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「あ…でも、国王に無断でこんなことを教えたら不味いかな…立場上僕が勝手な真似をするのは…」


何やら困惑気味な様子のスフィアを見ていると、ジェスターはふと気付く。

冷静に事を思考してみると、アシェスの言うとおり周りが見えていなかった行動なのかと、ジェスターは躊躇いの声を上げた。


「ううん、それは平気…。これは私の意思だから。私が…魔法というものに触れてみたい…」


代行者だと言うのなら、いずれ魔法というものからは避けては通れない道。

その事実を受け止めているからなのだろうか。


風…空気ではない別の何か。それを魔力というのだと言う。

大気に遍く元素の力。

目を瞑り、微動だにしない静寂は意識を集中させている証。

緊張じみた身体は、腰掛けた椅子をぎしりと音を立て軋ませる。


感じるのは音ではなく、力の源。

肌に浸透していくような確かな違和感。

吸い込まれていくような吸い込んでいるような。

不思議な感覚。

序々に体の芯から熱くなってきたような、燃えたぎる血脈。


(これが魔力?…何かが確かに体に入っていく)


収束されてゆく力。

感覚的にはそれが魔力とは感じない。が、確かに何かの力を感じる。

クリアになってゆく意識。

自分の吐息さえもやがて聞こえなくなってゆく。


「魔力が…これは…」


スフィアは意識していないのか、おびただしい質量の力を取り込んでいた。

他人の魔力の波動すら感じられるジェスターにとって、目下の少女が吸収している物量に戸惑いを隠せない。




目の前の光景に言葉すら失っているジェスターの前に、アシェスが扉を開き帰ってきた。


「…なにしてんだ?」


眠ったように椅子に腰掛けているスフィアが気にならないはずがなく、思った言葉を口にする。

自分が帰ってきたことにすら二人は気付いていない様子。


「寝てんのかコイツ?」


呆れたような顔で指を指しながらジェスターに訊ねるが、上の空といったように呆けた顔を晒している。


「おい、聞いてんのかジェスター?」


状況を理解できないアシェスは、もどかしさのあまりジェスターの肩を掴んだ。


「…これが…代行者?」


「はぁ?だからなんでンな呆けた顔してんだよ?」


「アシェス…代行者は…僕らの想像を越える力を…」


「な…に?」


魔力を感じられないアシェスは気付かなかったが、ジェスターその不穏な言葉にようやく感付く。

見れば力の影響か、風もないこの室内でスフィアの衣服や髪がなびいている。


(魔法…ンな馬鹿な!)


魔力による波動は感じられなくとも、スフィアを取り巻く空気の渦がその力の強大さを感じさせた。

それは徐々に大きな渦へと形を変えてゆく。


「おい…スフィア。もうやめろ!」


アシェスの声は届いてはいない。集中状態にあるのか声をかけられたことすら気付いてはいなかった。

魔力を感じられないアシェスにすら、背筋に悪寒が走るくらいの感覚。

スフィアの首筋がうっすらと淡い光を放ち始めた。


「ジェスター止めろ!こいつはとんでもなくヤバい予感がする!」

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