第114話 文化祭2
文化祭当日。体育祭が終わった翌日からは、文化祭の準備に大忙しだったが、生徒会メンバーは管理監督という名目で全教室を回ることにした。
最初に訪れた1年A組の教室。一華を見つけるなり真凛の目はハートマークになり、駆け寄ってきた。
「一華せんぱ~い♡ 待ってました!」
「ここ、真凛ちゃんの教室なんだ。」
「はい。」
真凛は一華だけしか眼中に入ってないようだが、周りの生徒はシンを見つめている。
「何味にしますか?」
「シン、何味食べたい?」
「コーヒー味あるか?」
「あります。」
シンがコーヒー味を注文すると、一華が割りばしを受け取った。
真凛がコーヒー味の飴を綿菓子製造機に入れ、一華は出て来た綿菓子をくるくると割りばしに巻き付けて行く。
「一華先輩、お上手ですね!」
感心する真凛に、完成した綿菓子を一華とシンは摘まんで口に入れながら、練習したか聞く。
「真凛ちゃん達は試してないの?」
「はい。していません。」
「一度は試しておいた方がいいよ。」
浩輔が割って入る。
「去年、俺たちが試そうとしたら、クラス全員が自分たちもって並んだもんだぞ。」
「そうそう、シン君の列だけ、女子全員並んでたけどね。」
理那も綿菓子片手に割って入った。
「そうなんですね。一華先輩は接客しなかったんですね。」
「うん、そうだね。シンが全部してくれたから。」
真凛は両手を胸の前でお祈りするような指を交互に絡ませて
「良かったー。お願いがあります。今からお試ししたいので代わりに接客してくれませんか?」
「ん? いいけど、巻くのは自分だよ!?」
「飴入れて、割りばしを渡してくれるだけでいいです。」
「何味にするの?」
「先輩の今食べたい飴でお願いします。」
「えっ、私が食べたい味でいいの!?」
「はい」
一華は飴が入っている袋からオレンジ味の飴を持って来た。
「オレンジ味の飴入れるよ。はい、割りばし。」
真凛に割りばしを渡し、飴を綿菓子製造機に入れる。
綿菓子が出てくると、一華がやったように割りばしに巻き付けて行く真凛。
真凛は出来上がった綿菓子を一華に向けて「あ~ん」と口を開けて待っている。
「えっ? あー、はいはい」
一華は夏祭りで真凛の言っていたことを思い出し、オレンジ味の綿菓子を摘まんで、真凛の口まで運ぶ。
真凛は一華の手から差し出された綿菓子にかぶりついた。
「う~ん♡ 美味しいですー♡」
幸せそうに頬張る真凛を見て、シンは(俺も食べさせてもらいたかった……)と喉まで出かかった言葉を押しとどめた。
「真凛、満足したか?」
「はい。夢が叶いました。」
「そんな、大げさな……。」
「次、行くぞ。」
1年B組へと移動していく。宗一郎の教室だ。
「ここは、ゲームだったな……。ん? 輪投げとお魚釣りとお菓子釣りか!?」
「俺達と同じだなぁ……。」
「はい。同じ道具を使わせていただきました。」
宗一郎が説明する。
「道具があるなんて良く知ってたな!?」
「担任が教えてくれました。去年、輪投げゲームとお菓子釣りゲームをしたことがあると。」
「最初は釣り竿をチラシで作ろうとしたんだけど、お魚釣りゲームを見つけてね、で、釣り竿欲しさにゲームいっぱい買って。」
「そうそう、お菓子もいっぱい買って試したよね。」
理那と真由が去年、一華とシンの部屋で試したことを思い出していた。
「やっていきますか?」
「俺はしない。一華やるか?」
「ううん、私もいい。」
「次は1年C組だね。」
1年C組の教室はかわいいイラストがいっぱいだ。
「いらっしゃいませ~!」
沙羅が店員役で元気に接客している。
「沙羅ちゃん、かわいいイラストがいっぱいだね。」
「ありがとうございます。先輩達、どれにしますか?」
「シン、どれにする?」
一華とシン、他の生徒会メンバーも一緒に、沙羅が描いたポップを見る。
「ストロベリーチーズケーキに、ラムネ味、クッキー&クリームにハチミツ風味だって。」
「私、クッキー&クリーム。シンは?」
「俺は、ラムネ味がいいな。」
理那はストロベリーチーズケーキ、真由はハチミツ風味、浩輔と直哉はシンと同じラムネ味をチョイスした。
6人とも、アイスクリームを受け取り、蓋を開けると、小さな粒のアイスがいっぱい入っている。初めて見るアイスだった。
「「「かわいいー!」」」
「うーん、冷たくて美味しい!」
「いつものアイスと全く違うな!?」
「ね。シンのちょっとちょうだい!」
一華はシンが差し出したカップからカラフルな色のラムネ味アイスを一掬いし、口に入れる。
「うわっ、口の中で弾けるよ! 面白~い、これも美味しいね!」
代わりに一華はシンに向けて自分のクッキー&クリームのアイスを差し出す。
シンは一掬いし、口に入れる。
「知ってる味なのに食感が違うだけで脳が騙されるな!」
感心するシン。
「理那と真由も浩輔君と直哉君からもらって食べてみて!」
浩輔と直哉は理那と真由に向けて、カラフル色のラムネ味アイスのカップを差し出す。
一掬いした理那と真由は口に入れた。
「うわっ、ほんと口の中で弾けて美味しい。面白いね!」
「でしょ。」
理那と真由は、自分のアイスのカップを浩輔と直哉に向けて差し出した。
浩輔と直哉は一掬いして口に入れる。
「後口サッパリで美味いな!」
「沙羅、ドライアイスの取り扱いには十分に注意しろよ!」
シンは管理監督という生徒会としての役割を全うする。
「はい。毎年継続できるよう、十分注意するようみんなにも言っておきます。」
「来年も食べたいから、よろしくね。」
一華とシン達6人は1年D組の教室に向かうが……お化け屋敷だ。
「私は入らないからね。」
「あぁ、俺たちは入らないから、しっかり見てきてくれ。」
一華が入らいないと宣言していたため、シンも管理監督を浩輔達4人に任した。
「あぁ、行ってくる。」
浩輔達4人がお化け屋敷に入って行く。
中では「キャー」「あははは」といろんな声が漏れ聞こえてくる。
中にいた湊が外で待っている一華とシンの傍に寄ってきた。
「湊は出てきていいのか?」
「はい。驚かす役ではないので大丈夫です。」
「客には触れてないな!?」
「はい。手は出さずに、いろんな仕掛けを用意しています。ここでは口にできませんので、是非とも入って欲しかったのですが……一華先輩、苦手ですか?」
「去年、大丈夫って言われて入ったんだけど、やっぱり怖かったから……。」
3人で話していると浩輔と理那が反対側のドアから出て来た。
「どうだった?」
「楽しかったよ。去年みたいに客に触れるような不適切な箇所は無かったわよ。」
「問題ないということか!?」
「そうだ、特に問題は見られなかったな。」
遅れて直哉と真由も出て来た。
「これは楽しいな。怖いというより、次はどうやって驚かしてくるか楽しみながら進んでいけるぞ。」
「はい。仕掛けには自信があります。」
湊は胸を張って答える。
「一華も大丈夫と思うけど……?」
「ううん、それでもダメ! 大丈夫、いい、次行こう!」
一華としてはいくら友達が楽しかったと勧められても、お化け屋敷で感じるのは人それぞれだと思い、きっぱりと拒否した。
1年最後E組だ。廊下にはソースの匂いがぷんぷんしている。
海斗が焼きそばを焼いていた。
「流石に、焼きそばは食べられないな!」
「時間的にお昼にはまだ早いしね! 後からまた来ようよ!」
「そうだな。火は使ってないから、大丈夫だと思うけど、熱傷には注意しろよ。」
1年は特に問題なし。
次は2年A組、浩輔と理那の教室では射的が行われている。
「生徒会長、待っていたぞ!」
そこには宿敵?である3年男子達が待ち構えていた。
「どうして3年がここで待っているんですか?」
「対決するぞ!」
「何の対決ですか? 射的ですか?」
「あぁ、何発で打ち落とせるか対決だ!」
「先輩、止めた方がいいですよ。また負けますよ。」
浩輔は呆れ、3年男子に対決をやめさせようとする。
「いや、これで最後だ!」
「仕方ないですね。では先輩からどうぞ。」
3年男子は射的銃を構えて、目的の物に向かって打つ。「パン」……が、かすりもしない。
その横でシンが射的銃を構えて、目的の物に向かって打った。
「パン」
シンの銃は正確に標的に向かって弾が放たれた。目的の物は棚から落ちて行く。
打ち落とされた目的の物がシンの手に渡された。シンは一華へのプレゼントとして『低反発おもちゃ』の小さな猫を手渡した。
「かわいいー」
「お前、射的も得意なのか?」
「俺に不得手なものはありません。対決するだけ時間の無駄です。」
生徒会メンバーは2年B組、一華とシン、直哉の教室へと向かった。フォトスポットだ。
「理那と浩輔君、オブジェに入って。」
一華は理那からスマホを受け取ると、二人にハートのオブジェの後ろに回るよう指示すると「パシャッパシャッパシャッパシャッ」と連写していく。
「次は真由と直哉君、入って」
真由からスマホを受け取ると、「パシャッパシャッパシャッパシャッ」と連写する。
「今度は一華とシン君。」
理那が一華からスマホを受け取ると「パシャッパシャッパシャッパシャッ」と連写していく。
途中、いたずら心が働いた一華は、シンの背中に手を回し反対側の脇腹をくすぐった。
「おっ、うっ、な、何をする……!」
一華は理那からスマホを受け取ると撮影された画像を確認する。
「ははは。見てみて!」
一華はくすぐられた瞬間の画像をシンに見せる。
身をよじり目元が緩んでいる。
「一華、せっかくのツーショットなのに、なんでくすぐったりしたの?」
「絶対、硬い表情で写ると思って、見返したとき、面白いほうが楽しいじゃない!?」
「確かに、テーマパークのライドショットでもシン君だけ表情、崩れてなかったもんね。」
「でしょ。」
「でも、一華だけだよ、ハートのオブジェでくすぐったのって。」
「ははは、シンは笑った顔の方がいいでしょ!」
「つ、次行くぞ。」
シンは顔を赤くしながら一華の手を引き、2年C組の教室へと向かった。
真由のクラスはクレープ屋だが、その場では製造せず個包装された市販品の冷凍クレープを購入して販売している。
「私はイチゴにする。シンは?」
「俺はバナナだな。」
二人はアイスクレープを受け取り、かぶりつく。かなりの大きさがある。
「半分こしても、かなりの食べがいがあるな!」
「半分こはやめろよ。」
浩輔は釘を刺す。
「えーっ? さりげなく入れ替えれば分からないと思うけど……だめ?」
一華は「あ~ん」はしないと思っていたが、入れ替える半分こは問題ないと思っていたのだが……。
「いろんな味を試すのも管理監督だ。交換することに問題はない!」
シンは堂々と半分こすることを正当化する。
「だよね。良かった。」
「さりげなくイチャつくな!」
「えーっ、浩輔君も理那と交換すればぁ?」
「お、おぅ……。」
食べながら次の教室へ向かったが、2年D組、E組では体育館でのパフォーマンスを予定しているため、閉じられている。
「次は3年A組か……。」
シンはため息交じりに呟いた。
「3年の教室行くの、いや?」
「あぁ、何かと対決させられるからな。」
「行くの止める?」
「そうもいかないだろ。3年だけ省くとなると、余計後から何を言われるか……。」
「3年A組はカジノだったか?」
「あぁ、ゲーム性を重視しているかの確認だな。」
シンはカジノを希望してきた3年A組に対して、ゲーム性を重視させるよう注意していた。
(なんか、初めてまともな生徒会としての管理監督業務に取り掛かった気がする。)
入り口でチップを貰うと、ポーカー、ルーレットに別れて賭ける真似をする。
最後手元に残ったチップ数で参加賞のお菓子を選ぶように変更していた。
「特に問題はないな。次、行くぞ!」
「生徒会長、やって行くだろ!」
3年男子が教室を出ようとするシンに声を掛けて来た。
「しませんよ。問題ないようなので退出します。このまま健全なゲーム重視でお願いします。」
「あぁ、わかってるよ。」
次は3年B組だ。ここではババ抜きが行われている。
「最弱王決定戦だ!」
負ければ、いつまでも抜け出せない。次のメンバーと対戦する。勝つことが出来れば抜け出せるという対戦方法だ。
「生徒会長、やって行くだろ!」
「やりませんよ。俺がやっても一抜けするだけですから。特に問題はないようなので。次、行くぞ!」
シンは3年には隙を見せず、淡々と管理監督業務を遂行していく。
次は3年C組だ。ここでは謎解きゲームだ。
黒板や教室に立てられた板には、大きな紙にクイズが書かれて貼られている。
謎を解きながら周遊し、最後の答えにたどり着けば教室から出られるというゲームだ。
「ここも問題ないな。次行くぞ。」
「なんか、3年生ってゲームが多くない?」
「あぁ、たぶん、シンと対決したかったんじゃないのか?」
「でも、謎解きゲームはかなり時間を費やしたんじゃ? 問題作るの大変だよね。」
「受験勉強もせずに、何やってんだか……。」
次は3年D組、たこ焼き屋だ。
「もうそろそろ、お昼の時間だから、食べたくなるね。」
「どうする? 買ってく?」
「海斗君の焼きそばもあるよね。」
「両方買って、お昼にするか!?」
「「「賛成!」」」
女子3人は即座に反応した。
「海斗君に今から作ってもらうようメッセージ送るね。1人1個でいい?」
「あぁ。」
一華は海斗宛てにメッセージを送った。
ピコン♪
海斗からメッセージが返ってきた。
「了解しました。6個用意します。」
「たこ焼きは半分こでいいよね。」
「あぁ、3個だな。」
たこ焼き3個が出来上がるまで、その場で待っている一華とシン。浩輔達4人は焼きそばを受け取りに向かうことにした。
「生徒会室で合流だな。」
「あぁ。」
生徒会室で合流した6人は、たこ焼きを半分こしながら食べ、焼きそばも完食した。
「全教室回るのは疲れるな。」
「午後からはゆっくり見るようなものばかりだよね。」
視聴覚室では3年E組によるプロジェクションマッピング、体育館では2年D組の演劇、E組のダンスパフォーマンスが控えている。準備中には時間つぶしに漫才やコントも行われる。最後は軽音楽部によるバンド演奏だ。
今日は生徒会役員として最後まで留まる必要があり、まだ、長い1日の半分も終わってない。
「特に注意すべきことはないだろ。後は無事に終わるのを待つだけだな。」
生徒会室でゆっくりと休憩した6人は、午後の管理監督業務目的として視察に行く。
ゆっくりと鑑賞するのみで特に注視すべきところも無かった。
文化祭の視察が終わり教室に戻ると、片付けが始まっていた。オブジェをとりあえず外に出して、机や椅子を元通りに並べて行く。
急いで片づけて、帰りのホームルームが終わった生徒たちは、後夜祭の為、体育館に再度集まって行く。
後夜祭が遅くまで続き、最後の曲が終わると、文化祭が終了する。
何事もなく、最後まで完遂することが出来て、生徒会メンバーは校舎を後にした。




