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いつも億劫な態度と面持ちをしていたはずの男からは、想像も出来ないような真剣な眼差しが向けられる。
それほど事態は切迫しているとを伝えたのだ。
「言えることはコイツ…スフィアが狙われてるんだよ。この国を滅ぼしたって構わねぇっていうような狂人どもからな」
アシェスはジェスターに向き直り声をかける。
「様子はどうだ?」
「うん…たぶん魔力疲労だね。あれだけの魔力を一気に放出したんだ、例え意識が戻ったとしてもしばらくは動けない…と思う。急激な運動による酸欠になるのと同じ原理だね」
「そうか、身体に異常がなければそれでいい。そのまま視ててくれ」
ジェスターは言われるまでもないと、すぐに横たわる彼女に治癒魔法を再開する。
アシェスはそれを確認すると、フォーザにと再び視線を戻した。
「俺からはこれ以上は話せねぇ。こいつの意識が戻ったら出ていくよ」
アシェスは軽口でそう言ったが、フォーザにしてみればそんな簡単に引き下がれるはずもない。
「これからどうなるんだ?」
「だから言ったろ?戦争になるかもってな。オヤジはしばらく店を休むなりして、この街から離れてたほうが賢明だぜ?」
「…何が起きるのかは話せないんだな?」
「ああ、悪いが今はまだ…な。ただ今回の事については、正直な話俺だってどう転ぶかはわからないし、無責任なことは…言えねえ」
アシェスは頭をがりがりと掻きながら言った。ぼさぼさの頭は更にひどい有様になるが、そんなことはお構いなしに。
結局何が起ころうとしているのかなど、考えるだけ無駄な話だと言うものだ。
連中の企みなど何一つ理解できていないのだから。
だが、危険から遠ざけることは出来る。
それは親しいフォーザだけに言える、アシェスなりの精一杯の気遣いだった。
「お前はその敵とやらと戦う…ってのか?」
「ああ…前に言ったろ、捜し人が居るって話。そいつが…今回の首謀者だ」
フォーザは髭をぴくりと震わせた。
それは軽い驚き証だったのだろう。
「見つかった…のか?」
「ああ、ようやく…だ。俺はあいつに会ったら正気を保っていられる自信もない。この街の人間のことなんて…頭からすっ飛んじまうかもな」




