イアデル、里帰りするⅵ
「んーけど、これだけの情報じゃ本人だって確信しきれないよねぇ…」
そう言いながら「ん〜」と考える素振りを見せるエラー2だったが、やがて開き直り、何かを思いついたような仕草をした思うと、片手を空に大きく振り上げて言った。
「よし!ゼロの所に聞きに行こう!!」
「というワケで来たよ〜」
《用がないなら帰れ》
エラー2のほうに少しも目線を向けずに、冷たくあしらうようにしてゼロは言った。
エラー2の予想通り丁度ゼロは書斎にいて、なんだかよくわからない小難しい本を読んでいた。エラー2がゼロの方をちらりとのぞき込むが、頭が拒絶反応をおこしすぐに読むことを諦めた。
このままでは、自分が何を話しかけても全く相手にされないだろう。そう思ったのか、エラー2は話題を変えた。ゼロが反応しそうな、そんな何か。
「イアデルがさぁ、パチーカについて知りたいって」
《なんだと?》
ゼロはさっきまで座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、机を手で押しつけ、目をみはる。その言葉と瞳には、微量の、しかしはっきりとした、怨恨がこぼれ出ているように思えた。
エラー2は心の中ニタリと笑い、それに続けて言った。
「イアデルがこの間、封印解けたばっかりなのにケーキ泥棒の冤罪をかけられて、何もしてないのにボッコボコにされちゃったんだって。聞いてみたら、パチーカと特徴が完全一致。同一人物じゃないかって、今調べてるんだけど、見た目に確証が持てなくてね」
莞爾とした少し怪しい笑みを浮かべ、エラー2はそう言うと、一つのことを提案した。
「というワケでさぁ… ゼロ、パチーカの絵描いてみて」
ゼロは一瞬顔を歪ませるが、すぐに机の端に置いてあったペンと紙に手を伸ばし、何かを描き始めた。迷いのない動きでペンを走らせ、描いてゆく。
《そうだな…》
しばらく……といっても数十秒ほどだが待っていると、不意にペンの動きが止まるのがわかった。
ゼロは紙の上の方を片手で持ち、描いた作品をエラー2に見せた。
それは、なにか人とおもわしきものに、複数の刃物が刺さり血が噴き出ている絵だった。
画力もたいがいだった。ほぼ棒人間と言ってもいいほどだった。たぶん小学生でも描けると思う。
《大体こんな感じだ》
「こっわ……」
エラー2と、そしていつの間にいたのかイアデルは、二人で手にとりその絵を再び近くで見た。イアデルはゲラゲラと笑い、エラー2は頭にはてなを浮かべていた。
「おまっw、上手い下手以前に己の欲望詰めすぎだろwww」
「これ人なの?」
ゼロは遠目で二人のことを眺め《よく描けているのに》と不満を呟いていた。
そんなゼロの絵に呆れてか、イアデルは自ずと何かを描き始めた。
「いいか?パチーカっていうのは…」
イアデルは自信満々にエラー2とゼロに向かって絵を差し出した。
「こうだ!」
良いように言えば個性的。悪いように言えば、正直言ってヘタだった。これこそ本当の棒人間だった。何か長い棒状の物(恐らく話の言い分からして野球バット)を手に持っていて、何故か周りに「しゃばばばば」といった謎の擬音が書いてあった。目は両目とも斜めの三角形の形状をしており、見るからに悪そうな顔のパーツをした。それは幼稚園児がお絵描きの時間に描いたラクガキを彷彿とさせた。どんな優秀なスパイであっても、これで人を特定することは流石に、否、どう考えても不可能であろう。そしてその棒人間に向かって矢印が引いてあり、その先には「こいつ!!」と書いてあった。それ知ってるこの矢印いらない。
「お前も大概じゃないか」
そんなイアデルの、見たものを悪い意味で圧倒するほどの壊滅的な画力の絵を見て、ゼロは呆れて短いため息をついた。
《はぁ、仕方ない。行くぞ》
「あいよ」
突然ゼロは席を立ち、それに続いてイアデルも席を立った。ゼロは相変わらず不機嫌そうだし、イアデルに関してはなんだか楽しそうだし、一体何をしに行くのだろうか。
《エラー2、お前は此処で待ってろ》
そう言い残して、二人は去っていった。エラー2は疑問に思いつつも、「待ってろ」とのことだったので素直に待つことにした。
1時間もせずに二人は帰ってきた。そしてゼロは向こうに見える星をピッと指さし、何食わぬ顔で言った。
《ある程度 芸術が発展した星があった。そして既に制圧済みだ。絵を描かせに行くぞ》
「えぇ…」
おまけ
イアデル「ももたろうって10回言ってみろ」
エラー2「ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう、ももたろう」
イアデル「亀をいじめたのは?」
エラー2「マリオ」




