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「うん、よろしく。私のことも出来れば普通に呼んで欲しいな…。アシェスの知り合いなら尚更」
「わかりました。じゃあスフィアさんと呼びましょう」
「うん!」
見ず知らずの人間と知り合い会話するということが、よほど嬉しかったのだろう。
すでにスフィアの声は弾んでいた。
「…さてジェスター、回りくどい話は抜きだ。お前も協力してくれるな?」
「わかってる。僕が協力しないわけにはいかないからね。ハースとか言う魔導師にも大きな借りがある」
ハースがジェスターの変装をしたことにより、城の人間たちの誤解を招いた。
それにより理由を話し、誤解を解くまでに至るまで、アシェスは苦労したものだった。
危うく今度はジェスターが牢に入れられる羽目になっていたかもしれないのだから。
さすがのジェスターも、自分に化け悪事を働かれたなどとあっては黙ってなどいられなかった。
尚且つエルビスが絡んでいるとあっては断る理由もない。
「お前が戦ってくれるなら、これほど心強いモンはねぇからな」
「…今回ばかりは魔法を戦いのために使わなきゃいけないんだね」
近年のジェスターは魔法を戦いのために使うことを止めていた。
魔法による命のやりとりに対し、虚しさを覚えたからという。
例え化け物とはいえ、命は命。それを奪い続け、探求するのに疲れてしまったらしい。
遺跡に足を運ばなくなったのも、それが大まかな理由の一つである。
だから王宮で原点となる魔法の式をひっそりと研究し始めたのだ。
そんなことから王宮内でもジェスターが熟練の魔導師であることは誰も知らないであろう。
「…悪いな。あいつらから護ってやれるのは、現状お前くらいしか見当たらないんだ」
「うん…エルビスが何か良からぬことを企てている。それだけは阻止しないとね。あと君の為にも」
「ああ、無理言ってすまねぇな…」
巻き込んでしまったという罪悪感が多少はあるのか、アシェスは俯いて鼻っ柱を拭った。
「スフィア、少しの間ここに居てくれるか?」
「え…どうして?」
「ちょいと会わなきゃならん奴がもう一人居てな。小一時間もすれば戻ってくる」
スフィアは不安そうな顔をしたが、躊躇いながらも首を縦に振った。
「ジェスター、しばらくスフィアを頼むぞ」
「わかった。心配しないで行って来なよ」
ジェスターの了承を得ると、アシェスは後ろ手で手を振りながら、出口へと向かった。
「それと…スフィアに変なことするんじゃねぇぞ?」
一旦外に出たアシェスは思い出したように首だけを覗かせ、ジェスターに釘を打つ。
「し…しないよ!」
「いや…お前は興味深いモンがあると我を忘れるからな。スフィアみたいな貴重な存在が目の前に居るんだ…」
「しないってば!!早く行きなよ!」
ジェスターらしからぬ首を横に高速に振っての全力否定。苦笑いを後にアシェスは軽く手をかざすとようやく行った。
(僕だってローウェンス全部を敵に回すようなことするなんて、さすがに出来るわけないんだから)
自分でも気付かなかったような不意をつかれ、嫌な汗をかいたのか、ジェスターは緊張のこもった吐息を残らず吐いた。




