第三十九話 第二夫人(!?)の誘惑
ノンストップですよ。第五章からは悪魔がらみのいつものノリなので、その分この章はずっとこんな感じです
随分長いモテ期だ……。
俺は思いながら、熱い湯に浸かった。
しかし、朝に入った滋養の湯と比べると明らかにこの温泉は違う。
体への効き方が全く異なるのだ。
滋養の湯は、これに比べればじんわりと体に染み渡る、優しい感じの温泉だった。
だが、この絶倫の湯の攻撃的な効能はどういったことだろう。
下っ腹にドスンと来るような強烈な効果だ。
これは、体力の落ちているアイナや、お子ちゃまなニナでは少々きつかろう。
湯の熱さもあるが、内包するパワーの強さが、浸かる者へ温度以上の刺激を感じさせるのだ。
「ううう、なんだかじんじん来ますう……」
クリスは目をギュッとつぶって、俺の目の前で胸まで浸かっている。
彼女は元々おっとりした性格だから、攻撃的な絶倫の湯の魔力に過敏に反応してしまうのでは無いか。
あの知的で理論先行派の雄たるセレーネですら、あれほどまでに理性を失ってとんでもないことになるのだ。
一体、このクリスがどんなことになってしまうのか。
興味が無い訳が無い。
元々、クリスは真っ白な肌に金髪碧眼と、うちのメンバーの中でもっとも美少女的要素を持っている。
さらには巨乳……いや、爆乳と呼べるレベルで、出るところはどーんと出て、引っ込むべきところがきちんとそれなりに引っ込んでいる。
柔らかな脂肪の下に筋肉があるから、姿勢だっていい。
いつもちょっと前かがみな姿勢が多いのは、自信の無さのあらわれでしかない。
俺が彼女の事を考えて、賢者になるための一人修行をしなかったというとそれは嘘になるだろう。
多分アイナに近いくらい多い。うむ。
それを考えると、アイナは顔や体型、性格に至るまで、俺の理想系とは全然違うんだが……。
なんであんなに俺にとってしっくり来るんだろうな。
「セブン様あ……アイナさんの事を考えてますね」
「ぎくっ」
口で言ってしまうくらい、俺は驚いた。
まさか表情を読まれた?
「誰だってわかりますぅ。セブン様が考えてるのは、いつもアイナさんのことですからあ……。アイナさんは、セブン様の言いたい事をパッと分かってしまえる凄い人ですう。だから、セブン様がアイナさんを好きなのも当然だと私は思いますう……」
彼女はそこで息をついた。
真っ白な肌に血の気が通って、ピンク色に染まっている。
いつもなら、ふんわりとした雰囲気を纏っているクリスの目が、強い力を帯びた。
「だけど、私にとっても、セブン様にとってのアイナさんと同じくらい、セブン様は特別なんですう!! だから、私は、セブン様しか考えられないんですう!!」
今までの彼女の姿からは信じられないような強い語気だった。
思い当たる節はある。
クリスはダメダメなへっぽこ戦士として俺達のパーティに加わり、あのデスダンジョンに入った。
間違いなく彼女がへっぽこだったからこそ、ダンジョンは彼女を受け入れたのだろう。だが、そんな彼女はスケルトンウォリアーを倒している。
これには俺も一口噛んでいたから、あの事がクリスの中で大きくなっているのかもしれない。
「ダンジョンの、事かい? だけど、あれは、クリスが今まで頑張ってきた積み重ねが……」
「私はあ……あの時まで、自分はダメダメだって思ってたんですう。でもでも、誰もそれを否定してくれなくて、自信はどんどん無くなってえ……。そんな私を助けてくれたのがセブン様なんですう……!! 私はあの時から、自分をダメだって思わないようにって、弱い私が出てきたら、そのたびにセブン様を思い出して……!!」
うわー!
今のはガツンと来た。
俺はこういうのに凄く弱い。
だって俺自身が弱くてダメダメだからだ。もう、流されて逃げ場も無くなって、仕方なく必死になって物事に立ち向かう。
そればっかりだ。
それでも俺も、彼女達が信じてくれる俺だからこそ、俺自身が信じる気になったのだと思う。
俺は彼女達がいたから、ここまでなんとかやってこれているのだ。
……なるほど、俺のパーティーにいる彼女達は、俺の映し身でもあるのだ。
ダメな同士支えあって、俺たちはなんとか一人前……いや、まあ半人前なのだ。
そうなれば、俺はクリスのこの思いから逃げてはいけない。
俺は岩場に腰掛けたアイナを見た。
彼女はお湯に足を付けながら、下唇を噛んで頷いて見せた。
すまんのう……。
ざぶりと、お湯を掻き分けた。
クリスに近づくと、彼女は目を丸くして、次の瞬間には碧眼を潤ませる。
「いいんですかあ」
「お、俺も男なので頑張ります」
「セブン様、私にもちゃんと喋れるようになって来てますう」
クリスの顔は、いつだったかの悲しそうな様子ではない。涙は零れているが笑顔だった。
熱いくらいの湯の中で、俺の体を柔らかな感触が包む。
その感触はお湯の中ではひんやりと感じたが、中に詰まっている気持ちが温泉より熱い事は、よく分かっていた。
「じゃあ、やるか」
「はい」
そういう事になった。
屋外である。
すっかり、夕方から夜になってしまった。
……屋外である。
二度目も屋外だった。
何故普通の体験ができないのだろうか。いや、温泉郷の宿は、どの部屋も割りとオープンで、音を秘めるという機能が無いように思える。
実際、昨夜も致している声なんかが夜に聞こえてきていた。
賢者モードだったので俺は平気だったのだが。
そういえば、クリスがもぞもぞしていた気がする。
さすがにあけっぴろげでやるわけには行かなかったわけだし、こうして割り当てられた浴場で致すのはこう、ごくごく自然な……。
「セブン……様あ……こ、腰が抜けて……立てませぇん……」
まあなー……。
序盤でアイナは真っ赤になって、逃げるように立ち去ってしまった。
絶倫の湯の力というのは凄いもので、もう、コレがアレでナニがドレって感じなのだ。三十路になって、若い頃ほどの元気は無くなった気がしていたが、どうして。
途中でクリスが汲んでいた、温泉のお湯を飲むとこれが元気になる。
結局かなりの回数に及んでしまい、クリスは大変な有様になっている。
いかんいかん。
まだ元気がある程度ある辺り、この温泉は危険だ。
現実世界にあった元気になるED治療薬と一緒だ。これは入る治療薬だ。
俺は洗い場で温泉の湯を汲んで来て、クリスの体を洗い流した。
顔とか胸とか腹とか大事な部分や太もも周りや背中やお尻や。
この温泉は大きなタオルみたいなものがフリーで借りられるので、いつの間にか用意してあったそれでしっかり水気を拭う。
うーむ、アイナのサポートだろう。ナイスだ。
「ううー、セブン様すみませぇん……。私、もっと精進しますう……」
「い、いやいや、明らかに謝るの、俺だから」
俺は彼女の肩を支えながら、部屋へと戻っていった。
帰還した俺を迎えたのは、女子達の妙に赤らんだ顔である。
「お、お帰りなさい。お湯加減どうでした?」
アイナの挙動がわざとらしい。
「こ、こ、これで、共犯ですねっ」
耳まで赤いセレーネは、クリスの顔を見ている。
「せ、セブンの旦那……声、聞こえてたあ……」
マジで!?
三人娘が食事に手をつけずに俺達を待っていたのだが、なるほど、丸聞こえだったようだ。
これは死ぬほど恥ずかしい。
「ふぇぇぇぇ、き、消えてしまいたいですう……!」
今回ばかりはクリスの言葉に同感だった。
そして、運動の後に食べる飯は格別だった。




