第四十八話 初めての夜と聖王国への帰還、これからの傾向と対策について
バカみたいな量のトークンを手に入れてしまって、しかもそれを換金したものだから、俺は一夜にして大金持ちになってしまった。
どれくらい金持ちかと言うと、小国を丸ごと変える程度なのだという。
流石にこの量の大金貨は持ち歩けないので、カジノ側に預かってもらう事にした。
その代わり、魔術のかかったクレジットカードのようなものを受け取る。
これがあれば、あらゆる商店での買い物が可能なのだそうだ。
必要額がカジノの俺用金庫からゲートを通って転移してくるとの事。
便利である。
「やりました、セブン様!! もう一生左団扇ですよ!!」
実に現金な事を言うアイナが俺に抱きついてきた。
この子は最初は打算で俺にくっついてきたので、なんかお互いに情が生まれた今、本来の目的が果たされた事で感慨もひとしおなのだろう。
「湯水のように研究資金を……! いや、まだ何を研究するとか考えて無いんですけど」
「新婚旅行ぉ~」
「そんなことより旦那! あたいと早く!」
そうであった。
お金が非常にたくさん手に入ったので、トークンの一部と交換して、俺は絶倫の湯の水らしき薬を購入した。
これは絶対必要になる。だって四人もいるんだもん。
そしてついに……ニナが我がハーレムに加わる事に。
うううっ、俺は彼女だけは娘のように愛でたかったのだが。女心と言うものは複雑である。
帰還の日取りが早くなってしまったようで、俺達がカジノから出ると、既にラシムの姿があった。
ラシムは目を丸くして、
「金持ちになったのか。大した運の持ち主だなあんたは」
と言った。
俺は気前よく、ラシムにシングルルームを取ってやり、ラスベリア最後の夜と洒落込む事になった。
ということで……クリスの分のお勤めを果たした後で、ぐっと絶倫の湯を一息。
まだ上気した頬のまま、クリスは優しげな目をしてニナをベッドに招く。
さあ、二回戦目だ。
しかも相手はニナだぞ。初めてだぞ。
俺は例の四十八手アプリを起動して教えを仰ぎ、全ての用意を果たした。
アイナとセレーネが万全の用意で待ち構えている。何でお前らも脱いでるんだ。
えっ、一緒に!?
ハハハ、ご冗談でしょう。体が持たないよ。
えっ、えっ、本気なの? うわ、だめだって、ヒャア、うひい、おやめになってええええええ!
「……だ、旦那あ、まだジンジンするよう」
ニナが俺にぴったりくっついて、唇を尖らせている。
なんだか俺へのベタベタ度が上がった。
俺はと言うと腰をやった。なので、治療魔術が使える人間を呼んで直してもらった。
この世界、魔術師と癒し手が別なんだな。なんか専門職らしい綺麗なお姉さんで、偶然この街に逗留していたんだそうだ。
結構なお金が掛かったが俺は今や金持ちである。
気前よく払った。
「ありがとう、お兄さん。私は癒し手のマリー。また縁があったらよろしくね」
「ままま、マリーって言うと、マリー・メイアですか!? 伝説の癒し手の名前なんですけれども……!」
「うふふ、あやかっただけよ。ご覧の通り若輩だもの」
長い黒髪が綺麗なお姉さんは、そう言って去っていった。
うーむ、有能そうなお姉さんだ。我が愛すべきへっぽこ達とは違うなあ。
まあ、そんなこんなで大方のイベントは終わりである。
心配なのは、これ続けてると絶対全員子供出来ちゃうだろ!? という事だけである。
まあ金もあるしなあ。
ラシムを入れて飯を食っていると、このマッチョが提案してきた事がある。
「金があるのはいいんだが、使い続けていると目減りするばかりだろう。有翼の兎で資産運用を代行しているぞ。これで少しずつ資産を増やしていくのはどうだ」
「いいね、それ」
俺は是非ともお願いする事にした。
利子で暮らす。
これぞ小市民の夢である。
こうなると家も欲しくなるが、一地方に居ついてしまうと、体よく使われてしまいそうで抵抗がある。
あー、でも、子供が出来たら一箇所にいたほうがいいだろうし、かと言って聖王国は聖王女様が怖いからやだしなあ。
「それであんた、結局全員に手を出したのか」
「面目ない」
ラシムは面白そうに笑っている。
ともかく、彼の案内でゆったりと馬車で、最初は有翼の兎の拠点のひとつへ向かった。
カジノ側でも書類を作ってもらい、これを有翼の兎で管理。
俺の資産を運用してもらい、新しい流通路を開拓する。
その上で出た上がりの一部を俺の資産に足していくのだ。
ついでに、エドガーに手紙を出した。
俺は随分読み書きが出来るようになっていたが、セレーネに添削してもらうと、赤ペンでのチェックだらけになってしまった。とほほ。
そして、また十日ばかりかけて聖王国へ帰還する。
絶倫の湯はたっぷり買い込んでいたが、みるみる減っていった。
これはいかん。
俺は絶倫の湯で破産するかもしれん。
ある夜の事だ。
俺達はいつもテントを張って街道脇に野営するのだが、隣で眠っていたアイナが口を開いた。
「セブン様、どうなさるおつもりですか? 黒貴族達は、セブン様を利用しようとしています。言いたくはありませんが、勿論、聖王女殿下も……」
「だよなあ……。俺って天邪鬼だから、なんか人のいいなりになるのって嫌なんだよなあ」
勿論、聖王国には世話になっている。
無碍には出来まいというのが人の情だろう。
だがそれはそれだ。俺はカッとなってムカッとなるとそういうのをポイッと裏切るタイプなのだ。
じゃなきゃボッチなんかやってない。
今はなんかちょっと、世の中にムカムカしているところである。
「一回全部捨てて逃げちゃうかあ」
呟くと、どうやらみんな起きていたようだ。
「私はセブン様についていきますよ。研究ならどこでだって出来ますからね」
「はいぃ、私も、セブン様がいるところが、居場所ですからぁ」
「あたいは旦那についてくよ! どこでだって赤ちゃん産めるからな!」
一人だけ気が早いよ!?
「ふむ、それがあんたの選択なら、俺としては従うのもやぶさかじゃないぜ」
なんでラシムまで聞いてるんだよ!!
ってことで、カッとなった俺達。
聖王国への道のりをペイッと途中で乗り換えて、適当な方向へ進む事にした。
そうすると、こう、あるんだなあ、イベントとのエンカウントが。
「おいセブンさん、囲まれたようだぞ」
ラシムが御者台から、緊張に満ちた声を出した。
俺達は早速ピンチだった。
囲まれていた。
よく考えたら、俺達には戦力が無かった。
ラシムが最強だが、この男の筋肉は運搬用らしく、クリスに毛が生えたくらいの強さなのだ。
俺達のパーティは未だへっぽこだったのである。
「あわわわわ、せ、セブン様あ~」
アイナが今にも漏らしそうな顔をしている。
「ひいいい、こ、こんな未開の地で終わるなんてえ……! グレートホーリー図書館の本をパチッてくればよかったあああ」
セレーネ、今パチるって言ったね!?
「あうぅぅぅ、も、も、もうだめですぅぅ」
クリス諦めるの早いよ!!
「ああああああたいは戦うぜ!!」
ニナ男らしい! めちゃくちゃ震えてるけど。
これは冗談抜きでやばいかもしれない。
スマホを照明アプリで明るくし、周囲を照らす。
筋骨隆々の、黒い肌をした男女が大量に俺達を取り囲んでいる。
革の鎧を着たフル装備で、武器はハンマーみたいなのや棍棒、槍。巨大な鹿のような動物にまたがった奴もいる。
これは、終わったか……?
俺は思った。
だがこういうケース、今までにも何度もあったじゃないか。
その都度、俺は危機を乗り越えてきた。
どうやって……?
他力本願に決まっているだろう……!!
俺はツブヤキッターを起動した。
久々の入力だ。
フリックをする指先が震える。
『囲まれてピンチなう』
『うちの女の子たちがみんな漏らしそう』
『俺はもう漏らしたなう』
どうか、パンツを替えるチャンスをくれ。
命あってこその替えパンツであろう。
その時、待望のフォロワーが出現する。
『癒しの姫 マリー・メイアさんがあなたをフォローしました』
この記述……あの、俺の腰を治したお姉さんが、勇者……!?




