第12話
学校が始まって2週間。
高校生にしてはハードすぎる授業をなんとか切り抜け、夕方は紺野先生の特訓をこなす日々が続いた。
授業の方は、何とかついていけるようになった。
覚醒からそろそろ丸2ヵ月経つ。
体が大分慣れたからかな?
ゆきとはあまり会えていない。
特進科は朝学習があるため登校時間が違うし、帰りは特訓のせいで一緒に帰れない。
「どうしたの?華音ちゃん、本当に大丈夫?」
ゆきは心配してくれるが、話すわけにはいかない。
「いいか、普通科のことは人間には秘密だぞ。勿論同じ校内にいる特進科にもな。絶対だぞ」
紺野先生にも釘を刺された。
何となく、ゆきとの距離が遠くなってしまった気がする。
「ぼ~っとするんじゃない」
はっ!
紺野先生の言葉で我に返る。
今は特訓中だということを忘れていた。
「まあ、ぼけ~っとしててもそれだけ炎を保てりゃ上出来か。長かったな、ここまで」
ふい~っと先生は一息つく。
「じゃあ、次のステップ」
先生は手の平に炎を出す。
「次は遠隔操作。手から離れても、炎が持つように訓練する」
そう言うと、炎をぽとっと下に落とした。
先生の手から離れて下に落ちた青い炎は、大きさを保ったまま燃え続けている。
「ほら、やってみろ」
あたしは手の平を下に向ける。
床まで半分もいかないうちに、消えてしまった。
「ほい、特訓、特訓」
「はい」
まだまだ特訓は続きそうだ。
「やっと終わったー」
特訓が終わったのは夜の7時過ぎ。
血液入りのタブレットを流し込みながら、3階の教室まで荷物を取りに行く。
何だか飲む気になれなくて、血液そのものを飲んだことは一度もない。
それと一度飲んだら自分じゃなくなる気がして怖い。
階段を上っていると、東の空に満月が浮かんでいるのがガラス越しに見えた。
「綺麗だな……」
いけない!
ゆっくりしている場合じゃない。
一気に3階まで駆け上がる。
これくらいの運動で息切れしなくなった点では、ヴァンパイアでよかったと思える。
教室に入ると、あれ?
誰かいる……
電気がついていないから、はっきりとは分からないが、あたしの席の斜め後ろで突っ伏して寝ている。
神白君だ。
近寄るなと学長に言われていることを思い出したが、このまま放置しておくのも可愛そうだ。
そっと近づく。
月の光に照らされた彼の顔は、とても綺麗だ。
この2週間、彼を見ていて気づいた。
冷たそうという印象はあるが、友達やクラスメイトと話している顔は、穏やかだったり、時には笑っている。
でも、あたしが視界に入ると途端にその顔が歪む。
最初ほど露骨じゃないけど、嫌われてるのは一目瞭然だ。
家同士で因縁があるからといって、あたし自身を見てくれないのは正直辛い。
その因縁すらも、学長や久瀬先生は教えてくれない。
曰く、
「他の家のことで口出しは出来ないから」
だそうだ。
お兄ちゃんも
「因縁?聞いたことないな。親父に聞けばいいんじゃない?」
父さんはあれから帰ってこない。
「あの……神白君?もう夜だけど」
返事はない。
「はぁ……」
諦めて背を向けた瞬間、パシッと右腕を掴まれた。
驚いて振り返る。
彼の手は、熱でもあるんじゃないかってくらい熱い。
しっかり目線が合った。
彼の目は……
銀色に輝いていた。
「ちょっと放してよ」
右腕をぶんぶん振ってみるが、放してくれそうな気配はない。
もうだめだ。
逃げよう。
そう思って走り出したが、強い力で引き止められる。
「何か用?」
すると神白君はニヤッと笑った。
今まであたしには向けられたことのない笑顔。
でも、いつもと様子が違う。
ガタッ。
彼は立ち上がってこちらへ寄ってくる。
怖くなって後ろに下がるけど、右手は掴まれたままなので、大した距離は取れない。
一歩、また一歩と下がるうちに
ドン!
背中が壁に当たった。
彼はすっと間合いを詰めて、あたしの右手を壁に押し付ける。
怖くなって、ぎゅっと目を閉じる。
ふっと気配がして、耳元で甘い声がした。
「捕まえた」
左手首も掴まれたところで……
「誰かいるか~、って何してんだ!」
久瀬先生の叫び声がして、ぱっと目を開ける。
久瀬先生はあたしから神白君を引っぺがすと、あたしに抱き付いた。
「大丈夫か?食われてない?手はある。足もある。出血も……ないな。手首のあざだけか」
両手首を見ると、赤く跡がついている。
でもじわじわと消えている。
「こういう時、ヴァンパイアの治癒能力が高くて安心するよ」
ここで神白君の方を向いて
「あんたは今から学長室へいくぞ。マコ……じゃなかった、学長に全部報告しろよ。」
神白君は呆然としている。
信じられないって顔だ。
彼の目はダークブラウンに戻っている。
「ほら、行くぞ。華音は先に帰れ!」
そう言うと、久瀬先生は神白君を連れて教室を去った。
読んで頂き、ありがとうございました。
「ホーンテッド・スクールへようこそ~Another Side~」公開しました。
あちらは神白陸視点で話が進んでいきます。
こんな形で書いてみたかったんです。
こちらをR15指定にしたくなかったので、あちらではこちらで語ることのできなかった部分もどんどん書いていこうと思います。
時系列としては、常にこちらを早く進めます。
読み方は読者さんに任せます。
両方を平行して読むのも良し、ある程度たまったら読むのも良し、暴力等が苦手ならこちらだけでもOKです。
長文失礼しました。
一応、執筆順は残しておきます。
Another side(以下A.S)第一話へ




