17
何も覚えていないような解答に、アシェスは首を傾げる。
「お前、何も覚えてないのか?」
「うん、確かジェスターさんに魔法の使い方を習ってて…」
必死で頭を凝らし思い出そうと唸っているが、アシェスはすぐにそれを制した。
「覚えてないならいい。無理に頭を使うな。それよりも身体はなんともないのか?」
「う~ん…心なしか怠い…。ねぇ…何があったの…?」
アシェスはジェスターと顔を見合わせアイコンタクトを交わした。
考えはやはり同じだ。言わずとも意志は疎通していた。頷いたジェスターを横目にスフィアにへと向き直る。
「何もねぇよ。ただお前が魔力を感じるのに集中しすぎて倒れちまっただけだ」
「そうなの?」
「初めはそんなものですよ。ちょっと魔力を吸収しすぎて身体が耐えきれなかったのでしょう。怠さはその影響ですから心配ありません」
ジェスターはやんわりと諭す。
スフィアには今後、不用意に魔法は使わせないほうが良い。二人が即座に出した結論は同じだった。
さすがのジェスターもあの惨状を目の当たりにして、浅はかだったと後悔しているのだろう。
代行者というものを軽く見すぎていたのだ。
お伽話や伝承はただ大げさに語っていたものではなかった。
それは紛れもない真実。
世界を変える力、それは本当にあるのだと。
少しばかりふらつく足を床に着け、スフィアはベッドから立ち上がる。
「歩けるのか?」
「うん、大丈夫。ちょっと身体が怠いだけだから」
スフィアはフォーザに向き直った。顔を覚えていたのかぺこりと頭を下げる。
「あの…ベッドありがとうございました。迷惑かけちゃったみたいで」
「いやいや…あのときのお嬢ちゃんがローウェンスの姫君だったとは…。こうしてお目にかかれただけで光栄ですよ。ウチの店をどうかご贔屓に…」
「このクソオヤジ!」
がつん!とフォーザの頭に拳骨が飛ぶ。
「痛っ!アシェス何をする!」
「こんなときまで商売を頭に入れるたぁとんでもねぇな…」
「まあ何だ…軽い冗談ってやつだ。オヤジギャグという言葉を知らんのか」
「知るかよそんなもん!」
乾いた笑いを浮かべていたが、アシェスは呆れていた。それでもフォーザらしいとどこか心で笑ってはいたが、一応釘は挿しておいたのだろう。
「ったく…コイツも目覚めたことだし、一度王宮に帰るぞ」
「う…うん」




