買い出しの日
砂糖菓子を食べながら、二人は街の中を進んでいく。
途中でふとクレアが足を止め、言った。
「ねぇ、ししょー。これきれいだよ」
クレアが指差したのは、宝石をあしらった髪飾りだった。綺麗にカットされた紫水晶が、日の光に反射して、きらきらと光る。
「お目が高いねぇ嬢ちゃん。今なら安くしとくよ」
ひげを生やしたいかにもな商人が、身を乗り出して勧めてくる。
「だってさ。ししょー」
「いらないわね」
マホミルは冷たくあしらうようにして言った。
「姉妹でおそろいってのもどうだい? そっちのねぇちゃんも似合うと思うよ」
「違います弟子です」
言われた即座に訂正した。マホミルは商人の前から去った。
全く、なんなのよ。どうしたら姉妹に間違われるのか。確かに、髪と瞳の色は一致してはいるし、年端もいかにもだが、それでも間違えるとは、到底思えなかった。私の妹はこの世でたった一人だけだ。
マホミルはまた調味料を探し始める。調味料を売っている商人は中々見つからない。歩きながらきょろきょろと左右を見回していると、手を繋いだ親子が目に入った。舌っ足らずな口調でしゃべり倒す少女に、母親は穏やかな表情でこくりこくりと頷いている。少女の年端は、丁度クレアと同じぐらいだ。懐かしいな、と思うと同時に、とある思いがこみ上げてくる。
——私も手を繋いだほうが良いのだろうか。
だがその思いは一瞬にして打ち消された。クレアとは師弟であって、親子でも姉妹でもないのだ。どうせいつか捨てることになるのに、愛想抱いてどうするんだ。
二人とも砂糖菓子を食べ終わったところで、ようやく目的の物を見つけた。調味料を売っている商人に話しかけ、マホミルは交渉を始める。最初に提示された金額が、相場のおよそ2倍だったので、いかに自分が市場を知り尽くしているか、教えてやった。こっちだって店主やってんだ、物の相場など流石に多少なりとも把握している。子供だからって舐めやがって。最終的になんとか相場より安値で買うことができた。
目的は果たせた。帰路へと向かった。
その後に特に大した出来事や事件が起こることもなく、家にたどり着いた。だが少し、些細なことではあるが、そこそこ面白い事があった。
帰りがけに小さなレストランがあった。今どきの女学生って感じの女が3人、外の席でしゃべっていた。
「信じられないよねー、26歳なんだって!」
「あの外見で、それはないよねー」
よくある誰かの彼氏のことでも話してるのかと思ったら、
「アナゴさんが26歳とか、ありえなくない?!」
アナゴさんの話題だった。




