第47話 シモンとナーシャ
「じゃあ、改めまして。僕はシュン、冒険者で、アタッカーです。隣にいるのは特級魔法使いのテオドラ。で、そこで飲んだくれてるのが花の妖精でミレイユ」
なんだかダメそうな雰囲気を壊すために、咳払いをして切り出した。
「シモンさんは、名前だけお聞きしましたけど、自己紹介していただいても?」
「、、、ああ」
「こっちは、ナーシャのお兄ちゃんよ!」
シモンさんが口を開こうとした瞬間に、隣の残念な絶世の美女が口を開いた。
「えぇ、名前はお聞きしました。ナーシャさんも一人称でわかりました」
「そう?お兄ちゃんは最強なんだから!」
「、、、ナーシャ」
「ん…。そうね。お兄ちゃんは、世界最強の矛として異名を持つわ!両手剣の聖戦士シモンよ。聞いたことあるでしょ?」
ごめん、知らない。
僕の作ったゲームにも居なかった。
プレイヤーの方だと特に偉業を遂げていないと把握できないし。
「そうですか、ごめんなさい。田舎の村出身なので存じていません」
「そうよ!シュンは田舎っぺだから!大目に見てあげて!」
ケタケタ笑うミレイユ。無視しておこう。
「そうなの?よかったわね!お兄ちゃんのすぐそばで伝説が見られるわ!」
「そうですか、ありがとうございます」
「、、、ナーシャ。俺はそんな大層な存在ではない」
「ううん!お兄ちゃんは最強なんだもん!」
シモンの腕に絡みつく重度ブラコンな絶世の美女。
「あの、それでナーシャさんは?」
「ナーシャ?そうね。ナーシャは戦姫巫女って呼ばれてる」
「姫?」
姫というキーワードに僕の怪訝な表情が露骨に出てしまう。
姫巫女?姫騎士とかじゃなく?とりあえず姫付けとけ的な?というかこの世界には9つの国しかないから、どこかの国のお姫様ってこと?
「うん。そう。ナーシャは戦姫巫女よ」
「姫ってことはどこかの国のお姫様ってこと?」
「ううん。違うよ。戦姫巫女は、戦姫を祀る巫女だよ」
「戦姫を祀る巫女?ごめん、なに?その戦姫?神様とか?」
「うーんとね。戦姫は、ナーシャたちの国の戦の神様だよ。ナーシャはその神様の巫女」
「へー。神様か…。それでシモンさん。先ほどの答えですが。妹さんをお連れされているってことはパーティを組んで行動していただけるってことでいいんでしょうか?」
「、、、どうだ?ナーシャ」
「ううん。ナーシャはお兄ちゃんがよかったらそれでいい」
「、、、そうか」
シモンはナーシャに優しく微笑むと、僕をまっすぐ見据える。
「では、シュン。、、、妹ともどもよろしく頼む」
「本当ですか?かなり弱小なので、むしろこちらの方がお世話になる方ですよ」
「ああ、、、ナ-シャ、、、」
「うん!あのね、ナーシャはシュンちゃんと同じように神託を受けたんだ!」
「神託?」
いきなりシュンちゃんは大概なれなれしいが、神託という言葉の方に引っかかった。
「うん。さっき話したナーシャが祀ってる神様からなんだけどね」
「そうそう、戦の神様だっけ?テオドラ聞いたことある?ミレイユもどう?」
「うーん。初めて聞いたかな。戦の神さ・・・」
話してる最中、突然、テオドラの首が揺れて僕にもたれかかってきた。
寝てる・・・。
いつもの眠り病だった。
「ごめん。テオドラ。後で部屋に運ぶから、少しだけこのままでもいいかな?」
「、、、。寝てるのか?」
「ええ。テオドラは突然、眠ってしまうようです。呪いとかでもないみたいですが」
「そうか、、、」
「すみません。話しの腰を折ってしまって。それで戦の神様の神託でしたっけ?」
「うん。ナーシャは初めて神託を受けたんだ」
ナーシャはわざとらしくコホンと咳をし続ける。
「神に見初められし妖精を使役する人ならざる人を探せ。共に旅をせよ」
ふざけてんのかな?ってくらい、一段高いロリ声と共に僕を指差すナーシャ。
「って。シュンくんって人族じゃないの?」
「違いますよ!見ての通り人族の子です!」
「だよね、ナーシャから見ても同じ人だって思うんだけどね」
「え?じゃあ人違いの可能性ってなくないですか?」
「、、、それはない」
「そうなんですか?」
「ああ、、、、。俺の、、直感だ」
「直感ですか・・・」
「お兄ちゃんの直感って当たるの!すごいでしょ」
「、、、シュンが、人ならざる人かどうかは知らん。しかしシュンに間違いない」
「そうですか。多少引っかかりますが、ご一緒に戦っていただけのであれば助かります」
僕は二人を交互に見やる。
同じような背格好で、美男美女の二人組。
ルネサンス期の絵画から飛び出してきたような二人。
実に絵になる二人だ。
超絶美形であらゆる女性を苦も無く手に入れそうな美貌と肉体美を持つのに、重度コミュ障っぽい兄シモン。
超絶美形であらゆるわがままを許されてしまう美貌とプロポーションを持つのに顔に見合わないロリ声で重度のブラコンである妹ナーシャ。
マイナス要素がなければ、僕は話すこともなく遠巻きに見かけて居ただけかもしれない。
「、、、。俺は両手剣でアタッカーだ。ナーシャはハルバードを持ってはいるが基本的に守りに特化させている」
「守りはナーシャに任せて!」
「僕は召喚士ですが、基本的にナイフを使ったアタッカーです。テオドラは回復魔法を使えます。ミレイユは」
「アタシは無敵よ!」
「ごめん、ミレイユ。それじゃ紹介にならないから」
「なによ、シュンのくせに偉そうに!アタシの魅力に気づいたファン(神様)がいるのよ?そりゃもうアタシって無敵じゃん!」
「すごい!お兄ちゃん聞いた?この妖精さん、無敵なんだって!よろしくね!えと・・」
「ミレイユよ!」
「うん、そうだった、よろしくねミレイユ!」
ミレイユの小さな手に、ナーシャは手を出して、小さな握手を交わした。
テオドラは、僕の肩にしだれかかるように眠ったまま。
僕の肩に乗せた頭はグラグラ揺れているけど、崩れ落ちないようにテオドラの腰に手を回している。
そんな僕とテオドラの姿は、きっとはたから見たら、仲のよい姉弟に見えるのかもしれないな。




