第三話 叫び
レイはスロット台の前に座っていた。
目の前では魔導機が低く唸り続けている。
ガチャン、ガチャン、と無機質な音。
周囲では歓声とため息が入り混じっていた。
「また外れた……」
「くそ、あと一つだったのに」
「次こそ……次こそ……」
誰もが同じ言葉を繰り返している。
レイはその光景をぼんやりと眺めていた。
「……すげぇな」
小さく呟く。
何がすごいのか、自分でもよく分からない。
ただ、ここにいる全員が“同じ一点”に縋っているのは分かった。
「……俺も、か」
チップを一枚入れる。
ガチャン。
回転。
外れ。
「……まあ、そうだよな」
また一枚。
ガチャン。
外れ。
「……向いてねぇな」
また一枚。
ガチャン。
外れ。
レイの声は次第に小さくなっていく。
怒りもない。
焦りも薄い。
ただ、淡々と。
「……当たらねぇな」
「……まあ、そんなもんか」
「……運ってやつは」
周囲の喧騒だけが遠く響いていた。
チップは減り続ける。
残りは、もう数枚。
周囲の視線が少しずつ変わっていく。
(あいつ、まだやってるのか)
(もう無理だろ)
(終わったな)
そんな空気。
レイもそれを感じていた。
「……終わり、か」
小さく息を吐く。
残りのチップを指で数える。
三枚。
二枚。
一枚。
「……ほんと、しょーもねぇな」
自嘲気味に笑う。
一枚を入れる。
ガチャン。
回転。
外れ。
「……当たれよ」
もう一枚。
ガチャン。
外れ。
「……だから、当たれって!」
残り、一枚。
それを指で摘む。
しばらく見つめる。
「……最後か」
誰に言うでもない。
ただの独り言。
レイは大きく息を吸った。
「当たれぇぇぇ!!!!」
本当に、心からの叫びだった。
ガチャン。
魔導スロットが回る。
三つの魔石盤が高速で回転する。
一つ目。
停止。
二つ目。
停止。
三つ目――
ゆっくりと、ほんのわずかに揺れた。
レイはそれを見ていない。
もう半分、諦めていた。
だから気づかない。
自分の言葉のあと、ほんの一瞬だけ“間”が伸びたことに。
ガチャン。
三つ目が、止まる。
沈黙。
一拍。
二拍。
三拍。
ガチャン。
「JACKPOT」
店内が爆ぜた。
「は……?」
「今の、入ったのか!?」
「嘘だろ!?」
一気に空気が変わる。
だがレイは動かない。
ただ、ぼんやりと台を見ている。
「……当たった?」
自分でも分かっていない。
偶然なのか。
たまたまなのか。
それとも――
魔導機の奥で、魔石だけが静かに光っていた。
まるで今の一言を、ただ記録していたかのように。
更新を予定していますが、やはりコメントがないとモチベーションに響きますのでコメントが、ついていれば続きを投稿します。




