせいで授業を聞けなかった一華の機嫌をスイーツで治してもらう事にした。


「***(やったー! プリンがいいな! プリン!プリン!プリン!)***」


一華は自然と「プリン」のリズムに合わせて奇妙に体を動かしていた。


「***(一華、落ち着け!)***」


「***(美味しいのあるかなぁ? 楽しみー!)***」


「***(わ、わかったから、帰るまできちんと授業は受けろ!)***」


「***(……)***」


その後の一華は落ち着きを取り戻し、授業を受けた。

帰宅途中のコンビニに寄って、大好きなクリームたっぷりのプリンを選んだ。




お風呂上がり、いつものアイスの代わりに、帰りに寄って買ったクリームたっぷりのプリンを頬張りながら、シンのせいで聞き逃した教科の厳しい補習を受ける羽目になった。

その隣では、ノンアルコール○ールを片手に一華を横目で見ているシンが居る。

一華は、悔しいので自分一人でプリンを全部食べてしまっていた。


「は、半分こ……」


シンは二人っきりなのに初めて半分こしてもらえなかった。

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