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やがて部屋を取り巻く空気は旋風となる。
棚に仕舞われた書物や、テーブルに置かれた食器が突風により散らばる。窓は割れ、壁はめきめきと音を立て歪みを生む。
目を開けることすら困難な状況へと変わってゆく。
「ダメだ…こんなの…僕にだってどうしたら良いか…」
「泣き言言ってんじゃねぇ!お前が止められなきゃ俺がどうにか出来るわけねーだろーが!」
成すすべを見失ったジェスターは戸惑いの言葉を発する他なかった。
アシェスは毒づきながらも吹き飛ばされそうになる身体を堪え、スフィアに近づいていく。
このままでは予想も出来ない自体へと事が進みかねない。
「スフィア!!もうやめろっつってんだろ!目を…覚ませ!」
アシェスが伸ばした手は、なんとかスフィアの手を掴んだ。
「アシェ…ス…?」
さすがに身体に触れたからか、ようやく気付いたスフィアの目がゆっくりと開かれた。
「え…わたし…」
「落ち着け…もう魔力を収束するのをやめるんだ。ゆっくりと意識をこっちへ向けろ」
「う…ああ…」
「落ち着け!取り乱すな」
見開かれた眼から映し出された光景は、嵐というものに相違なかった。
自分を取り巻くようにして発せられている空気の渦。
巻き起こる旋風。
室内を舞う書物と小物。
その壮絶な景色は少なからず、不安定になったスフィアの精神をかき乱す。
動揺は収束した力の暴走を引き起こす撃鉄のようなもの。
「うあ…ああぁ!」
スフィアの身体は青白い光を放ち、体外へと力が解放されていく。
「く…いいから落ち着け!精神を乱すんじゃねぇ!俺を…俺の目を見ろ!」
アシェスは祈るような気持ちでスフィアの手を握り締めた。
強く、強く握られた力は彼女の意識をアシェスへと向けさせた。
「…………!」
何を叫んだかはわからない。二人には聞こえなかった。
解き放たれた力は光の柱となって屋根を突き破る。
強大な質量を含んだ力は天まで貫く光の矢。
それは射ぬいたように雲をも貫き、やがて空の彼方にへと掻き消えた。
音など何も聞こえなかった。




