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「身体で…感じる…?」
「まずは目を瞑って、意識を集中することから始めましょう。室内では風は起きないけれど、この場にも確かに魔力は混在してます。この無風の状態でそれを感じ取ってください」
スフィアは言われたように目を瞑った。
膝に手を置き、意識を集中させてみる。
「……………」
しばらくの間、沈黙と共に時間が経過する。
ジェスターが注意深く見守っていると、
「ふふふっ…!」
スフィアは突然笑いだした。
虚を突かれたのか、ジェスターの顔は焦りへと瞬時に変化した。
「どうしたん…です?」
「だって、ジェスターさんって先生みたいで…考えたら楽しくなっちゃって」
幼少の頃、英才教育とばかりに気難しそうな教師に勉学を習ったことを彼女は話した。
別館での生活になってからは、ジェシカが友達のような感覚で知識を教えてくれたので、こういった緊張するような感覚に懐かしさを覚えたとのことだ。
「先生…か。参ったな」
「なんだか向いてるような気がするなあ。厳格とかじゃなくて、楽しく教えてくれるような先生に」
ジェスターは苦笑いを浮かべていた。事実、村では子供たち相手に、そういったこともやっていたことがあるからだ。
「僕は興味のあることだけは見境無いから、実際こういうことを教えるのは楽しいよ。ただ、アシェスだけはそれに否定的だったけど」
「アシェスが?何でなの?」
「語りだすと止まらないから生徒が可哀想だって…」
ジェスターは自覚があるのか苦い顔を見せる。
「それは…あるかも」
なぜかスフィアは納得していた。
(好きこそ物の上手なれ。ジェシカが言っていたことってこういうことなのかな?)
記憶の底から間欠泉のように湧き出たような言葉に、彼女は一人思い耽る。
「人知を越えるもの。その真理ってものは僕を引き付けて止まないんだ」
語るジェスターの眼はまるで宝石でも見つめているかのような輝きだった。
(本当に好きなんだなぁ)
彼女自身はわからないことなのだが、人の楽しそうな顔は自らをも楽しくさせてくれる。
スフィアは胸中で呟きながらジェスターの熱弁に自然と聞き入っていた。
「…話が逸れちゃいましたね。ではもう一度やってみて貰えますか?」
仕切り直しと言わんばかりに、咳を交えてジェスターは促す。
「う…うん」
興味半分、恐さ半分と言わんばかりに、スフィアは緊張したような生返事を返す。




