第116話 戦略会議
ハロウィンが無事終了し、来年の継続開催が確定した。
生徒会室にはシンと一華、直哉と宗一郎だけが揃っていた。
「宗一郎、来年に向けて修正すべきことがないか洗い出す必要がある。生徒一人ひとりにアンケートを取れ。」
「わかりました。アンケート案を作成します。」
「もうすぐ、生徒会長選が始まる。確かな実績が出来たな。」
「っはい。ありがとうございます。……もしかして、その為に俺に任せてくれたんですか?」
「ん? 結果的にそうなっただけだ……。」
シンはぶっきらぼうに答える。
「でも、会長が、俺達を導いてくれました。ルールを挙げさせてダメなところは修正して、許可が下りるように助言もしてくれました。」
「顧問には1年の要望として渡したが、全校生徒には生徒会として発信している。お前の実績としてどうすれば認めさせることが出来るかだな……。」
「会長が俺の応援演説してもらえませんか?」
「他の1年メンバーの方が良くないか!? 沙羅とか!?」
「沙羅ちゃんには、生徒会役員をお願いするつもりですが、……会長に演説してもらう方が説得力があります。」
「確かに……、シン、受けてあげたら?」
静かに二人のやりとりを聞いていた一華が勧める。
「シンが応援すると知ったら、他に立候補する生徒がいなくなるかもな!?」
更に直哉も一押しする。
「他に立候補がいなければ、選挙も無くなる。生徒会としても楽だな! そうなると応援演説そのものが不要だ。」
遅れて浩輔、理那、真由、1年メンバーも合流していた。
「遅かったな。」
「あぁ、何、話してたんだ?」
「宗一郎に応援演説頼まれた。」
「あぁ、立候補のか!?」
「他に立候補者を出させない手立てはないかと思ってな!?」
「無投票当選狙いか!? なら選挙もしなくて済むな!?」
浩輔もシン同様、選挙はしたくない口だ。
「シン君がバックにいることを流せばいいんじゃない?」
「理那、バックって……語弊があるよ……。」
一華は心配し注意する。
「でも、3年になったシン君とまともに話せるのって宗一郎君以外いないでしょ!」と理那。
「そうだよ。他の生徒が生徒会長になって、シン君と対峙できると思う?」
真由まで同じ意見だ。
「対峙って……、俺は、新しい生徒会長とは対決しないぞ!」
シンは断言する。
「せ、先輩達は、僕と会長を対峙させたいんですか?」
「させたいんじゃなくて、他の生徒から要望が挙がった時、シン君の所までお願いに来るでしょ。シン君はきっと拒否するよね。でも、生徒会長としてはお願いしたいとなると……対峙ってことになる。」
真由が対峙に至る経緯を説明する。
「逆に、シン君を多様な場面で起用するということを前面に出せば、完璧じゃない!?」
理那が反対案を出す。
「俺は3年になれば、一華と穏やかに過ごしたい……。」
「僕は会長と一華先輩の穏やかな高校生活を守りたいです。」
「うん、わかるよ、宗一郎君の気持ちは。ここにいるメンバーはみんな一緒だと思う。でもね、他の立候補者がシン君を多様な場面で起用すると言い出せば、みんなの票はそっちに流れる事間違いなしだよ。」
「ど、どうすれば……。」
宗一郎は困ってしまった。
一華が助け舟を提案する。
「生徒会長推薦を前面に出したら? シンを起用することで当選するような立候補者には、みんなの前で私が『シンを起用したら一緒に退学する』と言えば女子生徒は絶対投票しないでしょ。……。票はむしろ、宗一郎君に留まると思うよ。」
「そんなの私が許しません!」
真凛が力強い声でまだいない立候補者に対して怒りを露わにする。
「もちろん、一言脅かすだけだから、退学することは無いと思うし。」
一華は怒りを露わにしている真凛を宥める。
「となると、一番手強いのは、宗一郎と真っ向勝負する奴だな!」と浩輔。
「あとは、ハロウィンの実績をアピールする。」
沙羅が一押しする。
「沙羅ちゃん……。」
「みんな、宗一郎君の応援するし、一番相応しいから大丈夫だよ。」
「ありがとう。」
「シンが宗一郎君の教室まで口説きに行く?」
一華はシンが前生徒会長に口説かれた場面を再現すれば噂も流れて、いい効果と思っていたが……。
「こうやって毎日、生徒会で会うのに、わざわざ教室まで口説きに行くのは不自然だろ!?」
「立候補期間に入ったら、一番に宗一郎の生徒会長推薦のポスターを貼りまくってはどうですか?」
湊が提案してきた。
「ポスター作成は沙羅ちゃん、お願いしたいけどいい?」
宗一郎は沙羅に体を向けて、お願いする。
「いいよ。映えるポスター作成するね!」
「立候補期間は翌週だ。間に合うか?」
「1週間あるので、大丈夫です。」
「とりあえず、他に立候補者が出て来た時に対策考えればいいさ!」
直哉が言う。
「会長がバックにいるだけじゃなくて、生徒会執行部がバックにいるよ!?」
沙羅が宗一郎に向けて言う。
「うん、そうみたい。」
宗一郎はみんなの顔を見渡して呟いた。
「そうと決まれば今日は解散だ。」
シンの一言でメンバーは生徒会室を後にした。
◇◆◇
立候補期間に入った。一番最初に立候補してきたのは宗一郎だ。
予定通り、沙羅が作成したポスターを至る所に掲示していった。玄関や廊下だけでなく、教室内の掲示板にも全クラス、手分けして貼って行った。
◇◆◇
立候補期間終了日の放課後の生徒会室。
メンバー全員が揃っている。
「宗一郎、おめでとう、無投票当選が決まったぞ!」
「ほんとですか? 有難うございます。」
「やったー! 宗一郎君、おめでとう!」
沙羅も喜んでいる。
「沙羅ちゃん、ありがとう。沙羅ちゃんが作成してくれたポスターのお陰だよ!」
「うん、あれは、誰も立候補できないでしょ!」
理那が言う。
沙羅が作成したポスターは、宗一郎の笑顔の下には「生徒会長推薦」「生徒会執行部全面バックアップ」の文字がデカデカと描かれていた。
「あれで立候補したら、よほどの命知らずか、生徒会の反対勢力だけだよね。」
真由も続く。
「他の執行役員はどうするんだ?」
シンが宗一郎に確認する。
「その件ですが……」
宗一郎は他の1年メンバー、一人一人の顔を見渡す。
「執行役員を受けてくれないか?」
「私は引き受ける。」
沙羅が即答する。
「私も引き受ける。」
真凛も続く。
「真凛ちゃんが引き受けるなら、僕も引き受けるよ。」
海斗も続いた。
「僕は……、ごめん、辞めさせてもらうよ。」
湊が絞り出すように口にした。
「ど、うして……?」
沙羅が湊に向いて聞く。
「俺、なんとなく生徒会入って、続けてきて楽しかったけど……、執行役員となるとイメージできないよ。それに、進路の事も考えないといけないから……。」
湊はそれらしい理由を口にした。
「***(シン、湊君、沙羅ちゃんと宗一郎君の仲が良くなるのを、これ以上見続けるの辛いみたい……。)***」
「***(やっぱり、そうか!?)***」
「***(シンも気づいてた?)***」
「***(あぁ、ハロウィンの事から急接近したからな。)***」
「***(こればっかりは受け入れるしかないよね!?)***」
「***(そうだな。魔力でもどうにもできないからな……。)***」
「となると、執行役員が4人では不足だ。誰かスカウトできるか!?」
「既に部活動や放課後の塾の予定などがあって、難しいと思います。新たなメンバーは1年から募集することにします。」
「会長と一華先輩って受験しないんですよね!?」
「あぁ、この国では予定していない。」
「相談なんですが、執行役員を引き受けてもらえませんか? 相談役みたいな感じです。」
「お、お前、俺たちの穏やかな高校生活を守りたいと言ってたよな!?」
「はい。守るために相談役をお願いしたいんです。」
「どういう事だ!」
「今の3年生はいなくなるので対決とかは無くなると思います。ですが、女子生徒からの追っかけや執拗な要望は相変わらずでしょう。ですので、生徒会役員になってもらえれば、僕が砦になります。」
「宗一郎君、それナイスアイデア!」
沙羅の隣では真凛もうんうんと頷いている。
「シン、引き受けてもいいよ。」
「一華は、いいのか?」
「うん、考えたら、生徒会を離れる方が怖いかも……!?」
「そうです。攻撃は最大の防御です。」
宗一郎の言葉がシンの戦士魂に火をつけた。
「承知した。受けろう!」
「「「ありがとうございます!」」」
宗一郎だけでなく、沙羅と真凛まで同時に礼を言う。
「予定していた立会演説日に当選の挨拶と、執行役員の紹介をすることになるんだが……。」
「会長には副会長をお願いしたいです。」
「承知した。」
「一華先輩には引き続き会計をお願いします。」
「了解!」
「海斗は副会長、沙羅ちゃんと真凛ちゃんは書記をお願いします。」
「「「ラジャー」」」
◇◆◇
立会演説日を予定していた日。体育館に集合し、全校生徒に向けて新生徒会執行役員の挨拶が行われる。
現生徒会長であるシンと一緒に、宗一郎、海斗、一華、沙羅、真凛がステージ上に上がった。
一華の姿を見つけると、生徒がざわつき始めた。
現生徒会長のシンが司会を務める。
「静かに! ただいまより、新生徒会執行役員の紹介をする。まずは、無投票当選を果たした新生徒会長の宗一郎からだ。」
宗一郎が中央のマイクの前に立った。
「みなさん、おはようございます。次期生徒会長に就任することになりました宗一郎です。入学してから、生徒会長の下で勉強してきました。引き続き有意義な高校生活を送れるよう生徒会活動を行っていきたいと思っています。よろしくお願いします。」
宗一郎は中央のマイクから離れると、シンからマイクを受け取った。
シンは海斗と一華の間に立ち並んだ。
「ここからは、僕から紹介したいと思います。」
「副会長の海斗です。」
海斗は中央のマイク前に立ち、挨拶をする。
「新生徒会の副会長を務めることになりました海斗です。よろしくお願いします。」
「同じく、副会長のシン先輩です。」
「えーっ!?」「どういうこと!?」驚きの声があちこちから聞こえてくる。
「静かに。新生徒会では副会長として宗一郎をサポートすることになった。宗一郎に無理難題を押し付け、学校の秩序を乱すものは容赦しない。心して高校生活を送るように。以上だ。」
シンはマイクから離れて一華の隣に戻って行った。
「キャー」
シンのいつもの突き放すような言葉が、逆に女子生徒達から黄色い歓声が発せられることをシンは知らない。
「***(シン、普通の挨拶で安心したよと言いたいけど、最後のあれは煽ってる!?)***」
「***(あれぐらい言っておかないと、宗一郎を困らせることになりかねないからな!)***」
一華は苦笑したい表情を我慢する。
「静かにしてください。続いて、会計係の一華先輩です。」
「シンと一緒に宗一郎君達をサポートすることになりました。引き続き、よろしくお願いします。」
一華はマイクから離れてシンの隣に戻って行った。
「書記係の沙羅ちゃんです。」
「書記係の沙羅です。宗一郎君より任命を受け、書記を務めさせていただくことになりました。よろしくお願いします。」
「同じく、書記係の真凛ちゃんです。」
「書記係の真凛です。責任もって務めたいと思います。よろしくお願いします。」
「これで、新生徒会執行役員の紹介を終わります。」
温かい拍手と歓声が体育館中に響き渡った。
シンが生徒会に残留することで、行事ごとにお目にかかることが増えるからだ。
「全校集会は終了しました。教室に戻ってください!」
生徒は体育館を出て教室に戻って行った。




