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異世界コミュ障戦記~スマホでググって大賢者~  作者: あけちともあき
第七章 海洋王国イリアーノ編
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第五十七話 テレフォンコール・フロム・ガーデン

 俺がこの世界に来てから、二ヶ月ほどが過ぎた。

 実に一ヶ月間を、このガルム帝国で過ごした計算になる。

 ここは蒸し暑い国だったが、飯が美味く、腹を出して寝ても風邪を引かないのですごしやすい国だった。

 風土病の類もあったのだが、マリーがいるとそれが全く恐ろしく無い。

 ということで、俺は嫁達と、ちょこちょこ体を鍛えながら暮らしているわけである。

 しかし、とにかくやる事が無い。

 ネットくらいしかない。


「セブン様は、ご両親はご健在なんですか?」


 そんな時だ。

 いつもの運動が終わって、軽く汗をかいた状態。さて水浴びでもするかと思ったら、アイナが突然そんな事を聞いてきた。


「そりゃいるけど、どうして?」

「連絡とか取り合わないのかなと思いまして」

「いや、だって連絡とは言っても、別の世界だからなあ。ネットは繋がるけど……」


 ネットが繋がる……?

 あれ、それって電話が通じてもおかしくないんじゃないか?


 俺は実家暮らしであった。

 実家暮らしでなければ、正社員でありながらあの悲惨な手取りの仕事で生活などしてはいけなかっただろう。無論、ボーナスなど無かった。

 ということで、俺はある日突然、自宅へ帰る途中にあの世界から消えた事になる。

 恐る恐る電話してみた。


『お客様のおかけに鳴った電話は……』


 やっぱり、電話は通じないか。

 電話の回線が繋がってないものな。インターネット回線は通じているのに……。

 インターネット回線。

 俺は、電話代節約用に入れていた、チョコレイトークというチャットアプリを起動した。

 母親としか電話やチャットをしないものだから、すっかり忘れていた。

 起動して、母に電話をかけてみる。

 ……通じた。


 ドキドキしながらスマホを耳に当てて待つ。

 横で、汗を拭い終わったアイナが、身を伸ばして俺の汗を拭いてくれている。


「お話できそうですね」


 うむ。

 二ヶ月ぶりだ。

 果たして、電話に出たのは、紛う事なきうちの母だった。


『七郎? 七郎なのね!?』

「あ、ああ、うん。俺」

『無事だったの!? 今までどこに行ってたの! 二ヶ月も連絡無しで、いきなり消えて……』

「いや、あのさ、今、海外にいて……なかなか帰れなくてさ」

『海外!? だって、大牧さんとこの倉庫は海外に支社なんて無かったと思うけど……ちょっと、ちょっとお父さーん! 七郎よー! 今海外にいるんだって! え? 転職? あらやだ、七郎、あんたいつ転職してたの?』

「ま、まあ、ぼちぼちと」


 うーん、相変わらずである。

 とりあえず、海外の長期出張ってことで通そう。


『そうなの? でももっと頻繁に電話寄越しなさい? 大牧さん困ってたんだからね。警察に捜索届けだしちゃったわよ。じゃあ、大牧さんには母さんが謝っといてあげるから。ちょっと七郎? 今はどんな仕事してるの。ちゃんとご飯食べてるの?』

「う、うん。今はさ、その、色々揉め事とか、厄介事を解決する手伝いみたいな仕事をしてて」

『あら! 立派な仕事じゃない! でも気をつけなさいよ! 危ない奴とかに、ピストルでズドン! なんて母さん嫌だからね』


 実際はピストルどころではなく、魔術とか悪魔の特殊能力とかでズドン! である。


「ああ、き、気をつけるよ」

「セブン様、私もお母様とお話がしたいです!」

『あら、女の子の声がするわね……。ちょっとまさか七郎!? あんた、恋人が出来たんじゃないの!? あらやだ! ちょっとお父さーん!! 七郎恋人が出来たらしいわよ! あら、待ってお父さん、昼間から飲むの? え、七郎がついに男になった記念? あらやだ、お父さん泣いてるわ。じゃあ、お母さんからも挨拶したいから、彼女さんに代わってくれる?』

「わ、わかった」


 この一ヶ月で、アイナは俺の母国語である日本語も勉強している。

 ことわざなどはまだまだ理解できないが、日常的な会話なら、たどたどしいながらも出来るようになっていた。有能過ぎる。


「コ、コンニチワ」

『こんにちは! 七郎がいつもお世話になってます! 七郎の母でございます! あら、もしかして外人さんなの?』

「ハ、ハイ。七郎さんには、お世話になってマス」

『あらー、日本語上手いわねー! こちらこそ、七郎をよろしくお願いしますね!』

「ハイ、妻として七郎さんを盛り立てていきマス」

『妻!! あらやだ!! ちょっとお父さーん!! 七郎、いつの間にか結婚までしてるみたいよ!! あら、ちょっとお父さん、ビールで咳き込んじゃって! だめよーもう年なんだからゆっくり飲まないと。あらあら、なんだかお父さんが大変みたいだから、今日はここで切るわね。ええ、お名前は』

「アイナ、デス」

『七郎の事、よろしくお願いしますね、アイナさん』

「ハイ、任せてクダサイ!」


 電話が切れた。

 嵐のような人だった。

 大体勝手に納得して勝手に了解して勝手に合点して、完結してしまうのがうちの母であった。

 父親は無口で、感情表現が非常に下手で、いわゆるコミュ障だ。


「いいお母様ですね、セブン……七郎様」

「いやあ、面目ない」


 俺はめちゃめちゃ照れた。

 それに、ちゃんと名前で呼ばれるのが新鮮だ。

 アイナは実は、割と最初から俺の本名の事は気付いていたらしい。

 ジャスティーンが、芸名を名乗ってるのと一緒だと理解していたらしいな。

 実際は俺はチキンなので、名前の修正をお願いできなかっただけなのだが。


 まあ、電話が通じる事が分かってしまった。これからはちょくちょく連絡を入れよう。

 どうせ暇だしな。

 あとは問題は……嫁さんが合計四人いる事をどう説明するか、だな……。

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