表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いちにの華  作者: ゆず華
生徒会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/130

第115話 ハロウィン

「会長!年間行事にハロウィンがありません。」


文化祭の余韻も冷めやらぬ生徒会室のドアを開けるなり、沙羅が飛び込んできた。

肩が上下している。急いで来たようだ。

文化祭が終わり、この後、中間テスト、進路希望調査と続くが、次の楽しみは「ハロウィン」だ。それが無い。


「あらら」


理那が反応する。


「とうとう、気付いたか!?」


シンは聞かれなければスルーするつもりでいた。


「どうして、ハロウィンが予定されてないんですか?」


「もともと、年間行事としてはない。去年はたまたま前生徒会が開催しただけだ。」


他の1年メンバーも入ってきた。


「沙羅ちゃん、どうしたの? 急いで来たの?」


「真凛ちゃん、年間行事にハロウィンが無いの、知ってた?」


「えっ? 無いの?」


「去年はたまたま、前生徒会が開催しただけなんだって……。」


「うそっ、……一華先輩の仮装、直に見られないの?」


真凛は一華の方に顔を向けて来た。


「去年は土曜日の部活を1日潰して、体育館を空けさせている。おまけに全員参加というわけでは無いしな。」


「そう言えば、副賞どうした?」


浩輔が聞いてきた。


「私とシンは食堂利用しないから、クラスメイトに譲ったよ。」


「えっ? 副賞は食券だったんですか?」


「うん。いろんな賞があって、グランプリは1か月分あったよね。」


「あぁ」


「今年もやりましょうよー。」


沙羅がシンに向けて潤んだ瞳で懇願する。


「シン、沙羅ちゃんが泣くほどお願いしてるよ。どうするの?」


見かねた一華が助け舟を出す。シンはため息をつき、沙羅に確認した。


「仮装できればいいのか? 仮装コンテストをしたいのか? どっちだ!?」


「私は仮装する側ではなくて、仮装した人を見れればいいです。参考にしたいので……。」


「仮装した人なら、繁華街に行けば見られるだろ!?」


「そうじゃなくて、仮装した会長と一華先輩を見たいんです!」


「俺たちは、主催者だから、去年のような仮装は無理だぞ!」


「うん、私もずーっと、ハイヒール履き続けるの無理だよ。おまけに階段上り下りできなくなるし……。」


「そんなぁ……結局、見られないじゃないですかぁ……。」


崩れ落ちる沙羅と真凛。


「コンテスト形式は止めて、1日だけ仮装登校を許可してもらえば?」


宗一郎が沙羅に提案する。


「えっ? どういうこと?」


「ハロウィン当日は、制服の代わりに仮装して授業を受けるのを許可してもらうんだったら、どう?」


「会長たちも仮装してくれますか?」


「……まぁ、一華がすると言うならしてもいいが……。」


「一華先輩どうですか?」


「出来るなら、楽しみたいよね! でも、去年みたいなドレスは無理だよ!」


「仕方ないです。会長、仮装登校の許可をお願いします。」


「許可は職員会議でだ。俺たちが出来るのは要望書を提出するのみで、副賞はないぞ!」


「そ、それも欲しいです……どうすれば、兼ねることできますかねぇ……」


「コンテスト形式を採用すれば華美になる。気軽に生徒全員が楽しむことを前面に出さなければ却下されることは想定できる。諦めろ。」


「……わかりました。」


沙羅は肩を落としてシンの言葉を受け入れた。


「お前たちの考える仮装ルールを挙げてみろ。」


「えーっと、顔は隠さない。」


「メイクはしない。」


「体育時は着替えれること。」


「歩く邪魔にならないこと。」


「過剰な露出は避ける。」


「高価なアクセサリーは着けない。」


「公序良俗に反しないこと。」


「他にあるかなぁ?」


「なら、そのルール内でできる仮装を考えてみろ!」


シンは1年メンバーが挙げた仮装ルールを元に仮装を考えさせる。


「アニメのコスプレ衣装」


「フード付きの着ぐるみならOKかな?」


シンは挙げられた、どちらの仮装もしたくなかった。


「そんな仮装したくない者はどうするんだ?」


「仮装したくない人は制服登校で、少ししたい人は制服に猫耳を着けるとか?」


「登校時、どうやって本校の生徒と判断するんだ?」


シンは自らルールを策定することはしなかった。あくまで、要望する1年メンバーの口からルールを策定させるつもりだ。


「生徒手帳を提示するだけじゃダメですかね?」


「保護者から見て、仮装した生徒かどうか判断できないだろ。不審者が紛れる可能性もある。下校時はそのまま帰宅しても、登校時は制服着用とする方が許可も出やすい。」


「更衣室が必要という事ですね。」


「できれば、登校時も仮装OKにしてもらいたいけどな。」


「一華は恥ずかしくないのか?」


「何に仮装するかによるけど、上からコートを着れば大丈夫とか、緩めにして欲しい……。」


「その時は生徒手帳提示を求めるか!?」


「いいね。それなら、仮装しやすいよね。着替えるとなると登校時間早めないと、更衣室いっぱいになりそうだし。」


理那も賛同する。


「……となると、仮装ルールから逸脱していないか確認は必要だ。」


「誰がするの? ……も、もしかして私達生徒会?」


一華が顔を引きつらせながら聞いてきた。


「言い出しっぺだからな。当然だ!」


シンは意地悪な顔になってる。


「朝、早く登校しないとだめだよね……。」


「誰よりも早く来ないと確認は出来ないからな……。一華、早起きできるのか?」


「…っう、頑張る……。」


一華は顔を引きつらせながらも早起きすることを覚悟した。


「ということは、生徒会としても仮装登校には賛成という事ですよね。」


宗一郎は生徒会役員の反応を見て確認する。


「あぁ、職員会議で許可されれば、後は楽しむだけだ!」


「「やったー!」」


沙羅と真凛から喜びが溢れた。


「お前たちも登校時には立ち合うんだぞ!」


「「「「「ラジャー」」」」」


1年メンバーは即座に反応する。


「宗一郎、この内容で要望書案、作成してみるか?」


「はい。」


「今日は、ここまでにして散会にするか!?」


「そうだな。続きは宗一郎次第だ!」


ハロウィンは、宗一郎の要望書作成に掛かってきた。

沙羅は自分が懇願したために宗一郎に仕事を増やしてしまった事を気兼ねしていた。


「宗一郎君、私も手伝うよ!」


「うん、ありがとう。案が出来たらメールするから、感想をお願い!」


「わかった。待ってる!」


一華は(もしかして、シンが良いパス出したのかな?)と二人を見ていた。



◇◆◇


―――――――――――――――――――――――

ハロウィン当日における仮装登校および行事実施に関する要望書


謹啓 清秋の候、先生方におかれましては、日々熱心なご指導を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、現在生徒の間では、異文化交流の一環として、また学校生活のさらなる活性化を目的とし、毎年10月31日のハロウィン当日に仮装をして過ごしたいという声が多く上がっております。

つきましては、生徒一人ひとりが公共のマナーと校則を遵守し、自律的に行動することを前提として、下記の通り「仮装しての登校および授業参加」の許可をいただきたく要望いたします。実施にあたっては、学校の秩序を乱さぬよう、生徒間で以下の厳格なルールを徹底いたします。

謹白

1. 実施の目的

・欧米の伝統行事であるハロウィンの由来や背景を学び、多文化共生への関心を高める。

・共通の話題を通じて、クラスや学年の枠を超えたコミュニケーションを活性化させる。

・決められたルールの中で最大限に楽しむ「自主自律」の精神を実践する。

2. 実施日時

毎年10月31日 終日

3. 仮装に関する遵守事項ルール

当日は、以下の項目を「遵守ルール」として周知・徹底いたします。

①身分の証明:本校の生徒であると判断するため生徒手帳の携帯・提示、校内では名札を着用する。

②露出の制限:過度な露出(水着、下着等)は一切禁止とする。

③特殊メイクの禁止:血糊や傷メイクなどのグロテスクなメイクは禁止とする。

④顔の秘匿禁止:顔が隠れるマスクやお面の着用は禁止とする。

⑤危険物の持ち込み禁止:刃物や武器、その他危険物に見える小道具の持ち込みは一切禁止とする。

⑥歩行・通行の配慮:通行の邪魔になるような衣装は禁止とする。

⑦公序良俗の遵守:公序良俗に反するものや、他校、特定の個人、教員を揶揄・誹謗中傷するような内容は禁止とする。

4. 授業および生活への配慮

・授業の妨げになるような装飾や音の出る小道具は、授業中は速やかに外す、または使用しない。

・更衣が必要な場合は、指定された場所・時間内で行い、トイレの長時間占拠などは行わない。

・放課後には校内点検を実施し、仮装のゴミが残らないよう美化に努める。


以上、生徒の自主性を尊重した行事として、何卒ご検討くださいますようお願い申し上げます。

―――――――――――――――――――――――


「以上ですが、どうでしょうか?」


宗一郎が要望書をシンに向けて差し出してきた。


「良く出来てるな。非の打ち所がない。」


「どれどれ」


浩輔がシンの手から横取りする。


「このまま提出できるんじゃないか?」


「あぁ、十分だ。修正する箇所は見当たらない。このまま、顧問に提出してみるか!?」


と、その時、生徒会のドアが開け放たれると、顧問の市川先生が入ってきた。


「お前ら、今度は何、企んでいる!?」


「企んでいるなんて、人聞き悪いですよ。」


シンは宗一郎が作成した要望書を市川先生に差し出した。


「1年からの要望です。生徒会としても許可してもらいたく職員会議に掛けてもらえるよう添削するつもりでしたが必要なかったようです。」


「……」


「去年も開催したが、これは毎年、仮装登校する要望か!?」


「そうです。前年のようなコンテスト形式ですと、一部の生徒だけが参加し、衣装も華美にもなります。それに仮装に1位もビリもありません。どんな仮装でも本人が楽しければ良いのです。賞状も副賞も必要ありません。」


シンが仮装登校について一押しする。


「わかった。とりあえず、今年は様子見で開催してもらえるよう職員会議に掛けよう。来年以降は問題が無ければ継続することとする。いいな。」


「はい。よろしくお願いします。」


市川先生は、要望書を手にして生徒会室を出て行った。


「やったー!」


「と、とりあえず、市川先生は賛成してくれたという事ですよね!?」


「まぁ、そのようだな。あの様子なら職員会議は通るだろうから、沙羅、ポスター作成できるな!?」


「はい。…というか、既にほとんど出来上がってます。」


「日時、仮装ルールも追記して完成させてくれ。」


「それにしても、早いわね。」


「宗一郎君の原稿を待ってる間、私も出来ることをと思ってポスター作成してたので……。」


「あら、いいコンビね!」


理那の呟きに、宗一郎と沙羅は少し照れくさそうに視線を交わした。

そんな二人を見ながら、宗一郎と沙羅の仲が一歩前進したようで、湊の心中は穏やかじゃなかった。



◇◆◇



先日、ハロウィン当日の仮装登校の要望が通ったと市川先生より連絡を受けた。

今日は沙羅が作成したポスターを掲示予定だが、同時に全校生徒に周知する必要がある。


事前に放送部には連絡してある。昼休みの校内放送、シンの低い声が校内に流れる。


「生徒諸君。お昼休みに失礼する。10月31日のハロウィンでは「仮装登校・授業参加」の許可が下りた!

ただし、これは先生方の信頼の上に成り立つ特例だ。ルールを守るのが本校の生徒であると、行動で示せ。

当日全員で守るべき「7つのルール」を伝える。

一つ目、本校の生徒だと判別できること。生徒手帳は必ず携帯し、当日は名札を着用!

二つ目、水着や下着など、過度な露出は禁止。

三つ目、血糊や傷メイクなど、グロテスクなものは禁止。

四つ目、顔が隠れるマスクやお面は禁止。

五つ目、刃物や危険物に見える小道具は持ち込むな。見つけた場合は没収する。

六つ目、通行の邪魔になるような、大きすぎる衣装はNGだ。

最後、七つ目、他校や先生をからかうようなもの、公序良俗に反するものは厳禁。

以上のルールが守られない場合や、授業の妨げになると判断された場合は、その場で中止、あるいは来年以降の実施ができなくなる可能性がある。せっかくのチャンスだ。「ルールを守るのが本校の生徒」と言われるような、最高に楽しいハロウィンにするぞ!

詳しい内容は、後ほど各クラスに配布するプリントや掲示物でも確認してくれ。以上だ!」


シンは校内放送を終え、生徒会室に戻ってきた。


「お疲れ様!」


一華がシンに声を掛ける。


「あぁ、お腹すいた。」


一華達はシンが生徒会室に戻ってくるまでお弁当を食べずに待っていた。


「待っててくれたのか!?」


「うん、一人で食べるの寂しいでしょ。」


「ありがとう。食べよう!」


帰りのホームルームでプリントが配布され、掲示板には沙羅が作成したハロウィンのポスターが貼られていた。



◇◆◇



ハロウィン当日。生徒会メンバーはいつもの時間より30分ほど早く登校してきた。


一華の衣装チェンジの魔力でお揃いのパステルカラーのファンタジー風の漢服で仮装した一華とシン。

一華は斉胸衫裙で、胸下から広がる長いスカートが優雅だ。一方、シンは交差襟のトップスにワイドパンツ、羽織のセットだ。剣を持たせれば立派な戦士に見える。


登校時は流石に恥ずかしいので上にコートを着て来た。

教室に着いて、コートを脱ぎ、羽織を羽織って完成だ。


登校時間前には校門前に生徒会メンバーが集まってきた。


「一華せんぱ~い。きれ~い!」


いつもの調子の真凛の声が晴れ渡る快晴の空に響き渡った。


「コンテストじゃなくても全然良かったです。写真撮ってください。」


「こっち、こっち、この木の下で、沙羅ちゃん撮ってー」


沙羅は真凛のスマホを受け取り、連写する。


「今度は、生徒会長も一緒に。」


何故か、シンと一華を中心に写真撮影が始まってしまった。


その内、生徒たちが登校してきた。吸血鬼やアニメキャラに仮装した生徒が生徒手帳を片手に校門をくぐって行く。制服登校の生徒は、そのまま教室に入る者、更衣のため、体育館の更衣室に入って行く者、いろいろだ。

凶器になるものを持っていないか、全員の仮装姿に目を配る。


中には、シンとツーショットを撮ろうと、近づいてくる女子生徒達もいた。


朝の校門チェックでは特に注意することもなく、仮装ルールを守っているように見えた。

全校生徒が登校してくると校門が閉じられ、生徒会メンバーも各教室へと戻って行った。


教室に入ると授業が始まる。なかには仮装している先生もいる。仮装していてもいつも通りの授業風景に戻る。


が、休み時間、特にお昼休みになると、撮影会の始まりだ。

クラスメイト同士だけでなく、他のクラスや上級生や下級生など、いろんな所で撮影会が始まった。


もちろん、シンと一華を目当てに生徒会室に駆け込んでくるものもいる。シンも抵抗することなく、一華を守りながら、連れ出され、撮影会が始まる。

午後の開始チャイムが鳴りだすと、一目散に教室に戻っていく。


放課後、生徒会メンバーは、静かになった校舎を回って点検する。


「ゴミ一つ落ちてないな。大成功と言っていいだろう!」


シンの言葉に宗一郎と沙羅が顔を見合わせて微笑んだ。


「来年もまた、みんなで仮装できるね!」


一華の言葉で「ハロウィン」は、完璧なエンディングを迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ