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王宮の中庭を二人で歩く。

昨夜の出来事など無関係といったような無邪気で力強い陽射しが射しこめる。

庭園は戦闘の被害をあまり受けなかったのか、その姿は前に見たままの美しさを保っていた。

庭師も兵士もここには残っておらず、皆城の復旧作業に赴いたと思われた。

大きくそして静かな空間。


「ねえアシェス」


「あん?」


後ろをついて歩くスフィアは控えめに声をかけてきた。

何かを迷っているような、手をしきりに動かし落ち着きがない。


「私は…これからどうしたらいいの?」


「何言ってやがんだ、お前の好きなようにしろよ。俺はそれについて回るだけだ」


「えっ…」


予想してもいない言葉が返ってきたのか、気の抜けたような声が背後から聞こえた。


「親父が話したろ?今のお前はもう姿を隠す必要も、存在を偽る必要もないんだ。大っぴらは困るが好きに動いたらいい」


「そんな…急に言われても」


完全な自由とまではいかないが、人前に偽る事無く歩くことを許された。

だがそれを素直に受け取り喜べないでいる。

今の自分を知り、昨夜の戦闘の有様を見ては素直に喜ぶことは出来ないらしい。

影りのある顔が姿を覗かせた。


「ディオも大丈夫なのかな…?」


昨夜、アシェスが地下室からスフィアを出した。

怪我で動けないレイドの代わりに、場所を聞いたアシェスが赴いたのだ。

暗く狭い部屋に一日以上押しこめられた上、激しい轟音に激しい揺れ、悲痛な叫びが飛び交う。

何が起こっていたかもわからず、そのときのスフィアは怯えきった顔色をしていた。

抜け出城内を連れられ歩くと至る所に兵士が倒れ、あちこちの壁や床に天井までもが崩壊していた。

あまりにも無残な光景に、放心状態となった彼女を我に返すまでには相当時間がかかった。

怪我を負い、意識を失ったレイドを見た瞬間彼女は嗚咽を漏らした。

これもすべて自分のせいなのかと己を責めて止まなかった。

今だからこそ平気ではいるが、精神的に不安定だったスフィアは、レイドが目覚めなければどうなっていたわからない。


「ディオの野郎なら平気だ。あれは怪我のせいじゃねぇ。単に落ち込んでるだけだ」


「でも…その…私が代行者っていうものだから、皆がこんなひどいめにあったんでしょう?なのに、私だけのうのうと楽しい気分になんてなれないよ」


人の善意に慣れていないのか、それとも自分が発端だという事実だからなのか。

笑顔が消え沈んだ暗い顔を晒す。

だがアシェスは俯いて叩き易くなっていた頭を軽くこづいた。


「いた…!何するの、アシェス?」


「なんでもかんでも背負い込むんじゃねぇよ。ってか自惚れんじゃねぇ。あいつらは敵が攻めて来たから戦った…それだけのことさ」


「アシェスって単純に考えすぎだよ」


「アホ、んじゃ何か?お前が出ていってたら万事解決だったとでも言うのか?」


「それは…」


「だろ?だからお前はもうこのことを深く考えるな。あいつらのことを思うなら、せめて明るい顔してろ。この城の姫らしくな」


いつのまにか歩くのを止めていたアシェスは、街で一緒に過ごしたときのような雰囲気へと変わっていた。

言葉は相変わらずでも、口調はどこか厳しさが抜けている。

スフィアはそれに気付いたのか何も言わず短く頷いた。

と、アシェスは何かを思い出したかのように手を叩く。


「あ、悪いが寄りたいところがあるんだが良いか?」


「う…うん」


彼女に断る理由もなく、その言葉に笑みで答えた。

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