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異世界コミュ障戦記~スマホでググって大賢者~  作者: あけちともあき
第二章 傭兵王国ディアスポラ編
20/111

第十八話 ぶらりアラビア散歩~有翼の兎

11/14 13:15 誤字脱字修正、表現をちょびっと足しました。後半、ニナから頭なでなでされるあたり。

 昼飯は鋼の熊でご馳走になった。

 ドンメル氏の落ち込み方はちょっと可哀想になるレベルだった。

 そりゃあもう、虎の子のギルド最強剣士が、復活した古の勇者に子ども扱いされたのである。

 ……古の勇者に子ども扱いだから、別に番狂わせでもなんでもなくねえか?

 ちょっと自分とこの戦士に期待し過ぎたんだろう。

 正直、聖王国のアイオンの動きとか見てると、ハディードレベルではドッペルゲンガーに苦戦するだろうなあ、なんて思う。

 アイオンのおっさんも大概頭おかしい強さなんだな……。


 そうそう、昼飯だ。

 不味かった。

 うん、安定の不味さだ。豆と川魚を煮込んだ奴に、塩と香草で味付けしている。

 この香草が絶妙に微妙なのだ。川魚は本来泥臭いらしいので、その泥臭さをサパッと消す香草、有能なのだが、味がいただけない。

 だがまあ、俺は食事に関してはうるさくない男だ。

 不味いなあ、と思いつつ完食した。無論、不味いなんていう感想を口に出せるほど俺の神経は太くない。


「うへえ、ひでえ味だなあ! まるでどぶの魚を食ってるみたいだ!」


 ニナは凄いな!!


「悪くないとおいらは思うぜ。だってまだ人間の食い物じゃないか。街の外で食料が尽きた後の食事は、こんなもんじゃないぜ?」

「ひえー、あたい、大概アウトドア派だと思ってたけど、エドガーさんと比べると都会派だなあ」


 二人が不味い不味い言うので、サーブしてきた給仕係のマッチョなおじさんは顔をしかめていた。

 なるほど、食事当番も戦士がやるのか……。

 ということで、俺達は日差しが弱まる昼過ぎまで、鋼の熊で時間を潰す事にする。

 この国の日差しは、時間にすると十一時ころに強くなり、十四時頃に弱まる。この三時間はとても暑くなり、その上外出も危険になるので、昼飯を食って昼寝する時間になるのだ。

 その代わり、日が落ちるのが遅い。大体二十時頃に日没するから、十四時から二十時まで、人々は活発に動き回るのである。


 戦士達の集合住宅を見て回る。

 ほとんどが個室で、なかなかみんな良い暮らしをしているように見えた。

 と思ったら、見習いは上の階にある雑魚寝部屋らしい。実力が上がると個室を与えられるのだ。

 個室の広さは四畳半ほどで、組み立て式のベッドとトレーニング器具のようなものが置いてある。

 入ってみたら双尾の猫から呼んだお姉さんと真っ最中で、俺達は慌てて外に出る事になった。

 ドンメルが汗を拭きながら、


「真昼間から励むとはけしからん」


 とか言っていた。ニナが赤くなってもじもじしているのが可愛い。

 そんなこんなしていると時間になり、俺達は次なるギルドの視察に向かう事になった。

 ドンメルは、


「エドガー様、我がギルドへの所属の件、良い返事をお待ちしておりますぞ。セブン殿、先ほどのあの不思議な術はなかなかいいですな。訓練の動きを繰り返し見ることが出来れば、戦士達の連度も上がるというもの」


 男性ホルモン多めのドンメルが、去っていく俺達を見送っていた。

 なんか思ったよりも、裏表がないおっさんだった。

 だが、鋼の熊の男臭さと汗臭さは勘弁だなあ……。


 外には人力車が既に控えている。

 俺達が利用した人力車の兄ちゃんだ。ずっと待っていたのではなく、出てくる時間に合わせてやってきたのだろう。

 有翼の兎というところは密偵なども扱っているから、情報に長けている。

 俺達が出てくるという情報も掴んでいるわけだ。

 そして、次の行き先はそこだ。


 だが、せっかくの街歩き。ずっと車に乗っているのもいかがなものか。

 そんな訳で、俺達は人力車の兄ちゃんを案内役にしつつ、あちこち観光しながら有翼の兎に向かう事になった。

 観光のポイントまでは車で走ってもらい、商店街などはぶらりと歩くのだ。

 俺はここで、俺とみんなのためのサンダルを買い、ニナはキラキラしたアンクレットを買ってニコニコしていた。

 香ばしい匂いが漂ってきたと思ったら、セミの幼虫みたいなのを油で揚げて蜂蜜でまぶした奴だった。

 うへえ、と思ったが、この世界では割とメジャーなおやつらしい。ニナが嬉々として購入。エドガーも齧っては、懐かしい味だ、なんて言っている。


「セブンの旦那も食えよ」


 ニナが食べかけを差し出してきた。

 あっ、これは間接キスだね!!

 もうそれだけでおじさんは張り切ってしまうよ! 俺は躊躇無く食べた。

 うーん、ジューシーだ。見た目は実に悪いが、海老と牡蠣を足した味わいで、甘いながらもやや苦味がある。外側のからりと揚がった皮はサクサクしていて、甘く香ばしい匂いが鼻から抜ける。

 なんだ、美味しいじゃないか。

 この世界で食べた食べ物の中だと、トップスリーに入るぞ。

 サボテンから樹液をすする昆虫の幼生で、七年に一度大量に出てきては羽化して交尾、そして大量に死んでいく生き物らしい。

 その名もナキカゲロウ。泣くのか。もうセミでいいんじゃないのか。

 成虫は成虫で、たくさん取ってざく切りにして掻き揚げにすると旨いらしい。七年に一度の珍味なのだとか。


 ということで、俺とニナでセミフライ(俺命名)を山ほど買って、サクサク食べながら有翼の兎にやってきた。

 お互い食べさせっこするのがまた楽しい。

 ニナはあれか? 自分の食べかけを俺に食わせるのが好きなのか?


「ち、違わい! 一番美味しい頭の部分はあたいが食べてるもん!」

「あー、昔から、好きな相手に腹の部分を食べさせると思いが成就するってのがあったよねえ」


 エドガーが懐かしそうだ。

 ニナは、わーわー叫んで違う違うを連呼している。ほう、ほほーう。


「ようこそいらっしゃいました、エドガー様」


 さて、俺達を出迎えたのはスネク。メガネで細身のおっさんで、非常にやり手っぽいにおいがする。

 有翼の兎の建物は、鋼の熊ほど大きくは無い。建物が密集したところの一角で、入り口は解放されていて広いが、奥はそれほど深くは見えなかった。

 だが、中に入ってみて分かる。

 これは、俺の嫌いな臭いだ!

 いわゆる、お仕事臭がする! お仕事をする事に全身全霊を傾けている連中が発するスメルである。

 一心不乱に書類に向かっている事務員のお姉さん、何かそろばんのような計算機を弾き続けているおじさん、ひたすら書類を裁断している兄ちゃん。

 部屋のあちこちに書類がうず高く積みあがり、羊皮紙ばかりではない、恐らくはパピルスのような紙のにおいが部屋を満たしていた。

 あとはインクの臭いか。

 この空間には、一切の遊びが無かった。


「あああああああああああああああ!!」


 俺は現実世界のトラウマを思い出し、叫びながら飛び出した。

 いやだ! あの空間はだめだ! せっかく命がけだけど仕事しなくていい世界に来たのに、なんでこんな仕事スメルの濃い空間にいなくちゃいけないんだ!

 あんな空間にいられるか! 俺は帰るぞ!


「だ、旦那ー! どうしたのさ! あの空気がいやなのかい? あたいも確かにあれはいけ好かないけど……」

「うう、俺、は、もう、ああいうのは、いやなのだ」


 俺がそれだけ搾り出すと、ニナは背伸びして、俺の頭を撫で撫でした。


「よし、嫌なもんは無理やりやんなくていいからなー。あたいも旦那に付き合ってやるよ!」


 おお、ニナは優しいなあ。俺の中でニナへの好感度が上がったぞ。大体100から120くらいに上がった。上限は100だ。

 ということで、エドガーが終わるまで、俺達は建物の入り口にちょこんと腰掛けて時間を潰したのである。

 そういうわけで有翼の兎の中は見てない!

 今日の仕事は終わり! 帰るよ!!


「セブン、悪魔の気配は分かったかい?」


 アッー!!

 忘れてたわ。思いっきり散策や観光を楽しんでしまっていた。

 俺が悪魔を見つけ出してどうにかしないと、アイナ達はずっと預けっぱなしなのだ。


「まあ、おいらも有翼の兎はシロだと思うなあ。こういうカチカチッとした空気、悪魔は大嫌いなんよ」

『と言うことは……残るは黄金の狐か』

「そうなるね。あそこはまさに伏魔殿だよ。戦士、盗賊、魔術師、癒し手、なんでもいるからね。構成員は世界中に散って活動しているから、世界の情報が常に集まってきてる」


 一番可能性が高いということか。

 とにもかくにも、視察は明日。

 本日は双尾の猫へ帰る事になった。

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