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崩れた家屋。
それはばらばらになった破片だけで構成されており、もはや原型を留めてはいない。
瓦礫の山だ。
幸い倒壊したのはジェスターの家屋だけというのは、奇跡と言わずしてなんと言えば良いのか。
崩れた瓦礫の中から這い出たようにアシェスが顔を出す。
「…助かった…みたいだな」
切り傷や打ち身で、体中が傷だらけになってはいるものの、大きな怪我すら負っていないのはこれも奇跡というものなのか。
アシェスは柱か何かで打った頭を打ち付けたせいで一瞬よろめいたが、それを振り払うように何度か頭を振った。
(…とんでもねぇな…コイツは)
先程の出来事を思い出し背筋が凍り付く。一瞬にして家屋を倒壊させ、天を貫いた光の力。
あれがこの世界で呼ばれている『魔法』と呼べる代物であろうか。
(こんなデタラメな力があるか)
瓦礫の下には意識を失ったスフィアが倒れていた。
倒壊する寸前でアシェスが庇うように抱き締めたからか、外傷らしきものは特に見当たらない。
華奢な腕を取り脈を計ると微かな鼓動が感じられた。気を失っているだけのようだ。
小さな鼻からは穏やかな呼吸も感じられていた。
「あの状況で力を空へと解放したのか…」
天を貫く一撃。空を見上げれば円形に切り取られたように雲が消失していた。
一歩間違っていれば国中が壊滅していたかもしれない。
それにアシェス自身も肉片すら残らず消し飛んでいただろう。
そう思えるだけの力が、こんな華奢な少女から放たれたのだ。
馬鹿馬鹿しいことこの上ない。
悪い冗談だ。
傷だらけの腕でスフィアを抱き上げる。
近所の住民が野次馬のように集まっているが、そんなことに構っている余裕はない。
とにかく人目から遠ざからねばならなかった。
騒ぎ立てられても厄介なことこの上ない。
すると瓦礫の中からジェスターが姿を現わす。
とっさに魔法防壁を作ったらしく、それほど大きな怪我もしていないようだ。
風の障壁を解くと、服が破けて汚れている程度で、外傷らしい傷も見当たらない。
スフィアの圧倒的な魔力を前に、我を失いかけていた様子だったため心配していたが、それも杞憂だったようだ。
体に染み付いた防衛本能は、戦いから遠ざかっていたとはいえ健在だったらしい。
「アシェス…無事だったのか。良かった…」
「お前も無事なら良い、話は後だ。とりあえず人目から離れるぞ」
アシェスは周囲の野次馬たちを横目で促し、スフィアをおぶさった状態で走りだす。
「わかった」
この状況下で逃げるという選択は正直目線が痛かったが、なりふり構っている状況ではない。
アシェスに抱かれている、気絶しているであろうスフィア姫のことも気掛かりである。
ジェスターはアシェスの後に続くようにして、逃げるようにその場から走り去った。




