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料亭フォーザ。
扉の前には準備中という立て札が添え付けられていた。
「すまねぇな…オヤジ。咄嗟に思い付いたのがここしかなかったんだ」
他に頼れる人間がいないことから、アシェスは迷わずここへと駆け込んだ。
本来ならば営業してて当たり前の店を、こうして自分らのために休業としてくれたのだ。
アシェスたちは店の奥、フォーザの部屋にいた。
「それは…かまわんさ。しかしどうしたんだ?それにお前さん、王宮の反逆罪で捕まったって…心配したんだぞ?」
ほっとしたように胸を撫で下ろしながら、声を殺してフォーザは耳打ちした。
傷だらけの体で少女を背負いながら飛び込んでくれば、誰だって何事かと辺りを気にしてしまうだろう。
「話すと長くなるんだが」
お世辞にも高価とはいえない安物の匂いがするベッド。古いのか所々染みが付き、いかにも何年も使用したと見られる。
これは長年フォーザが使用しているものであった。
そんな古いベッドに寝かされているスフィアは、気を失っているというよりも眠っているようにも見えた。
彼女の容体を探るようにジェスターが魔法で診ている。
魔力云々での問題は専門家に任せておけば問題ないと、アシェスはフォーザへと向き直った。
「いや…やっぱり話さないほうがいい。オヤジまで厄介事に巻き込むわけにゃいかねぇからな」
「もう十分巻き込んでるって自覚はないのか?」
人払いをし店を休業にまでさせておきながら、この期に及んで黙りを決め込もうとするアシェスに、フォーザは半眼で文句をたれた。
「この娘さん、あのときの子だろ?」
衣装や髪型は違えど、やはり記憶はしていたようだった。
商売柄か人の顔というものを記憶するのは容易いらしい。
だからフォーザはすぐに気付いた様子だ。
「覚えてたのか。ああ…その通り。コイツはローウェンス国王の娘だ」
「な…なに?この娘さんはあのレイド王の…」
フォーザは驚きを隠せなかった。
アシェスはしれっと言い放ったのだが、それが何より驚愕したのだ。
「王族嫌いのお前さんがなんでまた…」
「いろいろとあったんだよ…」
嘆息混じりで話すアシェスは、前に見たときよりも更に生傷が増えていた。
一体何が起こっているのか、フォーザにはわかるはずもない。
「…詳しいことは今は言えねぇ。けど近々この街が戦場になるかもしれねぇ」
「戦場!おいおい…どんどんきな臭い流れになっていってないか?」
「だからな、オヤジもしばらくはこの街から離れたほうが賢明だ」
「何が起こるっていうんだ…」




